9月4日〜9月10日のドイツのニュース

9月4日

(ベルリン)年金問題に関して社会民主党SPDと労働組合が合意し、2001年から
基本的には、手取り賃金の原則が再び適用されることになる。首相ゲアハルト シ
ュレーダーとドイツ労働総同盟代表のディーター シュルテはその外に、中小企業
の企業年金を拡充して、経営者が追加義務年金の支払いを行なえるようにする、と
発表した。それ以外の懸案は社会民主党と労働組合の今後の会談で話し合われる。
両者の作業班が今後詳細な妥協事項を練りあげる。

     その他のニュース
・ヘッセン州首相コッホは同州キリスト教民主同盟CDUの不正献金
問題で、自分に対してむけられた最新の非難を、何ら新しいもので
はない、と退け、辞任を改めて拒否した。同党首メルケルは、コッ
ホの発言を疑う根拠はない、と語った。検察庁は同党党員一人を文
書偽造の件で取り調べる、と発表した。ただし、コッホがこの文書
について知っていた証拠はない、とのことである。問題の党員は現
金出納簿を廃棄し、秘密口座を隠蔽するべく、別の出納簿を作って
いた模様である。
・首相シュレーダーと外相フィッシャーは在外ドイツ大使に、ドイ
ツのよい面を伝えるように要請した。大使は、政府が外国人に対す
る敵意、ネオナチの暴力、反ユダヤ主義を許容していないことを伝
えることになる。また外相は現連立政権の基本的な外交方針は平和
主義であることを強調し、その中にはNATOと米国との協力関係、
ロシアとの友好、ヨーロッパ統合の推進が含まれている、と発言し
た。さらに外交官制度の改革も予告した。外国での仕事は市民に親
しみやすいものでなければならず、また若者に積極的に参加を求め
ていかねばならない、と語った。
・ドイツ東部は約100万戸空き部屋を抱えているが、これは地方公
共団体にとっては存亡にかかわる問題に発展している、と各州の建
築大臣は予想している。空室のままになっていると部屋が荒れるだ
けでなく、住宅産業が難しい状況に追い込まれる、と予想される。
この理由として人口減少と若者の西部への流出をあげている。


9月5日

(ベルリン)連邦政府は店舗の開店時間の延長をしない方針である。政府は閉店時
間法で決められた営業時間をのばす必要を認めていない、と報道官が発表した。ド
イツ労働総同盟DAG代表のローラント イセンはビルト紙に、首相ゲアハルト シ
ュレーダーは労働組合に閉店時間の自由化に反対すると約束した、と語った。ザク
セン州経済大臣カーヨ ショマー(キリスト教民主同盟CDU)は首相を、労組の利
益に屈伏し、連邦参議院を軽視していると批判した。過半数の州は、店舗の営業時
間を延長という連邦参議院の提案を成立させる意向である。

     その他のニュース
・乗用車からのアウトバーン料金徴収はしばらくドイツでは行なわ
れない。交通大臣クリムトは、専門家会議から出されている乗用車
に対するアウトバーン利用券の導入を拒否した。また彼はトラック
に対する料金徴収提案には賛成した。
・年金改革は、政府が新たな譲歩を行ない、広い支持を受けて成立
する可能性が高まってきた。キリスト教民主同盟の総書記ポーレン
ツとキリスト教社会同盟の社会福祉の専門家ゼーホーファーは、年
金を手取り収入にあわせて調整する方向へと妥協を引き出した点は
両党にとって成果である、と評価した。両党は政府案の完成を待つ
ことにしている。
・厚生大臣フィッシャーは今年は法定健康保険は収支の均衡がとれ
たものになると予想している。今年前半の赤字は24億7千万マルク
で、昨年と比べて25%減である。


9月6日

オーストリア大統領クレスティルはニュー ヨークでフランス大統領シラクと短い
会談を行なった。次回の実質的な話し合いに期待がもたれる。
シラクはEUの3賢人の報告をまだ知らされていないようなので、クレスティルは、
シラクが制裁問題で最終的な決断を今にも行なうことを期待していはいない。ブレ
アやグテレスなどのその他のEU政府首脳は、クレスティルにまもなく制裁は解除さ
れると確約した模様である。

