8月21日〜8月27日のドイツのニュース

8月21日

(モスクワ)沈没したロシア原子力潜水艦クルスクの乗組員118名は全員死亡して
いたことを、ロシア北部艦隊参謀本部が確認した。その前にはノルウェーの潜水夫
が潜水艦の内部の脱出用ハッチをあけることに成功し、艦内が完全に水没していた
ことを確認していた。一方ロシア政府はノルウェー政府に公式に、遺体を収容する
ように要請した。ドイツ首相ゲアハルト シュレーダーはロシア大統領ウラジミー
ル プーチンに、犠牲者の家族に、ドイツはこのつらい時間ロシアの味方である、
という内容の弔意を伝えるように依頼した。

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・ハンガリーのバラトン湖へ休暇旅行中の8人のドイツ人の若者が、
ニーダーエスターライヒのバス事故で死亡した。その外に、南ドイ
ツ出身の若者61人のうち、23人が重傷を負った。2階建てバスが高
速道路建設現場でトラックと正面衝突した。警察はトラックの積載
過剰が原因と見ている。死亡した若者は14歳から18歳であった。
・キリスト教民主同盟CDU党首メルケルは、元首相コールの処遇を
めぐる議論を経て、党の首脳委員会の支援を取り付けた。議長と首
脳の意向を受けて、同党は10月3日に行われるドイツ統一の記念式
典にも参加することになる。新聞報道によれば、コールは連邦議会
でも演説をする意思はない、とのことである。一方党主催の記念式
典で彼はスピーチを行なうことになっている。
・首相シュレーダーはドイツ東部を2週間かけて訪問するが、ドイ
ツ東部への特別援助を現在の水準で維持することを確認した。旧東
ドイツ諸州の特殊な事情に合わせて、新たな連帯協定をこの任期中
に結ぶ、とシュレーダーは語った。また、極右との戦いは国の威信
を賭け、若者に対する支援との両面で行なうことになる、とも語っ
た。旧東ドイツ市民運動家のショアレマーは、東部では多くの人が
自分を二流のドイツ人であると感じ、これが外国人に対する敵意の
温床になっている、と語った。


8月22日

(ムルマンスク)ロシア大統領ウラジミール プーチンは原子力潜水艦の事故の際
に危機管理に対して激しい非難を受けたあと、初めて北部艦隊の基地に滞在した。
ムルマンスク近郊のクルスクの母港で彼は、乗員118名の家族に弔意を示した。そ
の際彼はロシア海軍の救助部隊が貧弱な体制であったことを非難した。水曜日に彼
は海上で行なわれる公式の追悼行事に参加する。彼はバレンツ海の救助作業を行な
う現場に行かなかったため、激しく非難されている。その外に、外国の援助を受け
入れるまで時間がかかったことを批判する新聞もある。
ノルウェー軍当局は、原子力潜水艦内での爆発は、攻撃系統の異常で引き起こされ
た可能性が高く、衝突があったとの報告は「ロシア国内向けの宣伝」であると発表
した。

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・ドイツ国防大臣シャルピングは、ロシアが北海での潜水艦事故の
処理で、乗組員救出に関する国際条約に従わず、外国と共同作業を
行なうのを躊躇したことを批判した。彼は、西側は沈没した潜水艦
を海の藻屑にするためであれ、性能向上のためであれ寄与する、と
語った。しかし彼は、ロシアの軍縮の取り組みと国際的な協力体制
を行なうようになったことを評価した。
・39歳のモザンビーク人がデッサオで死亡して10週間たち、犯人と
して訴えられた3人の若いネオナチ(16歳から24歳)に対する訴訟
が始まった。裁判の冒頭で3人は外国人を憎むようになった理由を
述べた。殺されたモザンビーク人はドイツで12年前から仕事をして
おり、妻と子供3人を故郷に残してきていた。一方ボッフムでは大
衆煽動の件で、3人の極右が執行猶予なしの拘留刑8〜10ヶ月の判決
を受けた。この3人は昨年12月にナチの言葉遣いで騒ぎ、外国人に
暴言を吐いていた。
・ドイツ産業商業会議議長シュティールは法的年金受給開始年齢を
67歳に引き上げるという要求を行ない、大きな抵抗にあっている。
連邦労働省は、そのような措置は現在の労働市場の状況から見て問
題にならない、と声明を出した。ドイツ労働総同盟は、それでは年
金改革がうまく行かなくなる、と批判した。サーヴィス業の労働組
合5つと戦災者戦没者遺族社会年金受給者連合は、現在が失業者の
多い時代であることを指摘して、この措置は論外であるとしている。


8月23日

(マナマ)143人を乗せたガルフ航空のエアバスA320がバーレーンに着陸しよう
とした際、海に墜落した。国営テレヴィの報道によれば、このカイロ発の飛行機は
エンジン内部に火事が起こったため墜落した模様である。また救助作業は始まって
おり、墜落した機体はバーレーンの北約5キロの地点にある、と伝えられている。
生存者がいるかどうかはまだ不明である。
バーレーン当局はまず、当初この飛行機はカイロにむけて飛行中である、と報道し
ていた。

