12月18日〜24日のドイツのニュース

12月18日(月)

(ベルリン)政府は牛の疫病BSEはさらに発生するが、イギリスのような危機的な
事態にはならないと予想している。また、首相ゲアハルト シュレーダーは政治が
後手に回ったことを認めた。シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州、ザクセン・アン
ハルト州では、使用禁止になっている動物性飼料を使用している例が見つかった。
連邦厚生省は、現在ドイツで製造されている肉製品およびソーセージ、ハムがいわ
ゆるBSEを引き起こす物質を含んでいる可能性があるかどうかを示す手がかりはな
く、回収の予定はない、と発表した。連邦農業省の情報によれば、バルト海にうか
ぶメクレンブルク・フォアポメルン州の島リームスに動物疫病病原体研究所の設置
が予定され、BSE研究には力が注がれることになっている。
バイエルン州ではすでに見つかった事例のほかにも、2件のBSEの疑いのある例が
見つかったが、まだ隔離して検査する措置は取られていない。

     その他のニュース
・野党と経済界は、労働組合と政府が合意した年金改革案を批判し、
さらに修正するよう要求した。キリスト教民主同盟党首のメルケル
は、この改革案はうまくいかない、また女性には不利である、と評
した。ドイツ工業団体連邦連合会会長ヘンケルは、政府を批判して、
この改革案の話し合いで経済界は無視されている、と語った。
・世界経済の冷え込みは来年のドイツの景気の先行きを暗いものに
する、と専門家は予測している。ただしその規模については専門家
の意見は一致していない。国内総生産は今年の3.1%から2.4ないし
2.8%に下降する、という予測である。また失業者数は減少する、と
いうのが専門家の一致した予測である。
・公勤務運輸交通労働組合長ブシルスキ(48歳)は計画中の新しい
用役組合ver.diの議長になることに決まった。ver.diの設立委員会
の集会で、彼を3月の設立会議で議長にするように提案することで
合意した。公勤務運輸交通労組は新しい労働組合でも48%の多数派
を占める。


12月19日(火)

(ウィーン)オーストリアは牛肉のBSE汚染対策として、EU委員会にドイツから
の牛および牛肉の輸入禁止を提案した。オーストリア政府は24時間以内に委員会
の態度決定が出るよう期待しており、輸入禁止が可能になることを望んでいる。オ
ーストリアでは今までBSEに汚染された肉は見つかっていない。一方ドイツ政府は
国内のBSE汚染の拡大を予想している。ドイツでは、すでに2例目が見つかってお
り、さらに疑わしい2頭がある。しかしドイツ政府はオーストリア政府の決定を不
当である、と評している。消費者保護のため、牛肉を無制限に食べないようにとい
う勧告が現在、主要政治家から出されている。
ノルトライン・ヴェストファーレン州環境大臣ベアベル ヘーンは、安全に暮らし
たければしばらくは牛肉を食べるべきではない、との個人的見解を述べた。連邦厚
生大臣アンドレア フィッシャーはまず牛肉を使ったソーセージを買うのをやめる
べきだ、主張している。

     その他のニュース
・元首相コールは11年前の歴史的訪問以来、久しぶりにドレスデン
を訪問し、約1万人の出迎えを受けた。フラオエンキルヒェの前で、
旧東ドイツの住民のドイツ統一に対する功績をたたえた。彼は
1989年12月19日にドレスデンで多くの人を前にドイツ統一を実行
すると誓ったのだった。また彼は当時の米国とソ連の大統領ブッシ
ュとゴルバチョフの功績も強調した。コールは旧東ドイツの再建に
関しては失敗があったことを認めたが、西部の東側への支援を評価
した。
・イスラエルとパレスチナの交渉団は、木曜日にアメリカで和平交
渉の再開の可能性を探ることにしている。予定では、交渉団がそれ
ぞれアメリカと話し合う。イスラエル側は、エルサレムの地位をめ
ぐる合意を取りつけるため、神殿の丘に関するイスラエルの主権を
制限をすることを交渉に持ちだす可能性が高まっている。国連では
西ヨルダンランドとガザ地区での暴力と人権侵害を調査する委員が
任命され、イスラエルはそれに協力することを拒否した。ドイツ国
防大臣シャルピングはエジプト訪問の最後に、近東紛争の当事国に
対し速やかに和平交渉を再開するよう呼びかけた。
・トルコの刑務所では囚人が反乱を起こし、少なくとも17人が死
亡、百人以上が怪我をした。最新の公式発表によれば、死者の中に
は15人の囚人が含まれている。大半は抗議のため火に飛び込んだ
人で、救出しようとした警官2人も死亡した、と法務大臣は発表し
た。囚人たちは小さな監房への移動に抗議してハンガーストライキ
を行なっていた。彼らは看守の報復が小さな監房では激化するので
はないかと恐れていた。ハンガーストライキを行なっていた200名
以上は病院に運ばれた。


12月20日(水)

