4月2日〜8日のドイツのニュース

4月2日(月)

(ワシントン、ベオグラード)アメリカ外務省の発表によれば、ユーゴスラヴィア
元大統領スロボダン ミロシェヴィッチの逮捕を受けて、アメリカは一時凍結して
いた5千万ドルの財政支援を再開することにした。さらに、アメリカはユーゴスラ
ヴィアに改革と民主化を進めるように期待している。ミロシェヴィッチは当面、職
務乱用と公金横領で裁判にかけられることになっている。デン ハーグの国連戦争
犯罪裁判所への引き渡しをユーゴスラヴィア政府は今までのところ拒否している。
ミロシェヴィッチは同裁判所にコソヴォ戦争中の犯罪で訴えられている。原告代表
のカーラ デル ポンテはボスニアでの戦争犯罪の件で2回目の拘禁命令を出す準
備をしている。

     その他のニュース
・ミロシェヴィッチの逮捕後、デン ハーグの国連戦争犯罪裁判所
への引き渡しを求める声が高まっている。国連事務総長アナン、
NATO事務長ロバートソン、英国首相ブレア、ドイツ首相シュレー
ダーが引き渡しを求める声明を出した。しかし、シュレーダーはま
ずユーゴ政府に正義を行なう機会を与えなければならない、と語っ
た。
・ドイツ大蔵省は今年も着実な経済成長が見込まれる、と発表した。
同省報道官によれば、ドイツの2001年の経済成長率は2.75%の予
想である。大蔵大臣アイヒェルは以前、経済成長は鈍化し、税収も
控えめに見積もっていたが、政府はこれを修正したい、と発表した。
2002年1月1日のユーロ導入へ向けた広報活動を始めるにあたって、
アイヒェルはユーロは信頼性が高く、マルクより投機の対象になり
にくい、と語った。
・キリスト教民主同盟とキリスト教社会同盟は、政府の年金改革案
を連邦参議院でこれ以上阻止することはできなくなりそうである。
キリスト教民主同盟の事務長マイアーは、同党所属の州政府代表そ
れぞれに、この改革案に賛成するか反対するかを自分で決定するよ
う委ねた。一方ラインラント・プファルツ州大蔵大臣ミットラー
(社会民主党)は、同州は両院協議会に、所有する住居も個人老齢
年金の一部に数えるように提案する、と語った。


4月3日(火)

(カールスルーエ)介護保険が一部改定の必要がある。カールスルーエの連邦憲法
裁判所は、関係する法律をいくつかの点で憲法違反である、と判断した。遅くとも
2005年からは、子供のいる親は子供のない人よりも介護保険料の減額を受けるこ
とになる、との決定を下した。これは、家族の負担をより重視した決定である。こ
の判断に従い、立法府は年金保険と健康保険への影響を検討しなければならない。
野党の代表は政府に対し、計画中の年金改革を中止するよう求めた。連邦労働大臣
ヴァルター リースターはこの要求を拒絶し、今回の判決は年金には全く影響を及
ぼさない、と語った。

     その他のニュース
・ドイツでは口蹄疫が発生する危険は少なくなった。ミュンスター
ラントの養豚農家での口蹄疫の疑いが持たれた事例を緊急検査した
結果、公式に陰性の結果がでた。この農場はオランダ国境から50キ
ロ程離れており、既に子豚百頭を殺していた。最終結果は数日後に
公表される、とのことである。大臣ヘーンは改めて予防接種の実施
を要求した。ヘッセン州でも口蹄疫が疑われる農場が出てきた。こ
の農場では該当する羊10頭が殺された。
・ドイツ首相ゲアハルト シュレーダーはアルジェリア政府に対し、
さらに産業分野での改革路線を推し進めるよう呼びかけた。彼はベ
ルリンでアルジェリア大統領ブーテフリカと会談をし、そうすれば
アルジェリアはより多くの投資を期待できる、と語った。その他に
は、近東紛争とアルジェリアでの人権問題が話し合われた。
・ドイツ労働総同盟は労働のための同盟が今までにあげた成果を不
十分である、として批判した。労働のための同盟は失業率を下げ、
雇用を作り出すことで初めて評価されるが、使用者側はこの約束を
十分に守らなかった、と労働総同盟幹部は語った。その他に、労働
のための同盟の話し合いに賃金問題を取り上げることを拒否した。


