5月7日〜13日のドイツのニュース

5月7日(月)

(ベルリン)ドイツ首相ゲアハルト シュレーダーはヨーロッパ社会民主党大会で
EUの組織の抜本的改革の提案を擁護した。彼はベルリンで2日間の日程で開かれる
会議の冒頭、各国の社会民主主義政党に対し今後もEUを狙いどおりに成長させて
いくよう求めた。シュレーダーの提案は各国で懐疑的に受け取られていた。その提
案で、彼はEU委員会を政府とし、欧州議会に予算高権を与え、閣僚会議を諸国議会
へ格下げする計画を述べていた。フランスの首相リオネル ジョスパンはこの提案
の内容に関して意見を述べなかったが、シュレーダーの態度は擁護した。

     その他のニュース
・ルフトハンザの操縦士のストから3日、経営側は賃金交渉で新し
い提案を行なった。操縦士同盟「コックピット」の広報担当は、現
在提案を検討中であるが、何パーセントの賃上げかだけではなく、
構造的な改革も含めて問題になっており、判断するのが難しい、と
語った。合意に至らなければ、火曜日には操縦士側は再びストを行
なう構えである。同労組は4千2百人の操縦士に対し最高35%の賃
上げを要求している。
・厚生大臣シュミットは2002年連邦議会選挙後、関係各方面の合
意を得て大規模な健康政策の改革に着手する方針である。彼女が召
集した保健制度の将来を話し合う円卓会議は6つの作業班を作ること
で合意した。作業班は医薬品供給、外来および入院治療、予防措置
の改革に取り組む。次回会合は9月17日に開かれ、第1回の提案を
検討することになっている。この会議には医者、健康保険組合、医
薬品業界、専門病院、患者の代表24人が参加した。
・社会民主党に属する州首相が子女手当の30マルク引き上げに基本
的に賛成したことを受け、連邦参議院での過半数獲得の可能性が高
まった。キリスト教民主同盟、キリスト教社会同盟政権の州のほと
んどすべてはこの提案に賛成することを示唆している。ヘッセン州
首相コッホは、州の負担が4分の1だけであれば、争わない、と語っ
た。コッホのほかバーデン・ヴュルテンベルク州首相トイフェルは、
引き上げを社会民主党政権の州でのみ行なうのであれば、それは受
け入れられない、と語った。


5月8日(火)

(ベルリン)連邦議会と連邦参議院の両院協議会は年金改革に関する話し合いを行
なった。その中で特に国が奨励する個人加盟の年金に個人所有の住居を含めるかど
うかの他に、遺族年金の新しい規定について話し合いが行なわれた。これらの点に
関して社会民主党と緑の党は最近議会で新たな提案を行なった。ハンブルク市長オ
ルトヴィン ルンデはキリスト教民主同盟、キリスト教社会同盟に、譲歩する意志
を見せるよう訴えた。金曜日にこの改革案の承認を連邦議会で得るためには、与党
が大連立を組んでいる各州の賛成を得る必要がある。

     その他のニュース
・景気が停滞しているため、ドイツの労働市場は足踏みしている。
4月の失業は昨年と比べて0.3%の11万8500人減って、9.5%の
387万人で、ここ5年で最低の水準になった。ただし、季節変動を
加味すると4ヶ月連続の増加である。連邦労働施設のヤーゴダは成
長は一定ではないが、平均360万という今年の失業者数の予測を
変える根拠はない、と語った。政府はこの傾向をよい方向で評価
しているが、野党と使用者側は労働市場の改革を求めている。
・ルフトハンザの操縦士労働組合と会社側の賃上げ交渉は暗礁に乗
り上げそうである。8時間の交渉を行なったが、組合側は合意は
「ほとんど無理」であると見ている。この分では木曜日に予定され
ているストが行なわれる可能性が高まった、と組合は発表した。会
社側はこの交渉の状態について論評を差し控えている。
・連立政府は売春と他の職業の差別をなくすことにした。社会民主
党と緑の党の統一会派は全会一致で関係法案を承認した。それによ
れば売春は今後風紀を乱すもとのは看做されず、労働契約を結び、
顧客に対し報酬をめぐって訴訟を起こすことが可能になる。その他
失業、健康、年金などの保険での不公平も解消される。ドイツには
約40万人の売春業者がいると見積もられている。