(ベルリン)BSE発生に関連して、厚生大臣アンドレア フィッシャー(緑の党)
は、10月1日以前に屠殺されたいわゆる剥離肉を含む製品は、すぐに販売を中止す
るように要請した。剥離肉とは牛の骨から剥ぎ取られる肉のことである。主として
この肉は煮たり焼いたりして食べるソーセージに使われる。またバイエルン州当局
はドイツで3例目のBSE感染を確認した。そのほかにも2件の狂牛病の疑惑が発生
している。

     その他のニュース
・英国下院は、人間の胎児のクローンを治療目的で利用することを
認める決定を下したが、これがきっかけとなってドイツでも遺伝子
技術をめぐる議論が再燃した。首相シュレーダーは、現在ドイツで
治療目的でクローンを利用することには反対であるが、遺伝子研究
に政治的な視点や絶対禁止を持ち込むべきではない、と新聞に寄稿
した。キリスト教民主同盟の倫理学の専門家ヒュッペはシュレーダ
ーの発言を無責任だ、と批判した。
・ザールラント州社会民主党は州議会の議員団長マース(34歳)を
新たな同州同党首に選んだ。彼は4週間前に辞任した党首で元連邦
大臣クリムトの後継者となる。
・アメリカの景気が停滞しているというアメリカの発券銀行の警告
に全世界の株式市場は震撼している。もっともひどい打撃を受けた
のが技術分野である。フランクフルトでは新市場指数Nemax50で
9.7%という劇的な下げを記録した。それに対してユーロは9月初め
以来1マルク=90セントを回復した。


12月21日(木)

(ベルリン)牛肉のBSE汚染をめぐる危機の中で、連邦厚生大臣アンドレア フィ
ッシャーは、水曜日まで連邦食肉調査施設の研究員からいわゆる剥離肉の問題を指
摘された文書を公表しなかった間違いを認めた。しかしこの文書には1週間前に厚
生省に届いていた、とのことである。この文書はBSEに汚染された牛肉を回収する
ように生産者側に呼びかけるよう、フィッシャーに求めていた。大規模小売店はは、
この呼びかけに従うと発表した。しかし専門家の意見によれば法的な根拠を欠いて
いるため、回収を求める緊急命令には強制力はない。またBSEの可能性のある2件
の事件は確認された。これでドイツ産牛肉で現在5件のBSE汚染が見つかったこと
になる。

     その他のニュース
・通勤者は来年から交通手段に関りなく通勤控除を受けられる。長
い論争の末、連邦参議院はキリスト教民主同盟、キリスト教社会同
盟が与党である州の賛成をも取りつけ、この計画を承認した。通勤
距離10キロまでは1キロあたり70ペニヒ、それ以上は80ペニヒの
税制上の優遇措置が受けられる。また連邦参議院は、すべての被用
者がパートタイム労働を行なうことを請求できるようにする法律も
承認した。
・ベルリン東部と旧東ドイツ諸州の約4万人の連邦公務員は、今後
は西側の同じ仕事を担当する公務員より長時間働いてはならない、
という決定を連邦行政裁判所が下した。裁判官は将来は西側と同じ
週38.5時間の労働時間を定めた。いままでは東側では1時間半長か
った。
・ヨーロッパ委員会は長時間の議論の末今年と来年ドイツが石炭に
対する援助を行なうことを承認した。同時に委員会は資金の大半が
採算の取れない炭坑の閉鎖のために使われる、という決定を下した。
連邦産業大臣ミュラーはこの決定を歓迎し、石炭問題で譲歩を引き
出し同時に2001年の問題に決着を付けられてよかった、と語った。
現在ドイツはルールとザールの炭坑に約90億マルクの支援を行なっ
ており、来年はそれが80億マルクで合意している。


12月22日(金)

(ベルリン)ドイツではBSEの危険性がある肉製品は貯蔵庫や店の棚から撤去され
ることになった。食肉産業、利用者団体、政府は金曜日に自主的な撤去に合意した。
撤去は現在進行中で、他国へ輸送された商品にも適用される、と発表された。EU
委員会はBSEの危険がある物質を含むソーセージの撤去を全世界で行なうように求
めていた。BSEの疑いがが持たれていた北ドイツでの3例はBSEではないことが分
かった。それによってドイツでのBSE発生は5件のままである。首相シュレーダー
はBSE危機のため辞任の圧力がかかっている厚生大臣アンドレア フィッシャーを
擁護した。

     その他のニュース
・ドイツ国防大臣シャルピングは近東訪問の最後にパレスチナ大統
領アラファトに、ドイツ首相シュレーダーからの和平交渉へ向けて
の親書を手渡した。シャルピングは近東和平を実現する可能性があ
ると、慎重にではあるが、語った。アラファトとの会談の詳細につ
いては発表されていないが、和平交渉に関する突っ込んだ問題を話
し合ったとだけ、彼は語った。
・ドイツボスニア内戦難民相談所はこの年末で活動を終える。内務
省は、難民の帰国は実質的には終了した、と発表した。内戦中ドイ
ツは34万5千人の難民を受け入れた。1995年のデイトンでの和平
合意以降、26万人以上が自由意志で帰国していた。5万1千人は他
の国々へ出国した。約5千5百人の難民が追放された。心に傷をお
った難民はドイツに長期滞在することが認められている。
・ドイツユダヤ人中央評議会議長シュピーゲルは就任一年目の今年、
ドイツでは反ユダヤ主義が明らかに高まっていることを記録に残し
た。彼は新聞紙上で、自らの名前を書いて彼を罵倒する手紙や電子
メールをよこす人々がますます増えており、また反ユダヤ主義がエ
リートの中にも蔓延してきている、と発表した。


