11月13日〜19日のドイツのニュース

11月13日(月)

(ザルツブルク)オーストリア キッツシュタインホルンの氷河鉄道の事故発生以
来2日が経過し、最初の遺体が収容された。公式発表によれば遺体は法医学上の調
査のためザルツブルクに移された。ザルツブルクで遺伝子分析を用いて身元の確認
が行なわれることになっている。犠牲者の身元確認には4週間ほどかかる見込みで
ある。カプルンの氷河鉄道のトンネル内での事故により少なくとも162名が死亡し、
その中には37人のドイツ人が含まれていた。その他オーストリア人92人、日本人、
シュトゥットガルトに駐屯するアメリカ兵、スロヴェニア人、オランダ人、チェコ
人、イギリス人が犠牲になった。オーストリアではすべての立ち乗り式のケーブル
カーの調査が命じられた。

     その他のニュース
・キリスト教民主同盟に引き続き、キリスト教社会同盟も独自の移
民政策案を提示した。それによればドイツへの移住は調整と制限が
行なわれねばならない。また同党は問題になっている「基軸文化」
という概念を堅持するものの、「ドイツの」という限定をはずす。
同州内務大臣ベックシュタインを長とする作業班が、移住の条件に
ついての法案を検討することになっている。同党主シュトイバーは、
ドイツはあいかわらず移民を容認する国でありつづけることを強調
した。
・緑の党が妥協を申し入れたが、年金問題をめぐる連立与党内の対
立は激しさを増している。月曜日には労働大臣リースター(社会民
主党)と厚生大臣フィッシャー(緑の党)が話し合いを行なった。
リースターと大蔵省は緑の党の提案、2001年での個人老齢年金加
盟案を拒否し、2002年のままになった。対立は激化しているので
月曜中の解決の見込みはない、とのことである。社会民主党は緑の
党に対し、連立の安定を犠牲にしてまで自らの利益を追求しないよ
うに、と警告した。
・連邦交通大臣クリムトに対する背任幇助罪の略式命令が確定した。
トリーア地方裁判所はクリムトに罰金2万7千マルクを言い渡してい
た。クリムトに対するこの訴訟では、背任の疑いで訴えられている
デルフェルトがサッカークラブ1.FCザールブリュッケンに払わなけ
ればならなかった60万マルクが問題になっている。クリムトは当時
同クラブの会長であった。検事はこの支払いは不正であった、と見
ている。


11月14日(火)

(ベルリン)運輸大臣ラインハルト クリムトの政治生命がどうなるのか、まだ結
論が出ていない。社会民主党議員団長ペーター シュトゥルックは、連邦首相ゲア
ハルト シュレーダーは連立与党内の協議をこの出来事についてまだ何も語ってい
ない、と話した。シュトゥルックは、クリムトが略式命令を受け入れるべきではな
く、法廷で闘うべきである、という個人的な見解を述べた。緑の党の議員団長ケル
スティン ミュラーは、クリムトの処遇は社会民主党の問題であり、緑の党はそれ
には干渉しない、と意見を述べた。トリーアの地方裁判所はクリムトを背任幇助罪
で有罪である、とした。彼は罰金2万7千マルクの略式命令を受け入れる、と発表
していた。これを受け入れると彼には前科がつくことになる。

     その他のニュース
・連立与党社会民主党と緑の党は、年金問題での対立に終止符を打
ち、連立解消の危機を回避した。これによって木曜日に労働相リー
スターの原案が連邦議会に提出されることが決まった。社会民主党
議員団長シュトゥルックは、労組と社民党左派に、年金水準と企業
年金に関して譲歩を行なう可能性があると伝えている。緑の党は、
国が勧める老齢年金を来年から実施する、という要求を認めさせる
ことはできなかったが、若い世代に重い負担を強いないようにとい
う要求は通すことができた。
・米国フロリダ州では大統領選の集計期限が迫った。期限内に到着
した結果のみが有効になる。ただしいくつかの地域に関しては集計
結果を後で送ることが認められる可能性がある。民主党は、この期
限を無効とするように裁判所に求めていたが、これは失敗した。共
和党は手作業による再集計に反対する控訴を起こした。
・フランス政府は動物性の物質を家畜飼料にすることと、Tボーン
ステーキ用の肉を販売を禁止し、牛肉汚染BSEに関して国民の間に
広がっている不安に対処した。動物性飼料の牛への使用は仏独では
1994年から禁止されている。それに加えて、豚、鳥、魚に与える
ことも禁止となった。フランスでは今年93件のBSE事件が起って
いる。


11月15日(水)