4月4日(水)

(デュッセルドルフ)ミュンスターランドで口蹄疫の検査結果が陰性と出たのに続
き、ヘッセン州でも口蹄疫の疑いが晴れた。第1回の緊急検査では陰性との結果が
出た。一方ドイツでの危機管理のあり方をめぐる議論は激しさを増している。緑の
党所属の連邦農業大臣レナーテ キューナストはノルトライン・ヴェストファーレ
ン州の農業大臣で同じ緑の党のベアベル ヘーンが混乱を拡大し、口蹄疫対策を十
分取らなかった、と非難し、予防注射は万能ではない、と批判した。それに対しヘ
ーンは、キューナスト自身口蹄疫がドイツ全土にまだ広がっていないのは驚きだ、
と語っている、との声明を出した。

     その他のニュース
・経済成長の足並みが鈍化しているため、3月のドイツの失業者数
は400万人をかろうじて下まわるにとどまった。連邦労働施設の発
表では、失業者は399万9千人で、2月より11万3千人減少した。
失業率は10.1%から9.8%に下がった。季節変動を勘案すると、失
業は若干増えたことになる。連邦首相シュレーダーは景気の先行き
を暗く予想することを批判した。ドイツ銀行会議の席上、この5年
間で最低の失業者数と3%の国民総生産の増加という2000年の成
果を見れば、楽観的な予想が出てくるはずだ、と語った。
・連邦大統領ラオはEUの未来を考慮し、ヨーロッパ憲法を作ること
に賛成した。EUは中央集権的な超大国ではなく、国民国家の連邦組
織であることを含む憲法でなければならない、とストラスブールで
開かれた欧州議会で語った。また、欧州議会とEU閣僚理事会が真の
2院制の議会として再構築されるべきだ、とも提案した。
・ガザ地区では武力衝突が続いているが、イスラエルとパレスチナ
は、シャローンがイスラエル首相に就任して以来初めて閣僚相互で
交渉を行なった。イスラエル外相ペレスはパレスチナ国際協力担当
大臣シャースとアテネで会談し、数ヶ月前に行なっていた武力の行
使を中止するための交渉を再開することで合意した。米国の仲介で
第1回交渉が近く行なわれる、とペレスは発表した。一方ガザ地区
ではイスラエル兵と武装したパレスチナ人が手榴弾で交戦した。


4月5日(木)

(ベルリン)年金改革に関する第2回両院協議会は成果を上げることなく終了した。
連邦議会と連邦参議院の両院協議会は、意見の違いが大きすぎるため、審議を一時
中断した。次回の審議は5月3日にすることで合意した。それまでに専門家からな
る作業班は、住居用不動産所有者にも民営の老齢年金に加入するよう促すかどうか
を検討する。これはキリスト教民主同盟の主要な要求の一つである。

