8月7日〜8月13日のドイツのニュース

8月7日

(デュッセルドルフ)極右勢力との戦いでドイツ全体が連帯を計画している、とド
イツ政府報道官ウーヴェ・カルステン ハイエとドイツユダヤ中央評議会の代表が
語った。「意思を示せ」という標語を掲げた行動は、90年代初めにドイツを襲っ
たメルンやゾーリンゲンでの極右の激しい活動のに対抗して結成された右翼に反対
する市民運動と結びつくことになるだろう。当時数十万人が右翼の暴力に抗議して、
光の列を作った。
ドイツユダヤ中央評議会議長パオル シュピーゲルは極右の暴力を見て、耐えられ
ない状況である、と語った。彼は、出来るだけ早く極右のドイツ国家民主党NPDの
活動を禁止できるかどうか判断することで緊張を取り除くよう求めた。

     その他のニュース
・デュッセルドルフでの手榴弾爆発事件の犯人捜査に関して、捜査
陣は住民の協力をより強く求めていくことにした。警察は現場の駅
前に小型バスを移動交番として置き、事件当日前後の目撃情報を行
き交う人々に求めている。また、外国人排斥と反ユダヤ主義的な発
言を行なっていた男に対する家宅捜索が行われた。
・携帯電話会社UMTSの競売で入札価格が蔵相アイヒェルの予想にだ
いぶ近づいてきた。マインツでの第6回の競売で、7つの買い手が総
額約185億マルクでの買収を提案した。アイヒェルは200億マルクを
まじめな価格として考えている、と以前から述べていた。
・ドイツ労働総同盟DGBは、使用者側に時間外労働の代わりに新た
に人を採用するように求めた。時間外労働は実際には、公に報告さ
れている時間の倍ほどあり、およそ18億時間の時間外労働の給与が
支払われていない、と労働時間の専門家ドムブレは見積もっている。
連邦労働施設の予想では、今年はおよそ20億時間の時間外労働に賃
金が支払われ、今までで最高になる。


8月8日

(モスクワ)モスクワ中心部の歩行者用地下道で爆破事件が起こり、少なくとも7
人が死亡し、30人以上が怪我をした。この事件の背景はまだ分かっていない。ロシ
ア首相ウラジミール プーチンは危機対策本部を設置した。モスクワ市長ユーリ 
ルシュコフは、手がかりから考えると、犯人はチェチェン人であろう、と語った。
それに対しチェチェン大統領アスラン マシャドフは、チェチェンの兵士がこの事
件に関与していることに異論を唱えた。ドイツ大統領ゲアハルト シュレーダーは
プーチンあての弔意の書簡のなかで、この行為を嫌悪すべき行為だと激しく批判し
た。

     その他のニュース
・スペインでは新たな一連のテロが発生している。バスク地方で時
限爆弾事件が起きた数時間後、マドリッドでも同じような事件が起
こり、10人が怪我をした。バスク地方では地元の経営者団体の会長
が時限爆弾で殺された。警察は地下組織ETAがこの爆破事件を起こ
したとみている。月曜日夜遅くにはビルバオで、ETA所属と思われ
る4人が暗殺の準備中に間違って爆発事件を起こしていた。
・ドイツ政府は、チリの元独裁者ピノチェト(84歳)の免責特権を
剥奪すると同国最高裁が決定したことを歓迎し、これによってチリ
の軍部独裁の暗黒の時代を明らかにする道が開けた、と外務省報道
官は語った。ピノチェトに対しては全部で157件の告発が行われて
いる。1973年から90年の軍部独裁時代にはおよそ3千人が殺害さ
れたり行方不明になった。数千人が国外に亡命した。
・民主党の米大統領候補ゴアは公式に副大統領候補としてジョセフ
 リーバーマン(58歳)を指名した。これによって彼はユダヤ人と
しては歴史上初めてアメリカ第二番目の地位をあらそう男になった。
彼は1988年以降コネチカット州選出の上院議員を勤め、潔白な人
柄の穏健派の政治家として活動してきた。
・極右勢力との対決で警察及び司法の断固たる対応を求める声がま
すます強まっている。キリスト教民主同盟CDU、キリスト教社会同
盟CSU、社会民主党SPD、自由民主党FDPは極右の暴力犯には迅速
に有罪判決を下すよう働きかけた。元大統領ヘルツォークは、刑罰
は犯行後すぐに行われるべきである、と求め、さらに政党や利害の
枠を越えて強く結束していくよう求めた。首相シュレーダーは今月
末に行われるドイツ東部訪問の主題を極右との戦いとする意向であ
る。


