2月12日〜18日のドイツのニュース

2月12日(月)

(ベルリン)連邦政府は今後3年で人間の遺伝型質研究に8億7千万マルクを支出す
る計画である、と教育研究大臣エーデルガルト ブルマーンがドイツ人ゲノム研究
計画の研究者と共に臨んだ記者会見で発表した。UMTSの使用料の一部であるこの
資金を使って、ドイツはヨーロッパのゲノム研究の最先端を行くことを目指すこと
になる。最新知見によれば、人間は予想よりかなり少ない4万の遺伝子を持ってい
る。イエナの遺伝子研究者マティアス プラッツァーは、遺伝子の解読には長い研
究がまだ必要で、近い将来に解読されることはない、と語った。

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・連邦首相シュレーダーは事業所組織法に基づく経営上の決定参加
の考え方を擁護した。ザールブリュッケンでの社会民主党の党大会
で、ドイツで諸外国より迅速で円滑な構造改革が進められているの
は、従業員協議会のおかげである、と彼は語った。目下労働大臣リ
ースターと経済大臣ミュラーが決定参加に関する対立点を解消する
ため、2度目の会談を行なっている。一方緑の党は妥協案を提示し
ている。野党のキリスト教民主同盟も独自の案を示している。
・新聞報道によれば、EUは牛肉の販売不振を克服するために、さら
に120万頭の牛を屠殺する計画である。牛肉を保管するか、廃棄す
るかは加盟各国政府にまかされる模様である。EU加盟各国の蔵相は
BSE対策費として総額約20億マルクの補正予算を承認した。ドイツ
政府はBSEが発生した場合一緒に飼育されている牛を殺せるように
する法案を緊急提案する予定である。
・キリスト教民主同盟のベルリン市議会議員団長ランドフスキーは、
ベルリン抵当銀行頭取の地位を辞する。この辞職は、キリスト教民
主同盟に対するベルリン不動産業グループの献金疑惑の責任をとる
ものである。この事件は同行から数百万マルクの貸し出しを同党が
受けていた、というものである。その他彼は通常の手続きを踏まず
資金を提供していた模様である。ベルリン同党の報道官は闇口座の
存在を否定している。


2月13日(火)

(ストラスブール)EU委員会は牛肉価格安定のため、危機対処計画を立てる方針
である。EU農業委員フランツ フィシュラーが提案した計画は、ある程度成長した
家畜の買い上げを含んでいる。EU全域で生後30ヶ月以上経った牛にBSE検査を行
ない、その直後に買い上げを行なう予定である。会談ではこの措置で120万頭の屠
殺が行なわれることになる。フィシュラーは、その他に報奨金制度に修正を加えた
い、としている。たくさん牛を飼育している農家では補助金の額が減ることになる。
ドイツ購買者保護大臣レナーテ キューナストはこのEUの計画を拒否し、今のと
ころ120万頭の牛をさらに殺す必要性が感じられない、と語った。

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・EUの将来像と目的をめぐる公開論争を行なうことにEU委員会議
長ロマーノ プロディが賛成した。彼は、ヨーロッパ統合の途上で
加盟国間の絆が失われた、今まではEUの内実に関する議論は少なく、
主導権争いが重きをなしていたため、EU諸国間での意見の違いがま
すますはっきりしてきた、と語った。
・ロシア大統領プーチンは米国とミサイル防衛システム問題に関し
て交渉をする準備を行なっている、と独外相フィッシャーは彼との
モスクワでの会談後語った。フィッシャーは米国のミサイル防衛シ
ステムとNATOの東方拡大をロシアが非難していることに批判的で、
ミサイル防衛システムを設置するかどうかは米国が決めることであ
る、と語り、ロシアと米国の仲介役をドイツが務めることを拒否し
た。ロシア外相イワノフと米国外相パウェルは2月24日にカイロで
第1回会談を行なう。
・イスラエル軍はミサイル攻撃でパレスチナ人将校を殺した。イス
ラム急進派ヒスボラの民兵と関連を持っていたマスド アジャド少
佐(54歳)が抹殺された、と政府は発表した。パレスチナ側はこの
事件を戦争犯罪である、としている。


