10月30日〜11月5日のドイツのニュース
10月30日(月)
(ダマスカス)シリア大統領バシャル エル アサドはイスラエルに対し、シリア
との和平を支持するよう要請した。シリア政府にとっては、ユダヤ人国家とこれ以
外の交渉を開始することには取り立てて意味はない、と彼は語った。しかし、アサ
ドは連邦首相シュレーダーとの会談で、シリアはそれにもかかわらずこの地域に平
和をもたらすために真面目な努力を行なう、と強調した。シュレーダーはイスラエ
ルとパレスチナ両者に対し、交渉を再開するよう再び訴えた。シュレーダーはすで
に同じ訴えをアンマンでも行なった。火曜日にシュレーダーはイスラエルに行く予
定である。
その他のニュース
・マドリッド北東部の住宅地で起ったテロと思われる攻撃でスペイ
ン最高裁の裁判官ケロール(69歳)が殺害された。同時に運転手と
警護の警官も自動車爆弾で死亡した。60人を越える人々が怪我をし、
命にかかわる重傷をおった人もいる。この事件の犯行声明は出され
ていない。警察と政府はバスク分離派のETAの犯行である、と見て
いる。
・ロシア大統領プーチンはEU委員会議長のシラクとの首脳会談後、
チェチェン問題の政治的解決の緊急性を認めたものの、「テロリス
ト」との交渉は行なわないと強調した。共同声明でEUとロシアはコ
ーカサス共和国の独立を明確に否定した。また両者はエネルギー問
題に関しては密接な協力を行うことも強調した。プーチンはロシア
は長期的にヨーロッパ各国に対しエネルギー供給を行なう準備があ
る、と請け合った。
・キリスト教民主同盟と社会民主党が月曜日に移民政策に関して再
び妥協を行なう方向に動きだした。超党派で法的解決を目指すとい
う合意はすべての人にとってよい話題である、とキリスト教民主同
盟総書記マイアーは語った。社会民主党総書記ミュンテフェリング
も、同党も野党とは対立点があるが、合意の上解決する望みは捨て
ていない、と語った。しかしキリスト教社会同盟は、合意が成り立
つのは、与党が亡命権の制限と亡命手続きの迅速化の準備を整えた
場合に限られる、としている。
10月31日(火)
(台北)台北空港でのシンガポール航空のボーイング747の墜落と爆発の際でおそ
らく100人ほどの死者が出た模様である。台湾総統陳水扁は、犠牲者の多さに深い
遺憾の意を表した。運輸省は今まで分かっている死者の数は47名であると確認し
た。48人がまだ行方不明である。このジャンボジェットはロサンゼルスに向けて
離陸数秒後事故を起こし、乗客159名、乗務員20名が乗っていた。死者怪我人の
数に関しては様々な情報がある。事故が起きた時間には雨と台風が台北を襲ってお
り、気象台は台風警報を発令していた。
その他のニュース
・首相シュレーダーはイスラエルを訪問し同国との友好関係を維持
していくと発表した。パレスチナ人居住区に対するイスラエルの攻
撃がなければ、彼は同国首相バラクが和平を進める意志を持ってい
る、と請け合っていたところである。パレスチナとの仲介に関して、
ドイツもヨーロッパもアメリカの役割を引き継ぐつもりはない、と
シュレーダーは強調した。彼の今回のイスラエル訪問は、両国の友
好関係を示すためのものである。シュレーダーはホロコースト記念
碑を訪問した。水曜日にはアラファトとの会談を行なう予定である。
・パレスチナ人数百人とイスラエル軍の市街戦が火曜日もガザ地区
と西ヨルダンランドで行なわれ、新たにパレスチナ人4人が死亡し、
数十名が怪我をした。ガザ市の東側のカルニでの衝突の際3人が射
殺された。また西ヨルダンランドのラマラでは17歳のパレスチナ人
が死亡した。
