6月26日〜7月2日のドイツのニュース

6月26日

(ベルリン)ドイツ訪問中のフランス大統領ジャック シラクに敬意を評してパー
ティが開かれた。その席上、ドイツ大統領ヨハネス ラオは、独仏間でヨーロッパ
の政治に関して生じている誤解を残念に思う、統一ヨーロッパでは参加各国の民族
的・歴史的相違が尊重されねばならない、と語った。それに先立ちシラクはアレク
サンダー フォン フンボルト大学の学生に、ヨーロッパ中央政府に反対であると
語っていた。同時に彼はドイツ外相ヨシュカ フィッシャーのヨーロッパ連邦の考
え方をよい試案であると評価した。
シラクはドイツ訪問の初日に大統領ラオに迎えられ、ドイツ首相ゲアハルト シュ
レーダーとともにEXPO2000を訪れた。

     その他のニュース
・ジンバブエの国会議員選挙は自由選挙でも公正な選挙でもなかっ
た、とEUは評価を下した。いくつか問題はあったものの週末に行な
われた選挙は好ましいものであった、とEU選挙監視団長は語った。
英外相クックは、政府が結果がでる前から、選挙結果を尊重しない
と発表したのは腹立たしい、と語った。開票はなかなか進まず、予
定より長くかかる模様である。第一回の結果発表は火曜日に予定さ
れている。投票率は約60%である。
・ハンブルク学校の中で2頭の闘犬が6才の少年に襲いかかり、かみ
殺した。助けようとした2人の大人も軽傷を負った。闘犬は射殺さ
れたが、住民が集まって闘犬を禁止するよう要求している。
・キリスト教民主同盟所属で元連邦議会議長のズュースムートは、
新設のドイツ政府移民問題委員会の委員長に就任する意志を固めて
いる。彼女は、内相シリーが社会民主党のフォーゲルにその仕事を
任せようとしていることに怒っている。キリスト教民主同盟は彼女
とは距離をとっており、同党からはその委員会には参加しない、と
発表した。彼女は同党所属の肩書きを外して発言することになる。


6月27日

(ベルリン)フランス大統領ジャック シラクはEU拡大の流れの中でヨーロッパ憲
法を作り上げることに賛成の意志を表明した。EUは新しい規則を持たなければなら
ない時期に来た、と彼はベルリンの連邦議会で語った。彼がEU拡大の趨勢の中で統
合推進派の諸国が、中核となるグループを作ることに賛成したのは初めてである。
フランスとドイツは友好関係を強め、再びヨーロッパ統合の推進役にならねばなら
ない、とも語った。その後、彼は産業界の代表に、ヨーロッパの経済成長と雇用に
関する協定を提案した。シラクの国会での演説はほぼ全面的に賛意を得た。この演
説は彼のドイツ訪問のクライマックスであろう。

     その他のニュース
・闘犬が少年を襲った事件に鑑み、より厳しい法律を迅速に制定す
ることに首相シュレーダーは賛成した。
・移民政策に関する論戦にかんして、大統領ラオは移民と亡命をひ
とまとめにして考えないように、と注意を促した。亡命希望者を受
け入れるから移民希望者の数は制限するということはあってはなら
ない、と語った。
キリスト教民主同盟党首メルケルはこの二つを分けて考えることを
改めて拒否した。また彼女は同党のズュースムートが移民問題を扱
う政府委員会委員長に就任することを批判した。
・ジンバブエの国会議員選挙で、大統領ムガベが率いるZANU党はか
ろうじて過半数を取った。同党が、憲法改正に必要な、3分の2の議
席を獲得できなかったのは初めてである。同国に強力な野党が誕生
したのはこの20年間で初めてである。


6月28日

(ベルリン)特別調査員ブルクハルト ヒルシュの調査によれば、1998年の政権
交代の直前、連邦首相府で文書とコンピュータのデータが広範囲にわたって廃棄さ
れた。彼は、キリスト教民主同盟の不正資金疑惑解明委員会で、選挙と新政権誕生
までの間に、3分の2の情報が法的根拠がないまま廃棄された、と語った。連邦政
府は連邦首相府の公務員に対し捜査開始の手続きを取る。元大統領府長官のフリー
ドリヒ ボールは、当時の出来事に関して政治的な責任をとるが、文書を廃棄する
指示は出していない、と語った。