5月9日(水)

(フランクフルト アム マイン)ルフトハンザの操縦士の24時間ストのため、
木曜日飛行機を利用するつもりであった人々はドイツ各地の空港で混乱に巻き込ま
れることを覚悟しなければならない。約4千2百人の操縦士の賃上げ交渉の後、操
縦士労働組合コックピットはルフトハンザ史上最長のストライキの決行を決定した。
ストは深夜に始まる。ルフトハンザ側の情報によれば、予定されていた3千5百回
の飛行の40%が欠航する見込みである。会社側は利用者に国内旅行の場合は列車を
使用するよう呼びかけている。同社広報担当は、管理職の操縦士が臨時便を操縦す
るほか、休暇客をのせるチャーター機会社コンドルも、飛行機を予定通り運行させ
るよう協力する、と発表した。

     その他のニュース
・ドイツ外相フィッシャーはイスラエル外相ペレスとの会談後、再
びドイツが近東紛争で仲介役を果たすことはない、と語った。ただ
しEU各国と協力してイスラエルとパレスチナの和平交渉を再び軌道
にのせるためにはあらゆる努力を行なう、とも語った。ペレスはパ
レスチナ側の抵抗が続いているため、ドイツが仲介役となるよう提
案していた。まだ彼はさらに和平達成が遠のいているとも語った。
彼はヨーロッパ人に対し、近東の暴力やテロが以前にも増して激し
くなっていることを非難するよう、呼びかけた。ペレスとフィッシ
ャーはベルリンの新イスラエル大使館の落成式典に参加していた。
・イスラエルの若者二人が西ヨルダンランドで殺されたため、イス
ラエルでは恐怖が広がっている。首相シャローンはこの犯行をパレ
スチナ人によるテロ行為が無実の市民に向けられたものだ、と語っ
た。通信社は、「ヒスボラ パレスチナ」がこの事件の犯行声明を
出した、と伝えている。パレスチナ人の赤ん坊が月曜日難民収容所
でイスラエル軍の攻撃を受けて死んだことに報復するため、14歳の
2人を殺した、とのことである。イスラエル軍はガザ地区北部の自
治区をあらためて攻撃し、その際、ベイト ハヌンの警察を破壊し
た、とパレスチナ側は伝えている。
・閣議は国防軍のコソヴォ駐留の機関延長と規模の拡大を承認した。
連邦議会の賛成が必要であるが、この決定により、ドイツ兵はコソ
ヴォ平和部隊の枠組みの中で今後コソヴォとセルビアの安全保障地
域の中へ投入されるかもしれない。ただしドイツ兵は戦闘行為には
加わらず、装備は自己防衛のためだけに使用する、と政府を代表し
てハイエが語った。


5月10日(木)

(ベルリン)数ヶ月間にわたる調整の結果、年金改革案は金曜日に連邦参議院で最
後の障害を乗り越えられそうである。大連立が組まれているベルリン市とブランデ
ンブルク州が連邦政府の改革案に賛成すると発表しているため、連邦参議院も通過
するのは確実である。両院協議会が寡婦年金と個人加盟の老齢年金への不動産の参
入で改正案に手を入れたため、賛成票を投じることに反対する理由はなくなった、
と両地方自治体は声明を出した。
ベルリン市とブランデンブルク州が賛成するため、連邦政府は成立に必要な35票
の上積みが可能になった。労働大臣ヴァルター リースターは再度、キリスト教民
主同盟、キリスト教社会同盟政権の州に対して、改革にこれ以上反対しないよう求
めた。