2月14日(水)

(ベルリン)閣議は30年前に制定された事業所組織法改正案を了承した。この改
正の目的は、従業員協議会委員の数を増やし、その選挙のやり方を簡素化し、発言
権を拡大することである。今後は従業員(300人ではなく)200人の企業も委員
1人を専従とすることになる。小規模の企業では今後、従業員協議会の選挙を当初
計画の1段階ではなく、2段階で実施することになる。従業員協議会の共同決定権
はおおよそ現在のものと同じである。労働大臣ヴァルター リースターと長期間対
立していた経済大臣ヴェルナー ミュラーも修正案を支持した。ミュラーは、これ
で産業界への負担は耐えられる水準になった、と語った。

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・閣議が共同経営決定権の改正を承認したことに、使用者側は批判
を、労働組合側は賛意を示している。経済界、野党キリスト教民主
同盟、キリスト教社会同盟、自由民主党は、ドイツの現状から見て
負担が大きすぎるという理由で、穏健な改正であるとはいえ今回の
改正には強く反対している。ドイツ工業団体連邦連合会からは、こ
の改正で企業は数十億マルクの支出を強いられる、と見ている。使
用者団体の会長フントは、産業界は立法措置で改正に対抗する、と
述べている。キリスト教民主同盟党首メルケルはそれを支持してい
る。自由民主党はドイツの経済状況へ打撃になる、と声明を出した。
一方労働組合は原案から後退があったものの、改正には満足である、
としている。
・牛の飼育業者は今年はBSE危機により収入が大きく減らざるをえ
ない。それに対し、ドイツの農家全体では前年度には予想より大き
な利益をあげた、との報告が農業省から出た。BSE危機にもかかわ
らずこれ以上大きく農家の収入が減ることはない、と政府は見てい
る。今回の報告では、約18万3千の主要農家の利益は13.5%増えて、
6万7百マルクほどなった。しかし今年度は農家47万2千件の農家の
12%にあたる約5万の畜産農家は減益を余儀なくされる。
・極右が特定の記念日、例えばホロコースト記念日などにデモを行
なうことを今後はより簡単に禁止できるようになる。これはホロコ
ースト記念日の1月27日に右翼が計画していたハンブルクでのパレ
ードを禁止する根拠として連邦憲法裁判所が下したものである。こ
の決定は、この種の集会は市民の日常生活を著しく妨げ、公共の秩
序を乱す可能性がある、としている。


2月15日(木)

(エルサレム)イスラエルでは保守的なリクード陣営と労働党が大連立を行なうこ
とで合意間近である。交渉筋の情報では、選挙で勝利したリクードの代表アリエル
 シャローンと元首相エフド バラクは挙国一致政府を作る交渉で意見が極めて近
づいている。イスラエル ラジオはバラクの腹心の言葉として、バラクは国防大臣
就任を受け入れた、と報じている。
イスラエル人とパレスチナ人の間ではまた暴力沙汰が起こり、さらに激化する可能
性がある。水曜日にはパレスチナ人のバス運転手がテル アヴィヴで人ごみに突っ
込み、11人を殺害した。数時間後イスラエル兵がガザ地区で犯人と思われる男を
射殺した。

