2月19日〜25日のドイツのニュース

2月19日(月)

(フランクフルト アム マイン)フランクフルト検察は、OPEC裁判で宣誓を行
なわず行なった証言で偽証を行なった疑いで外相ヨシュカ フィッシャーに対し、
正式な捜査を行なっている。捜査を行なうきっかけになったのは、フランクフルト
のフィッシャーが以前いた住居共同体に、RAFの元テロリスト、マルグリット シ
ラーが滞在したことをめぐって二人の証言が異なっていたことである。フィッシャ
ーは元同志でフランクフルトの非党派左翼のハンス・ヨアヒム クラインの裁判で、
シラーは自分の住居共同体で暮らしていたことを否定した。シラーは自伝の中で
1973年にその住居共同体で数日間生活した、と書いている。

     その他のニュース
・連邦政府は英米軍によるイラク数ヶ所の空爆の公式評価を拒否し
た。政府は米国と話し合うが、この問題に関して公式声明を出して
アメリカを応援することはない、と首相シュレーダーが態度を明ら
かにした。
・内相シリーは、ブランデンブルク州の森林地帯で極右勢力との闘
いのために、連邦国境警備隊の第1特殊部隊を投入した。この地域
で頻発する事件のため、対応を強化することが必要である、と彼は
語った。ドイツとポーランド国境地区の森林地帯に80名の州外の国
境警備隊員を配備した。彼らは駅や列車を重点的に警備し、右翼へ
の圧力を強めていく。ブランデンブルク州では極右による暴力行為
が昨年27%増加していた。
・ドイツ動物保護連盟は農相キューナストを、40万頭の牛を殺す計
画をたてた件で告発した。同連盟会長アーペルは告発の理由として、
牛肉の値下がりを阻止するという理由だけで牛を殺すというのは受
け入れられないし、健康な肉を特別なごみと同じように処分するこ
とは動物保護法に違反している、と述べた。連邦統計庁によれば、
12月の牛肉の生産量は半分に落ち込んだ。11月終わりにドイツで
はBSEが確認されていた。


2月20日(火)

(ハンブルク)大型飛行機A380製造を製造するハンブルクの飛行機工場の拡張に
は障害がなくなった。上級行政裁判所は、問題になっている工場の敷地のエルベ川
流域にあるミューレンベルク ロッホでの拡張建設中止要求を却下した。この自然
保護地域の一部分は埋め立てられることになる。これに反対する自然保護活動家や
住民280人が訴えを起こしていた。彼らには連邦憲法裁判所に訴える道が残されて
いる。工場側によれば、A380の製造でエアバス社で約2千人、下請け業者でさら
に2千人の職場が産み出されることになる。

     その他のニュース
・社会民主党政権下の州は、内務大臣シリーの極右運動からの脱退
を希望する人を支援する計画を支持する、と約束した。この計画は
州にとっても連邦にとっても有益で、この行動で右翼運動の幹部と
その周囲の人物が影響をうける、と彼は語っている。この計画は、
憲法擁護庁は、右翼活動からの脱退を支援し、危険にさらされた場
合には保護をすることができ、仕事探し、金銭面での支援、極端な
場合には新しい身元を作ることも含まれている。
・独政府は米軍のイラク空爆を非難する国際的な論調に加わらない。
外相フィッシャーは米国外相パウエルと初めて会談を行ない、ドイ
ツは米国を批判する必要はない、と述べた。独政府は、この地域に
おける安全が大きな危険にさらされている、という懸念を米国と共
有しており、米国が政治的な解決を模索していることを歓迎してい
る、と述べた。両大臣は米国のミサイル迎撃システムの計画につい
ても話し合った。
・モスクワ訪問中のNATO事務総長ロバートソンは、露大統領プー
チンをブリュッセルのNATO本部に招待した。プーチンは10月にブ
リュッセルで行なわれる欧・露首脳会談に出席する際に、招待に応
じることができる、と答えた。また露国防相セルゲイエフはロバー
トソンにヨーロッパ全体を覆うミサイル迎撃システムを提案した。
これは米国のミサイル迎撃システムの対案である。


2月21日(水)

(ベルリン)外務大臣ヨシュカ フィッシャー(緑の党)の政治的な過去をめぐる
衝突はさらに続いている。特にキリスト教民主同盟、キリスト教社会同盟が外相の
政治力は失われたと見ている一方、緑の党の党員の中にはこれは「卑劣な宣伝」だ
とする向きもある。2日前からフィッシャーに対して、ウィーンで開かれたOPEC
会議でのテロ事件をめぐり最近行なわれた裁判で偽証を行なった件で、捜査手続き
が進行している。ある新聞は、フランクフルト検察は、彼が70年代に市街での抗
議活動の際、火炎瓶を使用したとする憲法擁護庁の文書を活用する、と伝えている。