8月9日

(モスクワ)昨日起こったモスクワ中心部での爆破事件の重要な証拠はまだ見つか
っていない。国内秘密情報機関は、チェチェンの反乱者がこの事件を起こしたとみ
ているが、大統領ウラジミール プーチンは、この暗殺は犯罪者によって引き起こ
された可能性もあり、一国の国民すべてを疑うのは正しくない、と語っている。爆
破数時間後、チェチェンとダゲスタン出身の二人の男が逮捕された。しかし公式発
表によれば、二人はこの7人が死に90人以上が怪我をした暗殺事件には無関係であ
るようだ、と発表された。

     その他のニュース
・政府はいまのところ、キリスト教民主同盟CDUの党首メルケルか
ら出されている、極右を公務につかせないようにという要求に応え
るきっかけをつかめないでいる。内務省報道官は、憲法に忠実であ
ることが公務につくための前提であるので、極右政党に所属してい
るだけでは解雇する充分な理由にはならない、と語った。メルケル
は新聞に、公務員はあらゆる労働法上の手段を講じて極右に対抗し
なければならない、と語っていた。ラインラント・プファルツ州首
相ベックは、同州では都市部と公共交通での人事管理と、ネオナチ
とスキンヘッド監視を強化していく、と語った。
・連邦と格州の内務省は秋までに、ドイツ国家民主党NPD禁止動議
が憲法の規定にあっているかどうか決定したいとしている。内務省
次官は水曜日に、内務省と州の専門家からなる作業班を設置するこ
とを決め、この作業班は関連する憲法上の問題を検討することにな
っている。金曜日に第一回目の会合を行なう予定である。
・手榴弾による爆破事件から2週間たち、警察はさらに住民の協力
を求めていく。事件当時にその場所に居合わせたすべての人に、情
報を提供するように求めている。その外にも当日の写真やヴィデオ
などの提供も求めている。特殊機器を使って、どんな起爆装置が使
われたかが解明されることが期待されている。決定的な証拠はまだ
見つかっていない。


8月10日

(ベルリン)ドイツ国家民主党NPDの連邦と州による調査委員会の第一回会合を前
に、極右政党禁止に関する論戦が始まった。法務大臣ヘルタ ドイブラー・グメリ
ンはテレヴィで、禁止が法的に可能であるなら、この道を行くべきである、と語っ
た。キリスト教民主同盟とキリスト教社会同盟の国会内会派長フリードリヒ メル
ツは、国家民主党の活動禁止動議が連邦憲法裁判所で認められることに自信を覗か
せている。しかしウィーンユダヤ文書館長シーモン ウィーセンタールはこの禁止
を思いとどまった方がいい、今ある法律をネオナチに徹底的に適応するほうを支持
する、と語った。金曜日には初めて連邦と州の作業班が集まって、国家民主党の禁
止が可能かどうか審議する。