     その他のニュース
・延期されていたナチの元強制労働者に対する補償の支払いのめど
が立った。ニュー ヨークの裁判官クラムはドイツの銀行に対する
元強制労働者の集団訴訟を却下した。今まで彼女は却下をするのを
拒否しており、これがドイツの産業界が賠償金の支払いをする上で
の決定的な障害と看做されていた。ドイツ産業界は米国でこれ以上
の訴訟を起こされないという保障を求めていた。補償基金の広報ギ
ボフスキー、米国政府の担当ラムズフェルド、ドイツ政府はこの決
定を歓迎している。
・ルフトハンザの操縦士のストのため数百便の欠航と長時間の延着
が発生した。同社によれば9百便以上が欠航したものの、利用客の
多くが状況に合わせて計画を変更したため、予想された大混乱は起
らなかった。操縦士が賃上げを求めて行なったストは深夜まで続く
ことになっている。
・イスラエル軍はパレスチナの重要拠点に対する攻撃を強めている。
ガザ地区との境界近くでの爆弾による死者がでて数時間後、イスラ
エル軍はパレスチナ安全保障軍とガザ地区の中心部にあるパレスチ
ナ大統領アラファトのファタハの建物を報復のためミサイルで攻撃
した。その際約20人が怪我をした。ミサイルはアラファトの事務所
から数メートルのところに打ち込まれた。またイスラエル軍戦車が
ベイト ハヌンにある警察の監視所とラファの難民収容施設を攻撃
し、家屋と農地を破壊したとの情報もある。また国境施設の修理を
していたルーマニア人労働者2人が死亡し、1人が怪我をした。


5月12日(土)

(ベルリン)政府と電力業界が原子力発電所廃止の合意をして約一年経ったが、そ
れに必要な新しい法案が署名を待っている。環境省は、この法律では原子力発電所
に関する合意が細かく規定される、と発表した。それによれば、運転中の原発19
機の運転期間は最長32年で、2005年からは再処理工場への輸送は行なわないこと
になっている。首相府は5月22日か6月11日に電力会社を招いてこの契約に署名す
ることにした。

     その他のニュース
・ナチの元強制労働者に対する賠償金の支払いをが再び遅れそうで
ある。ドイツ政府の全権ラムスドルフはアメリカの裁判官クラムが
つけた条件は受け入れられない、と発言した。クラムは犠牲者の集
団訴訟を棄却する際、ドイツの基金はオーストリアのナチの犠牲者
の賠償要求にも応えなければならない、という条件をつけていた。
ドイツ政府と産業界は火曜日の公聴会で訴訟の最終的な棄却と、法
的安全性が得られるよう望んでいる。緑の党の法律の専門家、ベッ
クはこの結果がどうであれ、連邦議会は高齢の犠牲者には迅速にお
金を支払うように求めている。
・マケドニア北東部では1日間の休戦をはさんで、政府軍とアルバ
ニア人分離主義者が再び交戦を行なった。軍の報道によれば、反乱
軍の拠点に大きな損失を与えた。分離主義者は金曜日の休戦を利用
して布陣を変えた。マケドニアの政党は金曜日に挙国一致政府を作
ることで合意し、それには野党のアルバニア系の「民主的進歩党」
も加わる。
・パレスチナは米国政府の強力な介入で近東紛争に対処しようとし
ている。PLOの代表ハッサン アブデル ラーマンは、パレスチナ
大統領アラファトの代理人が来週米国外相パウエルとの会談を行な
う、と発表した。土曜日にはイスラエルのヘリコプターが西ヨルダ
ンランドでファタハの車両を攻撃した。イスラエルが行方を追求し
ていたファタハの活動家とパレスチナ人警官1人が死亡し、パレス
チナ人15人が怪我をした。ラマラでは数千人のイスラム過激派のハ
マス支持者がイスラエルの暴力的な対処に抗議してデモを行なった。
ガザ地区ではイスラエル戦車がユダヤ人居住地区近くで武装パレス
チナ人に向けて砲撃を行なった。


5月11日(金)