・国際宇宙ステーションISSに初めて長期間滞在する宇宙飛行士を
のせたロシアのロケットが宇宙に向けて打ち上げられ、計画通りソ
ユーズは地球衛星軌道に乗った。木曜日にドッキングが予定されて
いる。ロシア人2人とアメリカ人1人の飛行士は4ヶ月宇宙基地にと
どまり、2004年のヨーロッパの宇宙研究室コロンブス使用開始に向
けて建設を始めることになっている。
11月1日(水)
(ベルリン)連邦首相ゲアハルト シュレーダーは5日間にわたる近東訪問は成果
をあげた、と評した。彼はベルリン来着後、次のように語った。イスラエルとパレ
スチナ訪問で、武力衝突が現在起っているが交渉を再開できるよう準備をした。ま
たエジプト、レバノン、ヨルダン、シリアでも平和実現への望みを見いだした。ヨ
ーロッパとドイツはこの地域が安定、特に経済的な面での安定するよう期待してい
る。今回の近東諸国訪問で、ドイツとヨーロッパはこれらの諸国を見放してはいな
い、ということを明らかにした。緊張状態の中、近東訪問を中止しなかったことが
重要であった。
その他のニュース
・イスラエルとパレスチナの戦闘は水曜日さらに激しさを増した。
多数の場所で銃撃戦が行なわれた。イスラエル軍はヘリコプターと
戦車を投入した。パレスチナ人5人とイスラエル兵2人が死亡した模
様。イスラエル元首相ペレスはアラファトとガザ地区で会談を行な
い、アラファトに武力行使の即時停止を迫った。首相バラクはパレ
スチナ側が蜂起を続けるなら、イスラエル側の反撃が激しさを増す
ことを覚悟せよ、と語った。イスラエル軍は予備役にも召集をかけ
た。カイロではアラブ連盟が、この衝突の責任はイスラエルにある、
と発表した。
・英仏海峡のオルダーニー島の北で沈没したイタリアのタンカーか
ら、3種類の化学物質が数キロにわたって膜状に広がっている。フ
ランス当局はこの地域にいる艦船に、沈没地点から少なくとも6キ
ロ離れて航行するようにと要請している。このタンカーはシェルの
荷物を運んでいたが、その中にはきわめて危険な化学物質6千トン
が含まれていた。フランス政府はこの地域の魚介類などを食べた時
の危険性を調査させる。
・シンガポール航空のジャンボ機の台北での墜落の原因の調査が行
なわれている。台湾の放送局は、同機は修理のため閉鎖されていた
滑走路を間違って使用し、そこで器材と接触した可能性があると報
じた。同社副会長クレメンツは、その証拠はないと強調しているが、
パイロットは何かと接触したと報告していることは認めている。
11月2日(木)
(ガザ・エルサレム)パレスチナ大統領のヤセル アラファトは、2人のイスラエ
ル人を殺し少なくとも10人の怪我人を出したエルサレムのエルサレムの爆破事件
を厳しく批判した。パレスチナ自治政府当局はこの暗殺事件に絶対反対の立場であ
る、とアラファトはガザ市で行なわれた記者会見の席上語った。車にのせた爆弾が
西エルサレムの繁華街で爆発した事件の犯行声明を、パレスチナ人武装組織イスラ
ーム ジハードが出していた。この事件のためアラファトとイスラエル首相エフド
バラクが出した、暴力の行使を中止するようにという合意声明の発表は延期され
た。しかし両者は水曜夜に合意した停戦の取り決めはまだ有効である、と強調して
いる。
その他のニュース
・ドイツは、将来国連の平和維持活動に軍事的な支援も行なう、と
いう協定に署名した。それによればドイツは国連平和維持軍出動に
備えて普段から準備を行なうことになっている。国防大臣シャルピ
ングは、この兵の分担が世界平和をより確実なものにするよう貢献
することになる、また派兵の度ごとに連邦議会の承認が必要である、
と語った。