12月23日(土)

(ブリュッセル)EU内部でドイツ産牛肉のBSE汚染に対する取り組みが批判され
ている。EU農業委員フランツ フィシュラーは「ディ ヴェルト」紙上で、連邦
と州が調整の役割を果たしておらず、混乱が生じている、と非難した。連邦農業省
はほぼ3ヶ月前から、動物性飼料とその他の飼料の使用の重大な欠陥について情報
を得ていた、とも語った。一方連邦農業省はEU側からの非難は間違っている、と
発表した。農業省次官マルティン ヴィレは逆にEU当局の検査報告が遅れたこと
を非難した。オランダとベルギーではドイツ産牛肉を使った全製品を棚から撤去し
た。
数百人の農家からの抗議を受けて、バイエルン州首相エドムント シュトイバーは
BSEの最初の事例が発生した農家を訪問した。

     その他のニュース
・首相シュレーダーはEUの東方拡大に関し、移行期間を設定するよ
うに求める意向を固めた。彼は、ドイツの労働市場はあまりに逼迫
しており、即時開放するのは難しいと語った。東欧と西欧では生活
水準に大きな差がある、とも語った。一方自由民主党、キリスト教
民主同盟、緑の党の代表はシュレーダーを批判し、東欧出身の被用
者に対する不安を過大評価しており、7年間の移行期間は長すぎる、
としている。
・イスラエルとパレスチナの交渉団は米国での会談を終えたが、今
後会談を行なう可能性は残された。パレスチナ側の交渉団のエレカ
トはクリントンとの30分の会談後、両国の立場にはまだ隔たりがあ
るが、クリントンの提案をアラファトと話し合う、と語った。クリ
ントンは両国に問題を4つの主要な問題に絞るように提案した。そ
れはエルサレムの地位、パレスチナ国家の国境、ユダヤ人居住区の
規模、パレスチナ人難民の処遇の4つである。彼はエルサレムの分
割を提案した。
・ユーゴスラヴィアのセルビアでは土曜日に国会選挙が前倒しで行
なわれた。大統領ミロシェヴィッチが失脚して2ヶ月半、約650万
人の市民が250人の国会議員を決定する。世論調査では新大統領コ
シュトゥニツァひきいる政党連合セルビア民主野党が多数を獲得し
そうである。この政党連合は選挙に勝利した場合、民主党党首ジン
ジッチを首相にすることになっている。選挙は数百人の外国の監視
団が監視している。日曜日夜に第一回の集計結果がでる見込みであ
る。


12月24日(日)

(ベオグラード)ユーゴスラヴィアのセルビア議会選挙では民主政党連合のセルビ
ア民主野党が勝利を収めた。半数以上の投票用紙を集計した後ベオグラードの選挙
委員会は、セルビア民主野党がおよそ3分の2を獲得している、と発表した。元ユ
ーゴスラヴィア大統領スロボダン ミロシェヴィッチの社会党は約13%を獲得した。
監視人は投票は順調に行なわれた、と評価している。ドイツ国防大臣でヨーロッパ
社会民主党首脳であるルドルフ シャルピングは選挙の勝利者で次期セルビア首相
のツォーラン ジンジッチに祝福の言葉を贈った。シャルピングはジンジッチに対
し社会民主党と政府が支援することを約束した。

     その他のニュース
・連邦政府はセルビアの選挙で民主勢力が勝利を収めたことを歓迎
した。外相フィッシャーは、セルビア国民が民主主義と法治主義の
道を歩むことに一致して賛成したのだ、と語った。首相府の外務顧
問シュタイナーは、民主化の道は茨の道で、現在の権力構造を解体
し、産業振興の地盤を固めなければならない、と語った。また彼は
ミロシェヴィッチを戦争犯罪裁判所に送るという西側の要請を再び
持ち出した。
・新たなBSE汚染が発見されたようだ。奇妙な行動をとったので、
緊急に屠殺されたニーダーザクセン州産の牛にBSEの疑いがかかっ
ている。連邦ヴィールス性疾患研究所では、この牛が本当に狂牛病
の病原体を持っているかどうか、調査することになる。ドイツでは
今までに5例のBSE汚染が確認されている。
・連邦大統領ラオはドイッチェ ヴェレを通じてドイツと各国国民
にクリスマス演説を行ない、平和と人間相互の協力を訴えた。また
言葉や、背景、宗教が異なる場合には、難しいことだが、今以上に
歩み寄って行くように、と語った。ドイツ人と外国人との間の問題
から目をそらしてはならない、問題を解決し、違和感を乗り越える
のは対話によってのみである、ドイツ人の大半は外国人に敵意を持
っていないし、外国に対する敵意を黙認しない、などと語った。


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