     その他のニュース
・ネオナチがヴッパータールのユダヤ人強制収容所ケムナの記念碑
のところで行われていた追悼式の参加者を襲撃して5週間経った。
犯人3人には少年刑として執行猶予なしの7ヶ月の拘留、という判決
が出た。裁判所は被告を重傷害罪と州平和法違反で有罪であると判
断した。この事件では多くの人が怪我をした。
・連邦カルテル庁は、石油会社が独立系のガソリンスタンド経営者
に、直営店よりも高めの値段で燃料を売っていたのを禁止した。こ
の値段の違いが独立系のガソリンスタンドの経営を圧迫して、競争
の妨げになる、という理由をあげた。石油会社はこの処分に抗議す
る。石油製品の値上がりは7月もドイツの物価を押し上げる要因に
なっている。連邦統計庁の調べでは、この一年で暖房用油は41%、
動力用燃料油は20%値上がりした。全体で7月のインフレ率は1.9%で
あった。
・ドイツのUMTSのライセンスの競売はまだまとまっていない。マイ
ンツでの競売ではおよそ今まで最高の470億マルクの値段がついた。
蔵相アイヒェルはライセンス売却の全額を国の負債の返却に当てる
意向である。利息支払いがなくなることで浮いたお金は主として交
通整備計画と教育に使われることになっている。UMTSの技術は、
2003年から始まる携帯電話のデータ通信とマルチメディアに使われ
るもので、このライセンスを獲得した人には巨額の商いが約束され
ている。


8月11日

(ベルリン)政府はUMTSの売却益の使いみちに関する話し合いを行なうことを拒
否している。政府報道官ウーヴェ・カルステン ハイエは、新しい携帯電話のライ
センスの競売で入ってくるお金を全額連邦の負債返還のために利用するという点で
ははっきりした約束が結ばれている、と語った。ハイエは、連邦は売却益を州とわ
けあうべきだとするバーデン・ビュルテンベルク州の要求を拒否した。
UMTS携帯電話ライセンスの競売では金曜日までに600億マルク以上の入札があっ
た。蔵相ハンス アイヒェルは当初200億マルクで売却の予定であった。専門家は
1000億マルクも考えられる、と見ている。debitelとSwisscom社からなる企業
連合は落札を断念した。

     その他のニュース
・キリスト教民主同盟CDUの不整資金疑惑の鍵を握る人物の一人、
党元全権リュティエは元首相コールに極めて不利になる発言を行な
った。リュティエは、1992年にスイスの隠し口座を解約したことを
コールに報告していた、と国会の疑惑追求委員会に文書で解答して
いた。彼によれば、150万スイスフランが元会計責任者キープと財
政顧問ヴァイラオホ、それに自分のところに3つに分割されて預け
られていた。コールはこの口座について何も知らなかった、と言い
続けてきた。
・金曜日から連邦と州の作業班は、外国人差別の陰謀を企んでいる
と考えられている極右政党ドイツ国家民主党NPDの禁止を検討し始
めた。作業班は10月半ばまでに、連邦憲法裁判所に対して出す予定
の禁止動議の法的前提条件を明らかにすることになっている。キリ
スト教民主同盟、キリスト教社会同盟が禁止を強く求めている。ま
た政府は、ドイツ国家民主党が最高裁で活動を認められることを回
避することを期待している。
・万博2000は休暇期間中だけでなく閉幕まで入場料を値下げしたま
ま据え置き、ドイツ鉄道も特別料金を続ける、と主催者は発表した。
新たなキャンペーンや特別料金を導入したにもかかわらず、入場者
は思ったほど増えてはいない。当初は22週間で4000万枚の入場券を
売りたいと考えていたが、今ではせいぜい2000万枚しか売れないと
見ている。


8月12日

(ベルリン)元首相ヘルムート コールは、自分がキリスト教民主同盟CDUの不正
資金疑惑で組織的中傷の犠牲者になっている、と感じている。彼は新聞で、政府内
の人間、連立与党、マスコミの一部が一緒になって、自分を犯罪者にし、自分の名
声を汚そうとしていが、その試みは成功しないだろう、と語った。彼はキリスト教
民主同盟の元全権ウーヴェ リュティエの、1992年にコールは党のスイスの隠し
口座の解約について知っていたという証言を改めて事実無根である、と否定した。