・キリスト教民主同盟は移住政策の争点である、「ドイツ基調文化」
を党の主張として掲げることを断念することになるかもしれない。
「基調文化」という言葉を書類に使うかどうかはまだ決まっていな
い、と発表があった。党首メルケルは、ドイツユダヤ人中央評議会
議長シュピーゲルとの話し合いの後、「基調文化」ということで同
党がどんなことを理解しているかを明らかにすべきである、と語っ
た。ユダヤ人評議会はこの概念を厳しく批判してきたが、これをめ
ぐる戦いをこれで終わりである、と発表した。
・ナチの元強制労働者は約束の賠償金の支払いをさらに待たなけれ
ばならない。基金「記憶、責任、未来」の管財部長カストルップは、
期日は今のところはっきりしないが、迅速な支払いに努力する、と
語った。この原因はアメリカでの法律上の取り扱いがはっきりして
いないことである。ドイツ経済界側の弁護士は、不足している17億
マルクの資金を企業から調達することを確約した。
11月3日(金)
(エルサレム)パレスチナ人居住区で新たに衝突がいくつか起こったが、数週間続
いてきたパレスチナ人とイスラエル人の間の不穏な空気は全体としてやや落ち着き
を見せている。両者の政治実力者は暴力の行使をやめ、停戦合意を遵守するよう呼
びかけた。自治区ではイスラエル軍が戦車の引き上げを命じ、パレスチナ人の警官
は若者の投石を止めさせた。西ヨルダンランドとガザ地区での新たな衝突ではパレ
スチナ人2人が死亡し、数人が怪我をした。パレスチナ大統領ヤセル アラファト
はアメリカ大統領ビル クリントンのアメリカでの会談の招きに応じた。その日程
はまだ決まっていない、とパレスチナの全権サエブ エレカトはワシントンで発表
した。エレカトとイスラエル外相、ショーロモ ベン・アミは、アメリカ外務大臣
マデリーン オルブライトは近東の発展について話し合いを行なっていた。
その他のニュース
・キリスト教民主同盟は移住政策を扱う文書の中で、「ドイツの基
軸文化」という概念を放棄しないことにする。議員団長メルツと党
首メルケルがこの問題を電話の話し合いで確認し、月曜日の党首脳
会議で決定する。一方首相シュレーダー(社会民主党)はこの問題
をめぐる話し合いは奇っ怪である、と評している。ザクセン・アン
ハルト州の州議会で彼は、人間の尊厳に関する基本法を引用し、極
右の暴力から人間の尊厳を守ることが大切だ、と語った。
・連邦労働省の貧困報告の草案によれば、一部の少数者が財産を増
やす一方、やや貧困の水準で生活するドイツ人がさらに増加してい
る。1998年には100万以上の家庭が13万マルク以上の可処分所得
を得ている。この額は平均の2倍を越えている。一方やや貧困に属
する市民の数はますます増加している。8千万人の国民のうち5分
の1が平均である6万マルクの60%を下まわる額でやりくりしなけ
ればならない。ドイツ東部では3分の1が、西部では5分の1がやや
貧困の状態で暮らしている。
・国際為替市場では、大きな価格の動きがあった。ヨーロッパ中央
銀行は金曜日に2回、ドルを売ってユーロの価格を維持しようとし
た。月曜日に行なった介入は期待した成果を収めることができなか
った。その後ユーロは値上がりし、1ユーロ0.87ドルまで持ち直し、
その後午後の介入は功を奏した。ヨーロッパ中央銀行は基準交換レ
ートを1ユーロ0.8730ドルに設定していた。現在1ドル2.2404マ
ルクである。
11月4日(土)
(エルサレム)パレスチナ人居住区では、停戦が合意されたにもかかわらず、暴力
をともなう衝突が続いている。最新情報によれば、土曜日には、西ヨルダンランド