     その他のニュース
・現連立政府は、ドイツでは重要な問題を国民表決によって決定で
きるようにする意向を持っている。社会民主党と緑の党は水曜日に
法律改正に関する動議を行なう、と発表した。可決のためには連邦
議会と連邦参議院で3分の2のの賛成が必要で、そのためには野党の
賛成も必要である。キリスト教民主同盟、キリスト教社会同盟は当
面反対する。
・社会民主党の連邦議会議員団はUMTSの使用許可販売で得た収入を
財政赤字の補填に使うという蔵相アイヒェルの計画を承認した。そ
の間の利子収入約50億マルクは交通、教育、都市建築のために使わ
れることになる。議員たちはその他に年金改革、予算、労働市場、
極右との戦い、エネルギー政策について話しあった。
・ヘッセン州首相コッホと連立相手の自由民主党の協力者は、キリ
スト教民主同盟の不正献金疑惑に関して、連邦自由民主党からの圧
力を受けている。連邦自由民主党幹部のデーリングは首相の椅子に
固執するコッホに怒り、副党首のブリューデルレは連立解消をヘッ
セン州自由党にすすめた。


9月7日

(ヴィースバーデン)自由民主党からの圧力を受けて、ヘッセン州内閣官房長官フ
ランツ・ヨーゼフ ユング(キリスト教民主同盟)は同州同党の献金と財政問題の
疑惑に関連して、辞任した。ユングは州首相ローラント コッホの政治上密接なパ
ートナーであり、隠し口座問題で職を失った政治家の中でもっとも重要な職にあっ
た人物である。しかし、彼は辞任に際して個人的な失策があったとは認めなかった。
野党の社会民主党と緑の党が州首相コッホに、出直し選挙を行なうように求めてい
るのに対し、与党ヘッセン州キリスト教民主同盟と自由民主党は連立継続を確約し
ている。コッホは、ヘッセン州自由民主党が信頼してくれる間は、州首相職にとど
まる、と語った。

     その他のニュース
・国際金融市場でのユーロの値下がりはまだ終わりが見えない。政
治家と発券銀行の関係者からユーロを守る発言があったにもかかわ
らず、木曜日には最安値をつけた。首相シュレーダーは、彼にユー
ロ安の責任があるという非難の言葉を退け、ドイツとヨーロッパの
経済に関するデータを見れば、落ち着きを取り戻すきっかけになる、
と語った。ヨーロッパ中央銀行は1ユーロ=0.76-86ドルを標準為替
レートとしていた。
・燃料用油とディーゼルの値上がりにもかかわらず、ドイツの8月
のインフレ率は0.2%下がって1.8%になった。原油のほかは特にガス
と自動車保険の値上がりが影響を与えた。
・フランスでは燃料税減税をめぐる政府との交渉が成果をあげなか
ったので、高騰する燃料に対する抗議が強まっている。運送業、農
家、タクシー業界が製油所、燃料貯蔵庫、道路、鉄道などをあちこ
ちで封鎖した。燃料タンクがあちこちで空になった。ドイツ政府は
あらためてドイツ自動車連合が出している環境税撤廃要請を拒否し
た。


9月8日

(ヴェルサイユ)ユーロ採用諸国の大蔵大臣は金融市場でのユーロの交換レート下
落に懸念を表明した。現在の対ドル交換レートはユーロ地区の経済が安定している
事態を反映していない、とヴェルサイユで行なわれているヨーロッパ中央銀行の代
表者会議後に出された共同宣言で強調されている。ユーロは導入以降20ヶ月で対
ドルで25%以上も価値を下げた。中央銀行はすでに6度金利をあげている。

     その他のニュース
・EUが設置した専門家委員会は、オーストリアに対して課されてい
る制裁を解除するよう、進言した。この調査報告書によると、オー
ストリアでは、少数派、難民、移住者に対して他のEU14ヶ国と同党
の保護が与えられている、とのことである。
・北西中国の新疆自治区で大規模な爆発事故が起こった。新華社通
信によれば、首都ウルムチで弾薬輸送中に爆発が起こり、死傷者
100人がで、多くの建物が被害を受けた。
・連邦自由民主党はヘッセン州同党に対する圧力を強め、キリスト
教民主同盟の不正資金疑惑を理由として州首相コッホとの協力関係
に終止符を打つよう求めている。自由民主党の首脳数人がコッホに
辞任を改めて求めた。コッホは木曜日に辞任した州官房長官の後任
を、ヘッセン州大蔵次官ヨッヘン リーベルにした。コッホは火曜
日には州議会で信任投票の提案を行なうつもりである。