(ベルリン)数ヶ月に及ぶ駆け引きの末、年金改革案は最終的に決着した。連邦議
会と連邦参議院は金曜日、社会民主党と緑の党の連立政府による法案を修正の上、
国の老齢年金を補完するものとして、承認した。それによれば、国は個人が追加し
て加入する老齢年金に毎年210億マルクを支出して助成する。また新しく高齢者向
けの基本的な社会保障が作られる。首相ゲアハルト シュレーダーは社会福祉政策
の歴史的な改革であると語り、年金生活者の年金が今後減額されることはない、と
断言した。キリスト教民主同盟の首脳部は、社会民主党とキリスト教民主同盟が連
立政権を構成している州には連邦参議院の投票では自由投票をすることを認めていた。

     その他のニュース
・ナチの元強制労働者が米国にあるドイツ銀行に対する集団訴訟棄
却により、首相シュレーダーは賠償金を迅速に支払うよう要請した。
彼は、米国ではこれ以上の訴訟を起こされないという完全な保証は
得られなかったが、連邦議会は夏休み前にドイツ企業に対して、賠
償金を支払い始めるのに必要な法的措置をとる、と確約した。
・秘密情報機関は電話、ファックス、電子メールを監視する際より
大きな権限を持つことになる。連邦議会は電気通信の秘密を制限す
る新しい法案を承認した。このいわゆるG10法ではとくに、情報の
保管に関する規定が強化された。また電話の監視は技術の進歩に合
わせて行なわれることになった。連邦憲法裁判所が1999年に旧法
の規定に異議を唱えたため、新しい法律が必要となっていた。
・ルフトハンザと操縦士組合コックピットはストを終わらせるため、
できるだけ早く交渉を再開する方針である。週末には賃金交渉が行
なわれる見込みであるが、具体的な日程は発表されていない。会社
側は、新たなストの動きはない、としている。一方組合側は、全く
新しい提案がなければストを行なう、としている。同社の飛行機は
スト後遅れをだしながらも運行されている。金曜の正午までに、約
百便が欠航した。


5月13日(日)

(ローマ)イタリア国会選挙は高い投票率であった。多くの投票所で投票するまで
最高2時間必要であった。そのため投票時間は内務省の指示で22時まで延長された。
最終世論調査の結果では、与党中道左派連合「オリーヴの木」(筆頭候補フランチ
ェスコ ルテーリ)と中道右派連合「自由の家」(賛否両論のあるマスコミ経営者
シルヴィオ ベルルスコーニ)がつばぜり合いをしている。ベルルスコーニは
1994年にしばらく首相を務めたことがある。現政権の首相ジュリアーノ アマー
トは立候補を断念した。
上下院のほか、ローマやミラノを含む多くのイタリアの都市では市長選挙も行なわ
れている。

     その他のニュース
・スペインのバスク地方で厳重な警備の下、地方選挙が行なわれた。
第1回の集計では、1980年から政権の座にある穏健派の民族主義
政党は最大勢力を維持するものの、過半数には届かない模様である。
バスク内務大臣によれば、民族主義政党は75議席のうち31から33
を獲得し、親スペインで保守派の国民党と社会党は連立政権を作る
ことを目標にしていたが、それは実現しない見通しである。これに
よって地下組織ETAを含むバスク独立派が鍵を握ることになるかも
しれない。
・マケドニアに挙国一致政権を作るという試みは最後の段階で延期
となった。アルバニア系少数派の「民主福祉党」の代表が首相ゲオ
ルギエフスキの演説を批判し、彼がアルバニア解放勢力を壊滅させ
なければならない敵と呼んだことを攻撃している。この問題に関し
ては英米大使館も介入した。新閣僚の調整は無期限に延期された。
・近東紛争解決のために、パレスチナは外国、特に米国の仲介を求
めている。PLO副議長アッバースは米外相パウエルとの会談のため
ワシントンに、パレスチナの交渉団長エレカトは国連事務総長アナ
ンとの会談のためニュー ヨークに飛んだ。パレスチナの閣僚シャ
ースはイスラエルとの交渉再開の条件として西ヨルダンランドとガ
ザ地区のユダヤ人住居の建設中止をあげている。その地域ではイス
ラエル軍戦車が難民収容施設を砲撃してパレスチナ人1人が死亡し
た。イスラエル人数名がパレスチナの警察署前で射殺された、との
情報もある。


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