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・OPEC裁判で元テロリストのクラインは殺人、殺人未遂、人質の
罪で9年の自由刑に処せられた。フランクフルト地方裁判所は、ク
ラインが1975年ウィーンのOPEC会談で起こった、3人の射殺事件
に加わっていた件で有罪である、とした。クラインは殺人を行なっ
ていない、と裁判では主張していた。同裁判所刑事部は、彼が共犯
者証言を行なったため、減刑を行なった。同時に訴えられていたシ
ンドラーは証拠不十分で無罪となった。同裁判所は、パレスチナ人
の集団ワジ ハダッドが組織したこの犯罪を依頼したのはリビアで
ある、と判断した。
・連邦議会は社会民主党、緑の党、キリスト教民主同盟、キリスト
教社会同盟の賛成で、BSE対策法案を承認した。これにより1頭が
BSEに感染していた場合、一緒に飼育されている牛全てを殺す法的
根拠ができたことになる。またこの法律では動物性飼料の使用禁止
に違反した場合により厳しい処罰を行なうことが定められている。
連邦参議院は金曜日にこの法案の審議を行なう。各州は決議案を参
議院に対して提出した。ドイツでは今まで29件のBSEが確認されて
いる。ヘッセン州当局はダルムシュタットでBSEの疑いがある牛が
見つかったと報じている。
・ボスニア難民のうち、ドイツで少なくとも6年暮らし、定職に2年
以上ついている人はドイツに続けて滞在できることになる、と各州
内務大臣が決定した。ただしコソヴォとその他のユーゴスラヴィア
からの難民に対して同じ措置を取るという合意は成りたたなかった。
4月30日までに出国しなければならないコソヴォ難民には、7月31
日までは滞在を認めるということで合意が成り立った。


2月16日(金)

(ベオグラード)この2年間行なわれていなかった、連合軍によるバグダット近郊
にあるイラクの防空施設の爆撃が行なわれた。アメリカ国防省は、24機のアメリ
カとイギリスの軍機が司令部とレーダー施設5ヶ所を攻撃したが、それらの施設は
飛行禁止区域から退去していなかった。爆撃の理由は、イラクのレーダーの監視可
能区域が広がり、連合軍の飛行機が飛行禁止区域を飛ぶ際に危険にさらされる、と
いうものである。イラクのテレヴィ局は5人が死亡した、と発表した。イラク南北
の飛行禁止区域は湾岸戦争後1991年にイラク軍による攻撃から少数派の人々を守
るために作られている。

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・フランクフルト アム マイン検察は、最近行なわれたOPEC裁判
で、偽証の疑いで外相フィッシャーに対し正式の捜査の準備をして
いる。首相シュレーダーは彼を支持し、彼は信頼に足る人物だ、と
語った。フィッシャーは記者会見で、辞任はしない、と語った。外
務省内では、検察の行動を歓迎する声も出ている。調査が行なわれ
るのは、60年代にのちにRAFのテロリストになったシラーと接触を
持ったことに関する彼の証言が整合性を欠いているためである。こ
れに関して彼には7件の告発が行なわれている。
・連邦参議院は、労働相リースターが計画している国が助成する個
人年金の導入を、当面差し止めた。両院協議会が、個人老齢年金に
関して議論になっている細かな点を、できるだけ早く明確にしなけ
ればならない。一方連邦参議院は同じくリースターが計画している
年金水準を2030年には67%に下げる法案については通過させた。キ
リスト教民主同盟、キリスト教社会同盟が与党の州は、両案を不公
平で官僚主義的である、と拒否した。社会民主党が与党の州は賛成
してはいるが、財政的な負担が大きいためにさらに考慮を求めた。
・UMTSの使用許可を売って得た巨額の収益の分配をめぐる争いで、
バーデン・ヴュルテンベルク州、ヘッセン州、バイエルン州は連邦
憲法裁判所に、連邦政府に対し訴えを起こしていることを認めた。
3州政府はいずえも蔵相アイヒェルが、州にこの収益を分配するこ
とを拒否したことを、問題にしている。専門家の意見では、税収不
足のためにこれらの州は収益の50%までが要求できる、とのことで
ある。


2月17日(土)

(バグダッド)アラブ世界はイギリスとアメリカの軍機がイラクのレーダー施設を
攻撃したことに怒りを表わした。アラブ連合は、この今回の爆撃は国際法に違反し
ている、との声明を出した。西ヨルダンランドでは約2千人のパレスチナ人が抗議
活動を行なった。ロシア、中国、フランスも、イラク側の情報では2人の死者を出
し、20人以上に怪我をさせた攻撃を批判した。イラク元首のサダム フセインは
さらに攻撃があった場合には報復する、と威嚇した。アメリカとイギリス政府は、
両国軍機が飛行禁止空域でイラク防空部隊の攻撃を受けた場合には、再び攻撃を行
なう、と予告している。「ニュー ヨーク タイムズ」の報道では、イラク陸軍は
ここ6週間で51回連合軍の飛行機をうち、14回地対空ミサイルを発射した。