     その他のニュース
・極右勢力との戦いをめぐる議論の中で、ドイツ国家民主党NPDを
禁止することは法的に認められるという意見を持つ専門家が増えて
いる。たとえば、元憲法裁判所の裁判官マーレンホルツ、バイエル
ン州内務大臣ベックシュタイン、政府の秘密情報機関の調整官ウー
アラオがそのような意見を述べた。ミュンヘンではおよそ3千人が
外国人排斥運動や極右の暴力に反対してデモを行なった。ザクセン・
アンハルト州では警察が、ホームレスを殺害した疑いで、極右活動
家を逮捕した。
・ナチの強制労働者とナチ体制下の犠牲者に対する賠償に関する法
律はこの土曜日に発効した。今も生存中の150万人もの元強制労働
者は基金「記憶、責任、未来」から5千〜1万5千マルクの賠償金を
受け取ることが出来る。申請する期間は8ヶ月である。この基金に
は政府と経済界からそれぞれ50億マルクを支出した。一方ドイツ
カトリック教会はナチ時代に多くの強制労働者を使用したことを認
めた。教会が基金にお金を出すかどうかはまだ決まっていない。
・イスラエルは、エルサレムの将来に関する対立を解決するため、
スペイン王カルロスの仲介を望んでいる。イスラエル外相ベン ア
ミはマドリッドを訪問してEU外交問題調整官のソラーナ、スペイン
外相ピークと会談し、この意向を伝えた。一方アラブとヨーロッパ
諸国を訪問中のパレスチナ大統領アラファトは、一方的にパレスチ
ナの独立を宣言しても国際的な支持は得られないことを認めている。
ロシア、ノルウェーなどはイスラエルの賛成なしでパレスチナ国家
を建国することを思いとどまるように言われている、と彼は語った。


8月13日

(ベルリン)ベルリンでは、39年前の壁の建設開始を記念し、ドイツ分割の犠牲
者を追悼し花輪をささげる式典が行われた。最新の集計によれば1948年から
1989年の間に東西ドイツ国境で957人が死亡した。多くの大使館の代表者や政治
家たちが出席して、連合軍の元国境検問所「チェックポイント チャーリー」があ
った所に元の建物に忠実に再現された記念の建物の落成式が行われた。テューリン
ゲンとヘッセンの境にあった、アメリカの拠点「ポイント アルファ」にはドイツ
分割と再統一の記念碑の除幕式が行われた。

     その他のニュース
・10月3日にドレスデンで行われるドイツ統一記念日の式典のやり
方をめぐる対立が深まっている。キリスト教民主同盟CDUとキリス
ト教社会同盟CSU内部には、元首相コールが演説をすることが許さ
れないなら、式典には参加しないつもりの者もいる。また計画され
ている東ドイツ最後の首相デ メジエルの演説を拒否するものもい
る。キリスト教社会同盟の首脳は、式典ボイコットは行なわないと
明言している。計画ではこの式典では、他に大統領ラオとザクセン
州首相ビーデンコプフ、フランス大統領シラクが演説することにな
っており、コールは当初から演説する予定がなかった。
・週末には多くの反右翼のデモが行われたが、極右の暴力事件も数
多く発生した。コンスタンツではスキンヘッドが二人のトルコ人を
襲撃した。シュレースヴィッヒでは警察がネオナチの行進を阻止し
た。ザクセン・アンハルト州ではヒトラーの右腕ヘスの記念像が取
り去られた。ザクセン州のツヴィカオでは50の団体のおよそ2千人
が外国人排斥運動と極右に反対するデモを行なった。
・イランでは二人の自由主義の報道関係者が逮捕された。二人は以
前イラン報道連盟から、その仕事に対して、表彰を受けたことがあ
り、大統領ハタミの改革路線の支持者として知られていた。土曜日
にはイランの文化相で報道政策の責任者、モハドシェラニ師が法廷
に召喚された。4月以降、保守派が主流である司法が、イランの20
以上の改革派新聞を禁止し、多くの報道関係者が逮捕された。


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