     その他のニュース
・購買者保護大臣キューナストは、各州が一致して要求する場合に
は、口蹄疫の予防接種に賛成する準備がある、と新聞に語った。週
末に行なわれるEU農相会談で彼女は、留保は付けながらも口蹄疫の
予防接種を擁護することになっている。彼女とノルトライン・ヴェ
ストファーレン州農相ヘーンは、口蹄疫への対処法をめぐって対立
していたが、金曜日に会談し対立の解消をはかる。
・ドイツとイタリアで大がかりな手入れが行なわれ、イスラムのテ
ロリストと見られる6人が逮捕された。ミラノとその周辺で容疑者
5人が、フランクフルトでアルジェリア人1人が逮捕された。連邦検
察の発表によれば、容疑者は現在アフガニスタンにいるビン ラデ
ンとつながりがあり、米国施設の襲撃に関与していた。ミラノで逮
捕された容疑者は1月にローマの米国大使館襲撃を計画したテロリ
スト集団に属している、と検察はみている。
・中国に緊急着陸した米軍偵察機をめぐる対立を解決する努力が大
急ぎで行なわれている。ようやく米国大統領ブッシュは公式に、米
軍機と衝突して死亡した中国人パイロットに弔意を表明した。また
彼は中国首脳部に、この突発事態が原因で両国関係を不安定にしな
いよう呼びかけた。そして改めて捕虜になっている偵察機乗組員24
人の即時解放を求めた。中国はアメリカが弔意を表わしたことは歓
迎しているが、謝罪を求めていることを強調した。


4月6日(金)

(ベルリン)連邦首相ゲアハルト シュレーダーは、ドイツでは怠惰な人の権利は
認められない、と語った。働けるのに、働く意志がない人は、支援を受けられると
あてにしてはならない、と彼は金曜日の新聞で語り、波紋を巻き起こした。労働組
合と民主社会党は、社会民主党の党首でもある彼に対する批判を突きつけた。それ
に対し、キリスト教民主同盟、自由民主党、連邦労働施設は首相の発言に賛同した。
首相は失業者を十把ひとからげに批判している、とドイツ労働総同盟は非難した。
キリスト教民主同盟党首アンゲラ メルケルは、シュレーダーがキリスト教民主同
盟の政策を学んだ、と評価し、キリスト教民主同盟はずっと以前から、地下経済は
経済よりも早く成長することはないのは当たり前だ、と考えていると語った。

     その他のニュース
・口蹄疫の予防接種をめぐる論争で、ノルトライン・ヴェストファ
ーレン州の環境大臣ヘーンは譲歩した。連邦購買者保護大臣キュー
ナストとの調整会談後、ヘーンはEU法に従う、と語った。キューナ
ストは、オランダから口蹄疫が侵入してくるのを防ぐため、ニーダ
ーザクセン州とノルトライン・ヴェストファーレン州でも予防接種
を行なうと予告した。EU法はそのための準備期間を定めている。ヘ
ーンとの対立でキューナストは首相シュレーダーから支援を受けた。
シュレーダーはキューナストは正しい立場を取っていると思う、と
語っていた。
・連邦政府は年金問題をめぐってキリスト教民主同盟、キリスト教
社会同盟と妥協する準備を進めている。首相シュレーダーは、意見
の一致が見られるだろうとの期待を語り、政府は財政面での裏づけ
がある限りで、できることをすべて行なう、と語った。連邦議会と
連邦参議院の両院協議会の後、キリスト教社会同盟のゼーホーファ
ーは、労相リースターが個人加盟の老齢年金への加入促進を次回の
提案で修正することが出発点になる、と語った。次回の両院協議会
は5月3日に開かれる。
・連邦議会は、国会の調査委員会の仕事を法律で規定しなおすこと
を、全会一致で採択した。これにより国会の少数派の権利が強めら
れることになる。キリスト教民主同盟、キリスト教社会同盟の代表
者は、この規則改正をする理由として、現在開かれているキリスト
教民主同盟の不正献金疑惑調査委員会で、少数政党が不利な扱いを
されていることをあげた。障害者の社会参加を促進する法律もほぼ
全会派の賛成で採択した。これによってより良い助言と補助を行な
う人を要求する権利が得られることになる。


4月7日(土)

(ベルリン)ドイツでは好景気が終わりを迎えたことを警告する声が強まっている。
既に主要な経済研究所や連盟が経済成長予想を撤回していたが、ヒューポフェライ
ンスバンクの主任研究員マルティン ヒュフナーも経済成長は2%を超えないとの
予測を出した。この状況に、ドイツ産業商業会議議長ルードヴィヒ ゲオルグ ブ
ラウンは賃上げゼロを要請した。金属産業労働組合はこの要請を全面的に拒否した。
連邦首相ゲアハルト シュレーダーも間接的な表現ながら、次回の賃上げ交渉では
穏健な結果を出すことに賛成し、経済の成長力を強めるためにあらゆることを行わ
なければならない、と語った。