     その他のニュース
・イスラム過激派ヒスボラがイスラエルの巡回隊を攻撃した後、米
国はレバノン政府に同国の南の国境の警備を強めるよう要請した。
この攻撃は、情勢をより緊張したものにする明確な挑発行為である、
と米国外務省は発表した。砲兵隊の攻撃でイスラエル兵1人が死亡
し、2人が重傷をおった。イスラエル元首相ネタニヤフは次期首相
シャローンから出されている入閣要請を拒否した。
・コソヴォでのバスへの爆弾攻撃から1日経過し、数千人のセルビ
ア人が犠牲者7人の追悼を行なった。セルビア人居住区とアルバニ
ア人居住区の二つに分割されているコソヴォスカ・ミトロヴィッツ
ァの町では、セルビア国民議会は平和維持軍KFORと国連との協力
を中止した。KFORはセルビア人とアルバニア人が衝突しないよう
に、道路を閉鎖した。ユーゴスラヴィア政府は、このバス攻撃の責
任は武装したアルバニア人にアル、と発表した。
・イラクから908人のクルド人難民をのせた貨物船がフランスの地
中海沿岸で座礁した。救援部隊が食べ物と飲み物を届けた。当局の
発表では、このカンボジア籍の船の座礁は故意である。乗組員は逃
走した。大統領シラクは、前例がない犯罪だ、と語った。仏政府は
入国を認めるかどうか1人1人検討する意向である。


2月18日(日)

(テヘラン)イラン訪問中の連邦議会議長ヴォルフガング ティールゼは、同国政
府の改革路線を支援する意志を示した。彼はイラン国会議長メーディ カルビと外
相カマル カラシと会談を行なった。カルビとの会談では批判的な話題も出、イラ
ンの内政問題には介入する意志はないが、意見を述べたことで処罰を受けるような
ことがあってはならない、と彼は強調した。
元シャーの息子レザ パーラウィは、ティールゼの訪問はイラン国民に期待感を呼
び起こしている、と語った。ドイツのような民主国家は、民主主義の原則がイラン
国民にもあてはまるということをこのような機会には主張しなければならない。イ
ランの改革に関するベルリン会談に参加した10人に対する有罪判決が両国関係の
負担になっている。

     その他のニュース
・国防相シャルピングは4日間の中国訪問の初日にザン ワニアン
将軍(中央軍事委員会議長代理)の出迎えを受けた。会談ではアジ
ア太平洋地区の状況と中国と台湾の関係が話し合われた。シャルピ
ングは、ドイツは中国と安全保障と軍事問題で協力体制を作って行
く、と語った。今後の会談ではアメリカのミサイル迎撃システム計
画について議論がされることになっている。
・イラク防空施設を英米軍が攻撃した後、イスラエルは近東の高ま
る緊張に対処している。副国防相スネーは、イラク、イラン、シリ
アが反イスラエルの連携を強めることを懸念している。バグダッド
では数千人がデモを行ない、空爆で2人の市民が死亡し、20人が怪
我をしたことに抗議した。イラク元首サダム フセインはエルサレ
ム解放のために志願兵軍結成を命じた。中国、ロシア、フランスは
この爆撃を批判している。ドイツ政府は懸念を示しているが、態度
表明は避けている。社会民主党、緑の党、民主社会党ではこの軍事
行動を批判する声があがっている。キリスト教民主同盟はこの連合
軍の行動を支持し、政府が沈黙していることを批判している。
・選挙で敗北したイスラエル大統領バラクの労働党では、シャロー
ン率いる保守派のリクード党との連立構想に批判が起きている。元
法務大臣ベイリンは、大連立政府は社会民主主義者には体裁だけ整
えた怪しげなものに見え、和平交渉を進展させない、労働党は連立
に加わってはならないと語った。内相ラモンはバラクが国防相に就
任する計画を批判し、特別党大会を開くよう要請した。バラクはシ
ャローンとの連立の決定を擁護した。


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