     その他のニュース
・外相フィッシャーは水曜日、米国新政権訪問を終える。今までの
ところ会談は成果が上がっている、と一行は見ている。フィッシャ
ーは副大統領チェニーと外相パウエルと会談の席でイラクに対する
軍事行動の批判を行なわなかった。その理由として彼は、ドイツに
は批判をする権限がない、と語った。和平問題を話し合う会談では、
米国のミサイル迎撃システムと欧州防衛構想についても話し合いが
行なわれた。
・米国は、ロシアの欧州は自前のミサイル迎撃システムを作ろうと
いう提案に対して控えめな反応を行なっている。その理由として、
それが米国を防衛するものではないし、重要な計画があれば、それ
に協力をしていく、と国防相報道官は語った。ロシア大統領プーチ
ンはNATO事務総長ロバートソンとの会談で、昨年の提案を具体化し、
欧州型のミサイル迎撃システムは可動式で、危機の際にだけ組み立
てられるものである、と説明した。
・イスラエル次期首相シャローンは、大連立政権が誕生する可能性
が再び拡大した、と見ている。バラク首相が政界から引退し、新政
権では国防大臣にはならないという決定を下したため、問題が一つ
解決するのでは、との期待をリクードの報道官は語った。また、バ
ラクの労働党は大連立に反対なわけではなく、彼の国防大臣就任に
反対しているのだ、とも語った。月曜日には労働党は最終的に大連
立に参加するかどうかを決定する。


2月22日(木)

(ベルリン)南イングランドの豚肉に口蹄病が発生したことを受け、購買者保護大
臣レナーテ キューナストはここ3週間にイギリスから持ち込まれた輸入家畜すべ
てを調査させる。各州には、獣医に監視させるよう、要請がだされた。この病気の
潜伏期間は7日間までなので、それに合わせて対策をとる期間が定められた。EUは
水曜日にイギリス産の家畜と食肉の他のEU諸国に対する即時輸出禁止を命じた。
このウィルス性の病気は感染力が強い。EU委員会の情報によれば、人間には危険
性がない、とのことである。

     その他のニュース
・緑の党の首脳は、外相フィッシャーが英米軍によるイラク爆撃を
支持したことで生じた混乱を収拾しようとしている。連邦同党幹部
のクーンと州の同党党首が電話会談を行ない、空爆を非難したもの
の、同時にフィッシャーの支援も行なった。首相シュレーダーはあ
らためてフィッシャーの発言を支持した。次期緑の党党首のロート
は今後のイラク政策についての基本的な議論を行なうことに賛成し、
過去10年の対アラブ政策が成果をあげたかどうか、判断しなければ
ならない、と語った。
・米軍戦闘爆撃機がイラン北部の防空施設に爆撃を行なった。国防
省報道官は、これはによるイラク北部の飛行禁止区域を監視してい
た米軍機を、イラク軍砲兵隊が攻撃したことに対する報復である、
と発表した。一方ロシア軍報道官は、今回の攻撃は国際社会に対す
る挑発である、と発表した。
・国連戦争犯罪法廷は、3人のボスニアのセルビア人に対し、ボス
ニア戦争中イスラム女性を拷問し強姦した件で12年から28年の禁固
の判決を下した。裁判官は犯人を人権に対する犯罪と、国際戦争法
違反であると判断した。これが、国際法廷が有罪の理由として性的
奴隷化を取り上げた初めての裁判であった。


2月23日(金)

(ベルリン)ドイツで飼育されている牛の中に、今回は結核にかかったものが見つ
かった。オーバーバイエルンのエーベルスベルク郡では、屠殺された牛の中から結
核の病原体が発見され、140頭の牛が殺された。うち87頭がすでに感染していた。
結核は生乳を通じて人間にも感染する。一方、バイエルン州厚生省は15件目の
BSEを確認した。全国で36例の狂牛病が確認されたことになる。ヨーロッパ全体
ではイギリスで急速に広まっている口蹄病の危険が生じている。ドイツの州のいく
つかでは、イギリス産の家畜の検疫を行なった。ドイツ政府はイギリスを旅行する
人に肉製品を持ち帰らないように警告した。ただし、口蹄病は人間には感染しない。

     その他のニュース
・1999年のヘッセン州州議会選挙は、キリスト教民主同盟の不正
資金疑惑にもかかわらず、有効である。ヘッセン州選挙審査法廷は、
金曜日この選挙に関する裁判の手続きを中止した。同法廷は約1年
前から、キリスト教民主同盟が外国の闇口座から出た、100万マル
クをこえる資金を選挙戦に使用したことに関して調査を行なってき
た。
・環境相トリティンは、地球温暖化対策として、エネルギー政策の
さらなる転換を行なう、とベルリンで開かれている展示会「2000
年の環境データ」で語った。二酸化炭素を削減のため、風力発電、
新しいエネルギー、電力と温水を発電所から供給する設備などが導
入されなければならない、とも語った。またエネルギー節約を促す
努力にも賛成した。国連の科学者たちは今週初め、気候の世界的な
変動に警告を発し、北欧では洪水が起る可能性がある、との報告を
出していた。
・連邦議会議長ティールゼはイランからの帰国後、ドイツがイスラ
ムとヨーロッパ文化の交流で重要な役割を果たすべきである、とい
う意見を述べた。彼はイランの持つ重要な文化的伝統に注目するよ
う求め、イランを矮小化して否定的に見ないように、と語った。ま
た年内にも他のドイツの政治家にイランを訪問させる一方、イラン
の国会議員をドイツに招待したい、とも語った。