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・ロシア大統領プーチンは、原子力潜水艦クルスク沈没の政治的な
責任をとる、と発言した。一方事故の全容解明前には軍の首脳の解
雇は行なわないとも語り、辞任は受け入れられない。犠牲者の家族
はムルマンスクでの話し合いで追悼式典を行なうことを拒否し、遺
体の収容を先に行なうよう求めている。
・首相シュレーダーは極右との戦いをドイツの特別な責任であると
強調した。旧強制収容所ドーラを訪問した彼は、ドイツはナチ時代
の犠牲者と生存者に対して、外国人排斥と人種差別に厳しく対処し、
その芽を摘む責任がある、と語った。この強制収容所ではV2ロケッ
ト製造のため1945年までに2万人の強制労働者が死亡していた。
・社会民主党SPDと緑の党はヘッセン州首相コッホが、キリスト教
民主同盟CDUの不正資金疑惑解明委員会で偽証をした、と非難した。
キリスト教民主同盟の国会議員ロルツは、同党の議員には党の資金
の着服について1993年当初から知らされていた、と証言していた。
コッホは党首脳部に入ってから知った、と語っていた。


8月24日

(マナマ)エアバスA-320がバーレーンの海岸で墜落し、143人全員が死亡した
事故で、専門家がその原因を解き明かそうとしている。調査官は木曜日にコックピ
ットのヴォイスレコーダーを回収し、事故当夜に発見されたフライトレコーダーと
あわせて事故の原因究明に利用する。ガルフ航空の情報によれば、事故機はカイロ
を出発する前から、ペルシャ湾岸のバーレーンの首都マナマに3度目の着陸を試み
る、墜落するまでは異常がなかった、とのことである。一方、救援隊は遺体を収容
した。バーレーン当局は国際事故調査委員会を設置する、と予告した。

     その他のニュース
・沈没したロシア原子力潜水艦クルスクの乗員の家族は木曜日に、
沈没現場で死者と別れを告げた。ノルウェーの救助隊長はロシア海
軍を厳しく非難し、ロシア軍は西側の救助活動を間違った情報で妨
害し、ノルウェーと英国の潜水夫の命を危険にさらした、と語った。
大統領プーチンはこの事故の解明するまでは軍首脳の解任は行なわ
ないと語った。
・ホーロ島のヨーロッパ人の人質は、フィリピン政府に人質解放の
ために戦略を調整し、軍部の先走りをおさえるように要請している。
この話は、ある報道関係者が誘拐グループに認められて、彼らのと
ころで聞いた。首相シュレーダーはフィリピン政府に人質の生命を
実力行使で危険にさらさないように求めた。エストラーダ大統領の
報道官は、政府は人質の解放を暴力を用いずできるだけ早急に行な
うつもりである、と語った。
・キリスト教民主同盟CDUの不正資金疑惑との関連で元首相コール
に対する新たな疑惑が高まってきた。彼は1982年に隠し口座の設置
を指示していた、という新聞報道が行われた。彼の選挙資金として
およそ6百万マルクが秘密裏に同党の連邦議会の会派の資金から、
キリスト教民主同盟に移され、彼の指示でその資金は信託口座に隠
された、とのことである。コールはこの疑惑を否定している。


8月25日

(モスクワ)大統領ウラジミール プーチンは、原子力潜水艦クルスクの事故の間
自分の取った行動に対し厳しい批判を受けた。ロシア首脳は賠償金を支払う努力を
している。クルスクの乗務員118名の遺族は第一回目の賠償金の支払いを受けた。
社会保障問題担当の副首相ヴァレンティナ マトヴィエンコは総額5万7千マルクの
慰謝料を遺族に支払った。遺族の多くは彼女とともに沈没地点に行くことを拒否し
た、とロシアのテレヴィは報道している。
プーチンは来年には軍備のより多くの資金を支出する、と語った。原子力武装部門
では賃上げが行われる予定である。

     その他のニュース
・ガルフ航空機の事故原因の究明が行われている。湾岸地域の救助
隊は国際的な支援を受けている。ガルフ航空は墜落機のエンジンが
火を噴いたと言うことを示唆してはいない、とのことである。墜落
前に操縦士は2回着陸を試みたがスピードが出過ぎ、また高度が高
すぎだった、という情報もある。
・首相シュレーダーはポーランドに対してEUの東ヨーロッパへの拡
大計画を説明し、経済基盤の整備により力を注ぐように求めた。ポ
ーランドのEU加盟とEUの拡大は、ヨーロッパが持続的に平和的な発
展をするために行なわなければならない歴史的な課題であり、また
ドイツにとっても経済上重要な意義を持っている、と彼は語った。
・元首相コールのいわゆる隠し口座に関する最新報告を、月曜日に
連邦議会の疑惑解明委員会も調査する。キリスト教民主同盟CDUの
元党首ショイブレが、その報告の情報を提供した模様である。新聞
報道によれば、コールは1982年の首相選挙後隠し口座の手法を自ら
導入し、そのころ連邦議会の同党とキリスト教社会同盟の統一会派
から秘密裏にキリスト教民主同盟の口座へ6百万マルクを振り込ん
だ、とされている。コールは隠し口座を設置したことを公式に否定
しているが、会派から党への資金の振り替えに関しては認めている。