(ベルリン)連邦首相ゲアハルト シュレーダーは裁判所の判断が出るのを待って、
運輸大臣ラインハルト クリムトを留任させるかどうか決める意向である。それま
では彼が無罪であるとして対処する、と述べた。彼はクリムトを支持して、略式命
令の取り消しを求めている。クリムト自身は、この計画には関わっておらず、
2002年までの任期を果たすつもりである、と語った。クリムトには、1.FC ザー
ルブリュッケンの会長だった時に、財政的に逼迫していたこのサッカークラブを存
続させるため、出資者との虚偽契約を結んだ、という疑いがかけられている。当初
彼は、長期間の法廷闘争を避けるために、2万7千マルクの罰金という略式命令を
受け入れるつもりだ、と語っていた。野党は彼の辞任を求めている。

     その他のニュース
・連邦内閣は労働大臣リースターの年金改革案を採択した。この法
案は木曜日に連邦議会の第一読会で審議される。年金改革の中心は
個人的に加入する追加老齢年金の導入である。法定老齢年金がこれ
によって補完されることになる。社会民主党と緑の党は火曜日に、
2002年にこの制度を導入をすることで合意した。野党はこの案を
拒否している。労働組合も改善を要求している。
・ドイツ鉄道は収支状況が公表し、今後のきびしい財政健全化計画
が発表された。社長メードルンは、2005年までおそらく同社の収
益は計画通りにはいかないだろう、と語った。赤字の主な原因は、
設備投資、大規模な計画に必要な費用とあまりに楽観的な売り上げ
予測であり、同社は将来採算がとれるまでにまだまだ投資すること
になる、とも語った。
・アメリカ大統領選の票の集計をめぐる対立は結局司法の問題とな
った。民主党も共和党も、別々の目的を持って、連邦最高裁に提訴
した。民主党は手作業による集計が適法であることを確認するよう
に求めている。一方共和党は再集計を中止させるよう要求している。
アトランタの連邦裁判所はブッシュ陣営の訴えを審査する、と発表
した。


11月16日(木)

(ベルリン)連邦運輸大臣ラインハルト クリムト(社会民主党)は資金問題が紛
糾し辞任した。彼は背任幇助で罰金支払いの略式命令をうけていたが、自分が辞任
することで、政府に対する風当たりが弱まることを期待している、と語った。彼は
サッカークラブ1.FC ザールブリュッケンの会長だった時に、同クラブに対する
資金提供に関して罪を問われていた。首相ゲアハルト シュレーダーは交通政務次
官クルト ボーデヴィヒ(社会民主党)を後継者に指名した。クリムトはこの職を
約1年務めた。

     その他のニュース
・年金改革案に関して政府と野党の間で意見の対立が埋められてい
ない。連邦議会の第1読会では労相リースターが世代間の均衡を図
る改革案を擁護して、義務年金を追加の個人老齢年金で補完すると
いう計画が、年金を安定させ支払いを可能にする、と語った。キリ
スト教民主同盟の年金の専門家ゼーホーファーは、今までの年金は
とてもすぐれていたが、改正案は3級品である、と語った。この新
規定は社会民主党と緑の党の賛成で採択された。この法案は1月1日
から発効する。
・首相の元顧問テルチクは元首相コールには賄賂が有効だったとい
う非難を否定した。。彼はキリスト教民主同盟の不正資金疑惑に関
する国会の調査委員会の尋問で、コールと仕事をした19年間で一回
たりとも賄賂を経験しなかった、と語った。彼はコールが買収され
てサウジ・アラビアへの戦車輸出を認めたと考えるのは、卑劣であ
って、政府は戦車の輸出を望んでいた、と語った。
・牛肉汚染BSEの最近の事件を見て欧州議会は動物性の飼料の全面
禁止を命じた。この禁止は、加盟国が牛肉の汚染の防止のためのEU
命令を実行できるようになるまで有効である。牛以外でも羊、山羊、
魚、鳥にも動物性飼料を与えることが禁止された。欧州議会はまた
18ヶ月にわたり、BSEの検査をすべての屠殺された家畜に義務づけ
た。


11月17日(金)

(ワシントン)アメリカ大統領選をめぐる民主党と共和党の法廷闘争はますます激
しくなっている。民主党候補アル ゴアは、手作業による再集計が取り上げられな
いのであれば、土曜日に予定されているフロリダ州の公式の選挙結果を否認する、
と発表した。それに先立ち地方裁判所は、手作業による集計結果を最終結果に入れ
てはならない、との判断を下した。民主党は控訴の方針である。ゴアは手集計に加
えることで、フロリダ州の約300票差での敗北を逆転できるという望みを持ってい
る。フロリダ州の勝者がアメリカ新大統領になる。