9月9日

(マニラ)ドイツ人マーク ヴァラートとフィンランドとフランス人合計4人の西
ヨーロッパ人にとって、フィリピンでの人質事件は発生以来4ヶ月半ぶりに解決し
た。4人は土曜日に劇的に自由になった。イスラム教反乱分子が身代金をめぐる対
立から、南フィリピンのホーロ島のジャングルの中の収容所近くで銃撃戦を行なっ
た。その際少なくとも2人が死亡し、その他に8人が重傷をおった。人質は無傷で
逃げ出し、リビア経由で月曜日に母国に戻ることになっている。首相ゲアハルト 
シュレーダーはリビア政府に人質事件解決の努力に対して感謝した。

     その他のニュース
・解放されたマーク ヴァラート(27歳)の故郷ゲッティンゲンで
は人々が喜びの声をあげている。両親は息子が自由を取り戻し、ほ
っとしている。大統領ラオと政府は、人質事件がうまく解決し、安
堵しているとの声明を出した。首相シュレーダーは不安の時期はよ
うやく終わりを告げ、家族とともに喜んでいる、と語った。外相フ
ィッシャーはフィリピンのイスラム教グループに、その他の捕虜も
解放するように求めた。
・EU諸国の蔵相はOPEC産油国に原油採掘量を増やすように求めた。
ヴェルサイユでの会議の後、原油価格は経済成長の観点からすると
下がるべきである、と要求した。具体的な数字はあげられなかった
が、1バレルあたり28ドル以下が合理的であるとするOPECの過去の
発表を想定している。現在価格は33ドル程度である。OPEC諸国では
採掘量を増やすことに賛成の国が過半数を越える模様である。
・燃料の高騰に対する抗議がフランスから近隣諸国に飛び火した。
イタリアとドイツでは漁師とトラック運転手の抗議行動が散発的に
起こっている。イギリスでは各所でトラック運転手が精油所を取り
囲んでいる。フランスの抗議行動はますます拡大している。政府は
燃料税減税を拒否した。


9月10日(日)

(ウィーン)OPECは石油消費国からの強い圧力を受けて、一日あたりの採掘量を
80万バレル増やすことに合意した。増産は10月から始められる。ウィーンで開か
れている石油相の会議で月曜日に正式決定が行なわれる。OPEC議長のアリ ロド
リゲス(ヴェネズエラ)は、燃料価格の高騰に対し石油生産者が責任ある対応をと
る、と語った。アメリカ政府はこのOPECの決定を正しい方向への一歩であると評
価している。一方連邦運輸相ラインハルト クリムトは今回の増産では不十分であ
る、と見ている。

     その他のニュース
・パレスチナ指導部は、イスラエルとの平和交渉締結により時間を
使うために、少なくとも2ヶ月パレスチナ国家建国を延期した。パ
レスチナ解放機構の中央評議会はガザ市で、建国宣言を行なう日程
を決めるために、11月15日までに再び会合を開くことを決めた。イ
スラエルとアメリカはこの決定を歓迎している。月曜日には早くも
平和交渉が開始される見込みである。
・南フィリピンで人質になっていたゲッティンゲン在住のヴァラー
トとフィンランド人二人とフランス人をリビアに運ぶ予定だった飛
行機は予定より遅れて出発する。遅れの理由は報道されていない。
・年金改革をめぐる対立で連邦政府は労働組合にさらに譲歩するこ
とを検討している。政府は企業年金を受け取るための規定を緩和す
る、2011年から行なわれる年金水準の切り下げを今までの計画より
縮小する、などの報道が行なわれている。社会民主党の社会福祉専
門家シュライナーは今後も話し合いを続けていくと語っているが、
国会議員団幹部のシュトルックは早急に合意を得たい、としている。


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