とガザ地区でイスラエル兵との衝突の際に、少なくとも80人のパレスチナ人が怪
我をした。一方紛争の当事者両者が交渉を再開する可能性が出てきた。パレスチナ
大統領ヤセル アラファトによれば、イスラエル首相エフド バラクも来週にもア
メリカ大統領ビル クリントンとの近東会談を行なうため、ワシントンに出発する
準備をしている。しかし3者会談はバラクもアラファトも拒否している。
その他のニュース
・ユーゴスラヴィア大統領コシュトゥニツァは軍と警察の上層部の
解任を現時点で行なうことに反対した。人事刷新を急ぐと官庁と経
済の不安定を招くし、ユーゴの民主化を危機にさらす、と彼は声明
を出した。セルビア秘密警察長官マルコヴィツをめぐる確執から、
新政府は深刻な危機に直面している。セルビア民主野党連盟とセル
ビア改革運動両党は、元大統領ミロシェヴィッチの部下がこの職に
とどまっている限りは、組閣に参加しない意向である。
・欧州審議会はユーゴの受け入れの準備を進めている。欧州人権会
議50周年記念会議を終えるにあたって、総書記シュヴィマーが、ユ
ーゴは開いた扉を目前に見つけるだろう、と語った。ユーゴ政権の
交代を見て、彼はセルビア国民の勇気を評価した。しかし民主体制
への道は長く苦しいものになるだろう、と彼は語った。
・ベルリンではネオナチの集会の際に極右とそれに反対するデモ隊
との間で衝突が起こった。多くの警官が出動し、数人が怪我をした。
約千人のネオナチのうち13人が逮捕された。デッサオでは約2千人
が極右の暴力に反対するデモを行なった。同じ趣旨のデモはアオグ
スブルクとザクセンのデリッチュでも行なわれた。
11月5日(日)
(ライプツィッヒ)連邦政府と労働組合は年金改革について再び論争している。連
邦首相ゲアハルト シュレーダーはライプツィッヒで行なわれている公勤務・運輸
・交通労働組合の大会で、個人年金を擁護する演説をし、ブーイングと口笛を浴び
せられた。彼によれば、政府は十分な財政上の裏づけのある年金を作り出すことで、
年金制度を長期的に安定したものにしたい、と考えている。それに対し、同労組長
ヘルバート マイはこの提案を実現不可能である、と考えている。
これに先立ち、シュレーダーはキリスト教民主同盟・キリスト教社会同盟のおよそ
500人の党員を前に、移住に関する議論では事実に立ち戻るように求めていた。ド
イツ基調文化に関する議論を彼は奇怪で田舎臭い、と評した。
その他のニュース
・経済研究所の予想によれば、労働力の需要を満たすために、ドイ
ツは将来年に少なくとも20万人の移住者を必要とすることになる。
ドイツで仕事をする人が人口統計上減少しているのを補うため、生
涯労働時間を延長し、職業教育期間を短縮し、能力ある人に力を出
してもらうことが必要だ、と同研究所所長ツィマーマンは発表した。
・連邦議会議長ティールゼは極右に反対する砦を作るよう呼びかけ
た。極右はこの夏以降不法行為を多数行なっているが、これを真剣
に受け止めよう、とミュンヘン近郊ダッハウの旧ナチ強制収容所で
彼は語った。これは1938年のいわゆる水晶の夜(11月9日〜10日に
かけてドイツ全土でユダヤ人の商店が破壊され、多くのユダヤ人が
殺された事件)を記憶にとどめるために作られた施設である。
・近東紛争解決のため外交的な努力が再び行なわれている。ガザ地
区と西ヨルダンランドでは衝突が続いているが、パレスチナ大統領
のアラファトとイスラエル首相バラクは、首脳会談のために数日後
アメリカに行く予定である。アラファトは木曜日に、バラクはその
3日後、米国大統領クリントンと会談を行なう予定である。日曜日
には再び衝突が起こり、2人のパレスチナ人青年が射殺された。