     その他のニュース
・ドイツにはとりあえず口蹄疫が大きく広がってはいない。テュー
リンゲン州、ノルトライン・ヴェストファーレン州、ヘッセン州、
ザールラント州では土曜日に、購買者保護大臣キューナストに予防
接種の実施を迫った。EU委員会は、予防接種の実施を各国にまかせ
ている。キューナストは、ワクチンの量が不十分であること、予防
接種が必ず効果があるわけではないことから、実施に消極的である。
・数週間前からベルリン市の連立与党社会民主党とキリスト教民主
同盟の内部で不協和音が高まっている。社会民主党は土曜日キリス
ト教民主同盟に、議員団長ランドフスキーをとるか、社会民主党と
の連立維持をとるか決めるように求めた。社会民主党党首シュトリ
ーダーは、ベルリン銀行業界の不調の責任と、ベルリン市キリスト
教民主同盟の資金疑惑の原因はランドフスキーにある、と語った。
ランドフスキーはこれは脅しであると語り、辞任を拒否した。現市
長でキリスト教民主同盟ベルリン党首のディープゲンは彼を支持し
ている。
・内相シリーはドイツ国内のイスラム系テロリストが危険を引き起
こす可能性を憂慮した。「シュピーゲル」誌に、政府は国際的暴力
組織の解明をするために今まで以上の努力を行なう、と彼は語った。
最近フランクフルト アム マインでイスラム過激派と見られる人
物が逮捕されたばかりである。また連邦検察はさらにこの組織に属
する4人の行方を追っている。


4月8日(日)

(ケルン)連邦首相ゲアハルト シュレーダーに続いて、バイエルン州首相エドム
ント シュトイバーも就業可能なのにその仕事を拒否する失業者に対してより厳し
い措置を取ることに賛成する発言を行なった。シュレーダーは仕事をする意志のな
い人に対してより厳しい制裁を求めているが、シュトイバーはこれをまだ十分満足
とは受け止めていない。仕事を拒否した場合、今までより社会給付をの支払いを停
止しやすくするように、法律とその運用を変更しなければならない、と語った。

     その他のニュース
・ドイツ工業団体連邦連合会はキリスト教民主同盟に対し、連邦参
議院での年金改革案の承認を妨害しないように求めた。同連合会長
ロゴフスキーは、改革案には欠点もあるが、個人加入の年金は2つ
めの手段として必要だ、と語った。労働相リースターは、連邦参議
院で過半数を獲得するため、資金分担をめぐって各州と自治体と妥
協することになるだろう、という情報もある。
・スウェーデンのエスターズンドで開かれているEU農相会談では、
口蹄疫の予防接種が中心議題になっている。ドイツ購買者保護大臣
キューナストは会議の冒頭で、大規模な予防接種ではなく、口蹄疫
が広がっている地域に限定した予防接種を行なう可能性を探る、と
言った。たとえばオランダからの侵入を防ぐために、ノルトライン
・ヴェストファーレン州の国境地域でだけ予防接種を行なうべきだ、
というのである。1991年にEU全体で禁止された、口蹄疫の予防接
種を行なうことを将来許すべきかどうか、この会議で話し合う。EU
委員会と加盟各国の政府は今までのところ予防接種解禁に反対して
いる。
・連邦大統領ティールゼは地雷禁止条約に参加しない米国、ロシア、
中国を厳しく非難した。これは政治的道徳的な失態である、と地雷
撤去組織「ハロー トラスト」に対しレフ・コペレフ平和人権賞を
授与する際に語った。毎年約8百人の人間が地雷の爆発で命を落と
し、その多くは農家と遊んでいる子供だ、とも語った。


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