     その他のニュース
・キリスト教民主同盟党首のメルケルとキリスト教社会同盟党首シ
ュトイバーは連邦政府に協力して攻撃を加えることで合意した。キ
リスト教社会同盟の党大会に招かれたメルケルは、首相シュレーダ
ーは明確な未来像を持っていないと語った。続けて、連立与党の年
金改革案を批判し、反環境税運動を続行すると語った。またメルケ
ルだけでなくシュトイバーも基軸文化概念を擁護した。同党大会で
は、移住の制限と管理、亡命権の規定変更の要求が行なわれた。
・クリムトは運輸大臣だけでなく、ザールラント州社会民主党の議
長職も退いた。後任には同党州議会議員団長ハイコ マースを指名
した。木曜日ににクリムトは資金問題に巻き込まれ運輸大臣を辞任
していた。
・新賃貸借法は連邦議会で最初の関門を突破した。第1読会での激
しい議論の後、連立与党の議員が賛成して改革案を採択した。キリ
スト教民主同盟・キリスト教社会同盟、自由民主党は政府を批判し
て、この法案では家主に比べて借り手が有利になっているとしてい
る。この法案は主として家賃を上げづらくし、借り手の解約通知期
間を短縮するためのものである。法務大臣ドイブラー・グメリンは
批判をはねつけて、社会福祉志向の改革である、と語った。


11月18日(土)

(ミュンヘン)キリスト教社会同盟は党大会でヨーロッパ政策に関する基本方針を
決定した。それによれば同党はEUの東方拡大にはっきりと賛成している。しかし
EUは内部改革とそれに伴う課題の整理を行なわなければならない、と党首エドム
ント シュライバーは語った。また彼は、国民国家の権利が縮小されることがあっ
てはならない、とくぎを刺している。シュトイバーは、連邦政府はEUの東方拡大
計画に関する市民の不安を無視している、と批判した。また、連立与党はヨーロッ
パ政治に関する基本的な理解を欠いており、それゆえ国民の中に蔓延するヨーロッ
パに対する疑念と敵意の責任は与党側にある、とも語った。

     その他のニュース
・キリスト教社会同盟が求めている亡命権の廃止は姉妹政党キリス
ト教民主同盟の考えとは衝突した。キリスト教民主同盟の移民問題
委員のミュラーは亡命権のいかなる制限にも反対し、亡命手続きの
簡素化し、間違って亡命を認めることがないよう法律の改正を進め
ていく、と語った。キリスト教社会同盟は、亡命権を機関による認
定へと変えることを求めているが、彼はこれを非難した。政府も自
由民主党もキリスト教社会同盟のこの意見を批判している。
・ドイツ郵便の株は市場での売出し価格が21ユーロになった。2億
78百万株の購入申し込みがあり、8倍の競争である。月曜日にこの
株は株式市場で初めて取り扱われる。この販売で連邦は66億ユーロ
の利益がある。
・ドイツ労働総同盟の連邦特別会議はほぼ全員一致で、統一職員労
組ver.diに賛成した。2票だけが来年3月ベルリンで行なわれる
ver.diの設立会議の召集に反対であった。


11月19日(日)

(ベルリン)連邦議会は国民中央追悼式を行なって、戦争と専制政治の犠牲者を悼
んだ。連邦大統領ヨハネス ラオは死者を悼んで、最近外国人排斥で犠牲になった
人たちに対しても追悼の意を表した。大統領がこれをおこなうのは初めてのことで
ある。ドイツ全土で礼拝や式典が行なわれ、2回の世界大戦での数百万の死者の墓
に花輪が供えられた。ベルリンのヴァイセンゼーのユダヤ人墓地では、連邦国防軍
とユダヤ人中央評議会が共同で、第1次世界大戦で亡くなったユダヤ系ドイツ兵の
栄誉をたたえた。

     その他のニュース
・連邦労働省は緑の党が行なっていた、経営状態の思わしくない企
業の救済のため、賃金表に基づいた賃金支払いを行なうようにとい
う働きかけを受け入れなかった。労働大臣リースターは、現行の規
則を変える理由はない、賃金表の約款はすでに存在しており、それ
で十分かどうかは労使双方だけが決められる、と語った。一方労働
組合も緑の党の提案に否定的である。
・キリスト教社会同盟が要求している亡命権廃止は、姉妹政党キリ
スト教民主同盟や連立与党の内部でも批判されている。首相シュレ
ーダー、緑の党、自由民主党、キリスト教民主同盟の一部は亡命権
の変更を拒否している。ただキリスト教民主同盟国会議員団長メル
ツだけがその要求を取り上げ、「ドイツには現在より多くの移住者
が来ても、ドイツはそれに打つ手がない」と語った。
・元首相コールはキリスト教民主同盟党首メルケルと元党首ショイ
ブレを非難して、彼らはわざと自分と疎遠になろうとしてきた、と
新聞連載の「日記」で語った。メルケルは、コールには主観的に物
事を語る権利があるが、不正献金疑惑での彼との対立はとっくに終
わったことだ、と語った。


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