2月24日(土)

(ベルリン)イギリスで発生した口蹄病に対処するべく、農業大臣レナーテ キュ
ーナストは月曜日に緊急対策本部を召集する。連邦と州の専門家がこの病気の現状
を分析し、今後の対策を検討する。キューナストはこの病気に感染した肉と食品を
感染源としてドイツにこの病気が蔓延しないよう警告を発し、各州にドイツで発生
した場合に備えてあらかじめ対策を講ずるよう求めていた。ベルギーも国内に口蹄
病が蔓延しないように、食肉市場からイギリス産の肉を締め出した。

     その他のニュース
・キリスト教民主同盟元党首ショイブレは、同党の危機の責任は現
党首メルケルと国会の統一会派の長メルツ双方にある、とした。現
在の状況の原因の一つは、二人がお互いを競争相手と見ている、と
いう印象を回りに与えているからだ、と彼は新聞に語った。党内に
問題が生じたきっかけは、不正資金疑惑である、と彼はあらためて
述べた。メルツはこの1年間の自分の活動によい評価を下しており、
メルケルとの協力体制にも信頼を寄せてはいるが、政治手法と表現
には違いがあるということを認めている。
・自由党党首ゲアハルトと政府の外国人問題委員ベックは、ドイツ
で暮らしている外国人を労働市場により積極的に取り込むことで意
見が一致した。ゲアハルトは、一年以内にドイツ人の専門家が応募
しなかった職には、外国人を採用してもかまわないことになる、外
国人の専門家を拒むことはできなくなる、と語った。ベック(緑の
党)は十分なドイツ語の知識を持つ移民には、仕事につき、永住す
る権利を認めるよう求めている。
・米国外相パウエルはエジプト政府との会談後、イスラエルに向か
った。予定ではまず現首相バラクとの会談が予定されている。エジ
プト大統領ムバラクと外相ムサとの会談で、彼はイラク首脳に対し
有効な制裁を加えることに同意を得ようとした。また彼はアラブ側
から批判をうけている空爆を擁護した。一方、イスラエルのパレス
チナ人居住区ではイラクに対する連帯表明集会が行なわれた。イス
ラエルのヘリコプターがレバノンとの国境地帯を攻撃した。


2月25日(日)

(エルサレム)アメリカ外相コリン パウエルは、イスラエルにパレスチナ人居住
区の封鎖を中止するよう要請した。パウエルはパレスチナ大統領アラファトとの会
談を行なった後、封鎖による経済的な圧力は安全保障の改善にはつながらない、と
語った。パウエルはイスラエルとパレスチナに、暴力が激化するのを押し止め、和
平交渉再開の前提条件を作るように要請した。パウエルはこの会談の前に、次期イ
スラエル首相アリエル シャローンと軍幹部と会談を行なっていた。ラマラではパ
レスチナ人が新しいアメリカ指導部の近東政策に反対する抗議行動を行なった。パ
ウエルは近東訪問でこの後ヨルダン、シリア、クウェートを訪問する。

     その他のニュース
・ドイツ大統領ラオはペルシャ湾のカタール訪問の最後に、工業都
市マサイエドを訪問し、クルップ・ウーデ社の巨大な化学工場見学
した。訪問中、カタール政府代表はドイツからの直接の投資を増や
してほしい、という希望を述べた。
・連立政府の内部で、環境税をめぐって新たな意見の対立が起こっ
ている。緑の党は、首相シュレーダーの意見とは違って、環境税の
改革を2003年以降も続行したい、と強調した。連邦同党幹部のク
ーンによれば、同党は、環境税の値上げによって賃金付帯費用が下
がり、環境対策を追加して行なえるようになるかどうかを検討して
いる。一方シュレーダーは2週間前、2003年以降の環境税の値上
げを拒否していた。
・ヘッセン州社会民主党は同州首相コッホ(キリスト教民主同盟)
との法廷闘争を終わりにする、と発表した。同州同党幹部のベーケ
ルは、選挙審査法廷の決定に対抗する措置は取らない、と語った。
同法廷は金曜日に、キリスト教民主同盟は多額の資金を隠し口座か
ら受け取っていはいたが、1999年の州議会選挙は適法である、と
の判断を下していた。


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