     その他のニュース
・闘犬に噛まれて死亡した少年の事件が再発しないように、連邦政
府と州政府は闘犬に対してより厳しく対処することにした。連邦内
閣の依頼を受け、州政府は飼育と輸入を禁止する法律を作ることに
した。
・キリスト教協会団体とアクセル シュプリンガー書店は共同で新
しいテレヴィ会社を作ることにした。その会社には4つのテレヴィ
局が属することになる。
・近東首脳会談がアメリカで近いうちに開かれる可能性は低くなっ
た。米外相オルブライトはイスラエルとパレスチナの政府との予備
折衝をそれぞれ行なったが、調停には失敗した。会談後彼女は、両
国は異なる態度をとっており、まず意見を近づけて行かなければな
らない、と語った。イスラエル首相バラクは米国を交えてパレスチ
ナのアラファト大統領との会談を求めているが、パレスチナ側は両
国の意見に違いがありすぎるという理由をあげて、これを拒否して
いる。


6月29日

(ベルリン)連邦議会のキリスト教民主同盟の不正資金疑惑究明委員会は元首相ヘ
ルムート コールの事情聴取を中断した。同委員会委員長フォルカー ノイマン
(社会民主党)は、コールは委員会が開かれる前に、キリスト教民主同盟・社会同
盟側の会長アンドレアス シュミットやその他の委員と一緒に協議した、として非
難した。コールはこのような協議を行なったことを基本的には認めたが、委員会で
今後どのような態度を取るかという戦術を決めたわけではない、と語った。委員会
の意向を受けて、議員団の首脳と長老協議会はこの問題を協議することになってい
る。同委員会は、問題のキリスト教民主同盟所属の議員が委員会を辞するべきかど
うかを決定したいとしている。社会民主党がこれを可決するためには3分の2の賛
成が必要である。コールの尋問は来週木曜日に延期された。

長老協議会 連邦議会の議長と副議長、会派から指名された議員の23名からなる
協議会。議長の補佐と、議事日程に関して各会派の了解を取りつける、といった仕
事を持っている。日本で言う議院運営委員会に相当する。
          (参考 田沢五郎 「ドイツ政治経済法制辞典」 郁文堂)

     その他のニュース
・金属産業労働組合は連邦議会が計画している年金改革案を、近視
眼的で、考え抜かれておらず、不公正であるといって拒否した。も
しこのまま社会民主党が性急に年金改革案を決定するようなことが
あれば、年金問題が秋の政局の重大なテーマになる、と同労組委員
長のツヴィッケルは語った。ドイツ職員労働組合の委員長イッセン
は年金問題に関して労組と政府の間に意見の対立が大きいことを指
摘して、政府に警告を発した。年金の水準が下がるという見込みは
被雇用者の側に強い抵抗を巻き起こしている。
・NATO総書記ロバートソンは、ヨーロッパが介入部隊を作る案を優
先事項として捉えている、と語った。独首脳との会談の後彼は、ア
メリカにとってEUのこの計画は不快であるが、米国政府はヨーロッ
パの努力がNATOの利益につながり、EUはNATOとならぶ組織を作ろう
としているわけではない、ということを理解していると語った。6
万人からなる強力な部隊が2003年までに作られ、最大一年間60日以
内出動をする体制を作ることになっている。


6月30日

(ベルリン)連邦議会の全政党の政治家が旧東西ドイツの通貨統合10周年記念日
にあたって通貨統合を総括し、肯定的な判断を下すとともに、今後の旧東ドイツ地
区の再建のために援助を行なう必要性を強調した。ザクセン・アンハルト州首相ク
ルト ビーデンコプフは、任期中にドイツ東部連帯条約を結ぶように求めて行く、
と発言した。大蔵大臣ヴェルナー ミュラーによれば、連邦政府はドイツ東部に対
する援助をさしあたり歳出削減対象から外すつもりである。ドイツ労働組合連盟は
政府に対し、ドイツ東部再建をより重視することを求めた。

