5月28日〜6月3日のドイツのニュース

5月28日(月)

(ベルリン)キリスト教民主同盟は、党内で問題になっていた移植前診断に関する
決定を下すのを延期した。同党主アンゲラ メルケルは、同党幹部は再生クローン
と人間の遺伝子を目的に応じて組み替えることを拒否する文書を出した、とも語っ
た。同党主代理ユルゲン リュトガースは、移植前診断を例外的に認めるように勧
めていた。この発言が党内からの強い反対を受けていた。キリスト教社会同盟でも、
試験管の中で生まれる胎児の遺伝子技術の研究に関する議論はまだ続いているが、
移植前診断はさしあたり認めない、と同党首エドムント シュトイバーは語ってい
る。

     その他のニュース
・社会民主党と緑の党は移住に関して全党一致の解決案を見いだす
努力をしている。社会民主党事務長ミュンテフェリングは議長団会
議で、年内に与党だけでなく、全党共同で法案を提出できるのが望
ましい、と語った。キリスト教民主同盟、社会同盟はこの提案を受
け入れるかどうか態度をはっきりさせていない。首相シュレーダー
は移民に関する議論を選挙戦の争点にしないようと警告している。
社会民主党と緑の党の首脳は月曜午後に会談を開いて、今後の外国
人政策を決める予定について話し合った。産業界は専門的な技能を
持つ労働力不足のため、融通のきく移住規定を作るよう求めている。
・ハンブルク市議会議員選挙を4ヶ月後に控えて、内務大臣ヴロッ
クラーゲ(社会民主党、61歳)は辞任を発表した。彼はここ数週間
の働きぶりに対する批判の責任をとった。問題となったのは、市警
察の主要な役職の人事であった。彼はこの非難を根拠がないと否定
していた。声明の中で彼はハンブルクの報道各社を自分を敵対視し
ていた、と非難した。彼の後継者には同党の幹部ショルツが就任す
る。
・仏首相ジョスパンは独首相シュレーダーのEU改革案に反対した。
基本方針演説で彼は、国民国家による連邦という考えを支持し、シ
ュレーダーのEU共同の農業政策と組織的な支援を国を単位として行
なっていこうという提案を拒否した。彼は組織と機能を文書にする
EU憲法には賛成した。独外相フィッシャーは、多くの点でドイツと
同じ目標を持っていることが確認できて、今後のヨーロッパに関す
る話し合いを進めていく上で重要な進歩があった、と語った。


5月29日(火)

(ブダペスト)トルコはEUの外交および安全保障政策の構築を進めていく上で障
害となっている。トルコ政府はブダペストで開催されているNATO外相会談で、自
らの方針を堅持し、計画に上っているEUの特別編成部隊をNATOの組織に組み込む
ことを拒否した。ドイツ外相フィッシャーは、NATOが二に分かれることがあって
はならない、と警告を発した。
マケドニア紛争に関して、各国外相はスコピエで会談を再開するように迫った。た
だしアルバニア人反乱軍との交渉は行なわない、としている。バルカンの安定に今
後も貢献していく、との目標が会議の最後に出された声明で強調された。またボス
ニア平和維持軍SFORは、現在の2万1千人態勢から、10%削減されることになった。
一方コソヴォ平和維持軍KFORはそのままの維持される。

     その他のニュース
・イスラエルとパレスチナの政府代表が安全保障会議のためラマラ
に集まった。パレスチナ側の情報によれば、米国代表も参加した。
外交交渉による近東紛争解決に、暗殺と砲撃で少なくとも6人が死
亡した事件で暗雲がたれ込めている。ヘブロンではユダヤ人住民が
パレスチナ人を攻撃した。露外相イワノフは来週パレスチナ大統領
のアラファトと会談を行ない、特別大使を派遣すると発表した。ガ
ザ地区では武装パレスチナ人が西側報道関係者2人を数時間監禁し
た。
・マケドニア政府の危機に仲裁が行なわれる見通しである。EU外務
委員のソラナの仲介で、政府内部でのアルバニア人独立派の扱いを
めぐる対立で譲歩が行なわれる見込みである。大統領トライコフス
キは、アルバニア人政党と武装反乱軍の秘密合意は外国からの批判
にさらされ、無効であるとの宣言が出されている、と発表した。こ
のおかげで、アルバニア人政党は面目をつぶされずにすんだ。同国
北部のマテイチェ村では反乱軍に対する攻撃が続行されている。一
般市民2千人が戦闘地域から避難した模様である。反乱軍は首都ス
コピエへの攻撃を拡大する、と発表している。
・EU内相、法相会談で、亡命と難民政策に関する基本方針に合意が
得られた。戦闘地域からの難民が3年間滞在する権利を認めるとい
う計画が承認された。この期間に永住亡命権の申し立てを行ない、
法的な決着をつけることになる。亡命が却下された場合、故国に送
還されることになる。人間の密輸に関しては、業者に6から8年の
拘禁刑を課すことで合意した。一方重大な人身売買では統一の刑罰
を決められなかった。


5月30日(水)