8月26日

(ハンブルク)国家民主党NPDの禁止をめぐる議論は、憲法裁判所が見るところ、
極右の活動を弱体化させている。「ヴェルト アム ゾンターク」紙は、憲法裁判
所の秘密文書を引用して、同党の活動禁止をめぐる議論のおかげで同党とネオナチ、
さらにスキンヘッドの間のつながりにひびが入った、と報じた。
ネオナチの活動は土曜日もいくつかの州で行なわれ、警察を休ませてはおかなかっ
た。ハレでは約100人の極右が国家民主党の禁止に反対の集会を行なった。オスナ
ブリュッケでは警官隊の大規模な投入が行われ、ネオナチの集会が阻止された。ブ
ランデンブルク州のグーベンでは再び、スキンヘッドから逃れようとしたが死んだ
アルジェリア人の記念碑が汚された。

     その他のニュース
・連立与党内部で、弾薬工場をトルコに輸出するかどうかをめぐる
対立がさらに強まっている。連邦議会の外務委員会議長クローゼ
(社会民主党SPD)は武器輸出の方針を変更するよう求め、NATO加
盟諸国に対する武器輸出は基本的には許可されねばならない、と語
った。一方緑の党のロートは、人権が武器輸出をするかどうかの判
断基準でなければならない、と語った。
・EUの要請でオーストリアの内政の状況を判断するいわゆる3賢人
は、オーストリアに対する制裁解除を求める方針である、と新聞が
報じた。火曜日に彼らはもう一度話し合いを行なう。右翼の自由党
FPOeが政権に参加したためEU加盟14ヶ国がオーストリア政府との外
交交渉を中断していた。
・フィリピン政府はホーロ島の人質解放が近々行われるという期待
を持っている。ドイツ人ヴェルナー ヴァラートと少なくとも5人
の西側の人質は日曜日に解放される、と交渉団長アヴェンタヤード
は誘拐グループアブ サヤフとの電話交渉のあと発表した。フィリ
ピン特派員はこの発表を疑問視している。


8月27日

(マニラ)フィリピンのイスラム教反乱分子はゲッティンゲン出身のヴェルナー 
ヴァラートと4人の女性の人質を4ヶ月ぶりに解放した。ヴァラートは残された人
質の今後が心配である、と語った。彼の26歳の息子マルクとその他7人の人質はな
お解放されていない。交渉団によれば月曜日にはたぶん一人の南アフリカ人が解放
される可能性がある。月曜日には解放された全員が、交渉の仲介を行なったリビア
に飛行機で運ばれることになっている。連邦首相ゲアハルト シュレーダーと外務
大臣ヨシュカ フィッシャーは人質が解放されて安心したと語り、フィリピンの交
渉団が過激派アブ サヤフとの交渉を今後も継続し、成果を上げられるよう改めて
希望を述べた。

     その他のニュース
・衝撃的な内容の文書が見つかり、キリスト教民主同盟CDUのショ
イブレとバオマイスターの月曜日の再尋問を前に緊張が高まってい
る。その文書は武器商人シュライバーの10万マルクの献金に関する
ものである。ショイブレはシュライバーから直接その金を受け取っ
た、と語っていたのに対し、バオマイスターはシュライバーは自分
にその金を渡し、その後彼女がショイブレに手渡した、と説明して
いた。ショイブレは元首相コールの100万マルクの資金振り替え容
疑についても質問されることになっている、と新聞で報道された。
・首相シュレーダーは極右との戦いに関して、国家民主党NPDの禁
止だけでは十分ではないと考えている。極右と人種差別はドイツ東
部に限られた問題ではなく、みんなで一緒に戦いうる国全体の問題
であると語った。警察と司法が暴力行為に対して厳しく断固とした
措置を取ることが必要であり、職業教育を受けたり仕事をしている
若者は将来の見通しが不可欠である。また市民と社会の参加が早急
に求められると語った。
・住宅業界はドイツ東部の数十万の家の取り壊しを求めている、と
ドイツ住宅建設業界連合会長のシュタイナートは語った。東部では
空き家が危険なほど増え、地域全体がスラムになる危険性があると
ころもあり、社会的な平和が望めなくなっている、住宅事情が極右
が発生する原因の一つである、という見解も語った。政府は東部は
およそ100万の家が空き家になっているとみている。


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