     その他のニュース
・首相シュレーダーと中国首相朱は金曜日に条約を結んだ。この条
約は中国に人権問題を批判する根拠となる条約である。その他、両
国は数10億マルクの経済援助プロジェクトにも合意した。これには
BASF社の化学工場と(リニアモーターカー)トランスラピートの試
験走行コースの建設が含まれている。
・社会民主党と緑の党は政治献金疑惑解明委員会での騒動の後、キ
リスト教民主同盟の国会議員シュミットが同委員会から退くように
要求した。その理由として、木曜日に明らかになった元首相コール
と同党所属の委員会のメンバーとの規則に違反する会合が挙げられ
ている。
・政府と労働組合の間で起きている労働大臣リースターの年金改革
案をめぐる対立はますます激しくなっている。首相シュレーダーと
の緊急会談で、労働組合の代表エンゲレン・ケーファーとイッセン
は、新しい年金の算出法を含めた改定案をリースターが提案するよ
うに求めた。年金改革案では年金額が2015年までは給与の68%、
2020年までは67%以下には下げないということになっていた。


7月1日

(ベルリン)税制改革をめぐる対立はまだ解けていない。大蔵大臣ハンス アイヒ
ェルは妥協案の修正を拒否した。納税者の実質的な負担を500億マルク削減すると
いう数字で、目標は到達されている、と彼は語った。野党キリスト教民主同盟とキ
リスト教社会同盟の統一会派長フリードリヒ メルツは長時間に渡る激しい議論を
求めた。アイヒェルの提案では公正さがまだ確保しきれていない、とメルツは語っ
た。メルツは特に最高税率を現在の51%から43%に下げることを求めている。同統
一会派はさらに35%を要求している。

     その他のニュース
・デンマークのロスキルデで行われるヨーロッパ最大のロックフェ
スティヴァルで、6月30日夜8人の客がメインステージの前で踏みつ
ぶされて死亡した。犠牲者の中には26歳のドイツ人男性が含まれて
いた。怪我をした25人が病院に運ばれ、一人は生死の境にいる。
・社会民主党はキリスト教民主同盟・キリスト教社会同盟に対し、
キリスト教民主同盟の不正資金疑惑解明委員会の同党側の代表シュ
ミットの退陣を最終的に要求した。雑誌報道では、社会民主党側の
代表は彼の代わりを選ぶのに一週間の猶予を与えると語った。シュ
ミットは委員会開催の前に数度元首相コールと会っていた。コール
は、その時に証言内容についての話し合いは行なわなかった、と語
った。
・社会民主党も選挙敗北後、公文書館の多くの文書を廃棄していた。
1999年4月にキリスト教民主同盟のコッホがヘッセン州首相に就任
した後、公文書館がほぼ空になっているのが判明した。前任者は社
会民主党のアイヒェルであった。州文部省は完全に空っぽになって
いた。庁舎のコンピュータのデータは基本的には消去されていた。
ザールラント州でも同じような事態が起こっていた。


7月2日

クリストフ ダオムが来年6月1日からサッカーのドイツ代表ティームの監督にな
る。それまでは元ドイツ代表のフォワード、ルーディ フェラーが移行期間の監督
をつとめることになる、とドイツサッカー連盟の広報部長ヴォルフガング ニーア
スバッハが、4時間にわたるブンデスリーガのバイエル レヴァークーゼンとバイ
エルン ミュンヒェンの代表と話し合った後、発表した。今までの監督エーリヒ 
リベックは欧州選手権での恥ずべき敗退のため辞任していた。

     その他のニュース
・中国とドイツは早急にリニアモーターカー トランスラピートを
上海と空港の間42キロを結ぶ路線で走らせることができるかどうか、
検討することになった。総建設費14億マルクのうちドイツ側が、5
億マルクを援助する。中国首相朱は首相シュレーダーと、ハノーフ
ァー万博の中国とドイツのパヴィリオンを見学した。
・雑誌「シュピーゲル」の記者ロレンツはフィリピンのホーロ島で、
武装イスラムグループのアブ サヤフのメンバーに誘拐された。彼
はひと月前にも彼らの暴行を受けていた。
・国連事務総長のアナンは、ハノーファー万博は諸民族の相互理解
に役立つと評価した。この万博の標語「人間・自然・技術」は極め
て優れたもので、人間が新ミレニアムの始まりにあたって直面して
いる課題を表現したものだ、と語った。


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