(ベルリン)連邦議会はナチ時代の元強制労働者に対する賠償金の支払いに道を開
いた。議会は経済界が支払いの条件としていた、ドイツ企業に対する法的安全性を
確認した。超党派による提案が過半数の賛成で承認された。キリスト教民主同盟、
社会同盟所属の議員数人が反対した。連邦首相ゲアハルト シュレーダーは2年間
にわたる交渉を粘り強く行なった関係者全て、特にドイツ政府側委員のオットー 
グラーフ ラムスドルフに感謝の言葉を述べた。また彼は、ドイツは過去に犯した
恐ろしい犯罪を自覚しているということを世界中に示している、とも述べた。連邦
政府と経済界は、約150万人の強制労働者の賠償のために、それぞれ50億マルク
を支払う義務を負っている。

     その他のニュース
・EUはEU拡大後の東欧の人材受け入れまでの猶予期間をめぐる対
立の調停を行なった。議長国のスウェーデンの発表によれば、ポル
トガルは条件を撤回した。今までスペインが、新規加盟後7年間し
て就労希望者を受け入れるというドイツとオーストリアの要請に反
対の態度を撤回していた。
・マケドニア政府内の対立の調停後、EUとNATOは同国に具体的な
改革を行なうように求めた。スウェーデン外相リンドはNATOとEU
の外相会談後、同国政府が遅くとも6月終わりまでに少数派を守る
ために合意した改革案を実行に移すよう期待している、と語った。
EU外務委員のソラナは火曜日にマケドニア政府内で対立していた政
党間の調停を行なっていた。一方政府軍とアルバニア人反乱軍の戦
闘は、同国北西部にあるマテイチェ村周辺で続いている。
・石油会社エルフの賄賂の支払いをめぐる第1回訴訟は、仏元外相
デュマ(78歳)他4人に対する自由刑で、幕をおろした。デュマは
パリ刑事法廷から2年間の執行猶予つきの6ヶ月間の懲役、約60万
マルクの罰金を言い渡された。彼は、元愛人のデヴィエ・ジョンク
ールがエルフ社から得た2千万マルクを受け取った、と裁判官は判
断した。デュマはミッテラン大統領のもとで2度外相を勤めた。


5月31日(木)

(ベルリン)国会の基本方針の討論で連邦首相ゲアハルト シュレーダーは、遺伝
子検査と胎児の研究を限定された範囲で許可することに賛成した。本会議で彼は、
胎児保護法の性急な改正には反対した。彼の意見に、自由民主党は賛成したが、連
立与党の緑の党は反対した。国会の全会派に、人間の遺伝形質の研究を進めること
に反対のものも賛成のものもいる。遺伝子技術の可能性と危険性に関する議論では、
どの会派の演説者も、科学に対しては道徳的な限界を設けなければならないことは
強調した。しかしシュレーダーは、遺伝子研究が極めて重い病気の治療や症状の軽
減に道を開く可能性もあることを強調し、治療倫理は天地創造に対して払うべき敬
意と同じような敬意を受けてしかるべきだ、とも語った。

     その他のニュース
・銀行の経営危機の結果、野党はベルリンで住民請願に乗り出す方
針である。民主社会党、緑の党、自由民主党は議会を解散し、選挙
を行なうよう求めていくことで合意した。現市長ディープゲン(キ
リスト教民主同盟)は辞任を拒否しており、予算の抜本的な削減を
行なうと予告している。連邦信用制度監督庁はこの銀行には40億マ
ルクの資金が必要だと見ているが、市政府はこの数字は危機全体の
規模を表わしたものだ、と語っている。ベルリン市は合わせて700
億マルクの負債を抱えている。一方複数の政党からは、連邦もベル
リンの負債を負担すべきだ、との声が出ている。
・連立与党は労働政策を改革して、失業者数を減らそうとしている。
労相リースターは、賃金助成、出向従業員、職業紹介の規定を変え
ることを計画している。この規定は労使双方と、野党の批判を受け
ている。彼は来年1月1日から改革案を発行させたい、と語った。政
府は失業者数を2002年秋の連邦議会選挙までに、30万人減らして
350万人にしたい、としている。
・検察庁はキリスト教民主同盟の不正資金疑惑に関し、元首相コー
ル、テアリンデン、ヴァイラオホに対する背任容疑での捜査手続き
を中断する。これでテアリンデン、ヴァイラオホもコール同様訴え
られることはなくなった。


6月1日(金)

(ベルリン)連邦議会はドイツから国際コソヴォ平和維持軍に追加派遣をすること
に賛成した。それによれば、ドイツ国防軍の兵士は今後コソヴォとセルビアの緩衝
地域にも派遣される可能性が出てきた。同時にドイツ兵のコソヴォ平和維持軍への
派遣はさらに1年延長される。キリスト教民主・社会同盟はこの議論を利用して、
国防軍の予算不足に抗議の声をあげたが、政府の提案には賛成した。

     その他のニュース
・アルバニア人反乱軍とマケドニア平和維持軍は緊張の続く地域で
新たな戦闘を行なった。マケドニア北部のクマノヴォと北西部のテ
トヴォそれぞれの近郊で戦闘が行なわれた。この戦闘で交渉のため
の休戦が行なわれる可能性が低くなった。同国首脳部は改革と憲法
改正を行ない、アルバニア人集団により多くの権利を認める、と予
告した。
・連邦議会で野党は政府にドイツの経済成長が鈍化している責任が
ある、と主張した。キリスト教民主同盟の経済の専門家ヴィスマン
は、年次経済報告に関する議論で、ドイツはヨーロッパ最低である、
と発言した。一方産業省政務次官モースドルフは、脅かしたり、悲
観的な予想をして外国人投資家の投資意欲を削ぐようなことをしな
いように、と語った。
・連邦内務大臣シリーは、年末までにドイツへの移住に関する規定
を全面的に新たなものに変える方針である。移住問題は緊急に取り
組まなければならない課題で、キリスト教民主・社会同盟殿御有為
を取りつける努力を行なっている、過去の無秩序な移住受け入れは、
積極的な移住政策を行なって修正していかなければならない、など
と語った。


6月2日(土)

(テル アヴィヴ)パレスチナ人急進派による自殺テロが起って数時間後、イスラ
エル政府はパレスチナ人居住区の全面的な封鎖を行なうことに決定した。西ヨルダ
ンランドとガザ地区へ通じる道路全てが閉鎖された。ガザ地区に海側から入れなく
なったのは初めてのことである。パレスチナ大統領ヤセル アラファトは、ガザ地
区の飛行場の利用を禁じられた。
テル アヴィヴのナイトクラブで金曜日夜に行なわれた攻撃でイスラエル人の若者
18人と犯人が死亡した。百人を越える人が怪我をし、そのうち何人かは重傷であ
った。

     その他のニュース
・国連事務総長アナンと米国大統領ブッシュ、独首相シュレーダー、
外相フィッシャーはイスラエルで起きたパレスチナ急進派によるテ
ロを非難した。シュレーダーは、イスラエル首相シャローンに近東
危機を平和的解決する努力を放棄しないように求めた。金曜日から
イスラエルに滞在しているフィッシャーは犯行現場に花束を捧げた。
ノルトライン・ヴェストファーレン州首相クレメントはイスラエル
訪問計画を中止した。イスラエル首相シャローンは来週に予定して
いたヨーロッパ訪問を中止した。
・ネパールでは皇太子ディペンドラ(29歳)が家族内の対立から、
父親で国王のビレンドラ、母親アイショワリヤ、二人の姉妹、家族
数人を殺した。犯行後王位継承者であった彼は自殺をはかり、生命
にかかわる怪我を負った。噂によれば、ディペンドラと父親の間に
は私的および政治的な対立があった。国家評議会は皇太子を王に指
名した。しかし彼は昏睡状態のため、叔父のギャネンドラが職務を
引き継ぐことになる。
・中央アフリカ共和国の首都バンギでは、5日前のクーデタ計画の
後なお、政府側と反乱側の兵士の間で戦闘が行なわれている。現地
のラジオによれば、死者が路上にあふれており、多くの商店や家屋
が略奪されている、とのことである。以前ここを植民地としていた
フランスの首相ジョスパンは、対立する勢力に交渉を行なうよう呼
びかけた。月曜日には反乱側の兵士が大統領パタッセを大統領府に
襲撃したが、反撃され撤退していた。


6月3日(日)

(エルサレム)イスラエルはパレスチナ急進派組織ハマスとイスラムのジハードに
軍事的行動を取ると予告した。最初の行動は既に開始している、とイスラエルのラ
ジオ局は伝えている。内閣はそれに先立ち、金曜日にテル アヴィヴで起った20
人の死者を出した攻撃に報復することを決定していた。日曜日にはハマスの武装陣
営が攻撃を行なったとの声明を行なった。パレスチナ大統領ヤセル アラファトが
求めている戦闘停止に対し、13のパレスチナ人組織が反対声明を出した。ドイツ
外相ヨシュカ フィッシャーは近東滞在を延長し、紛争に参加している両者を仲介
する努力を行なっている。彼は、イスラエル首相アリエル シャローンとの会談後、
アラファトと2度目の会談を行なった。

     その他のニュース
・ズデーテンドイツ人会議は、チェコ政府への要求を出して閉幕し
た。来賓として演説したバイエルン州首相シュトイバーはチェコ政
府に、第2次世界大戦後に出されたベネシュによる命令の廃止を求
めた。この命令にはズデーテンドイツ人の追放と収容が指示されて
いる。この会議の参加者ベームはこの命令の撤回をチェコのEU加盟
の条件にするべきだ、と語った。
・物を運んだ帰り道、何も積まないトラックには、重量と排気ガス
に応じた通行税を課すべきだ、との意向を連邦交通相ボーデヴィヒ
は持っている。関連法案を夏休み前に閣議に提案する、と彼は語っ
た。現在トラックの3割は積み荷なしで走っており、交通省の予想
ではその数は今後15年間で70%増加し、道路の4分の1が空のトラ
ックで埋まりかねない、とも語った。
・原子力発電所廃止に関する電力業界の取り決めへの署名はまだ完
了していない、とドイツ原子力フォーラムは見ている。政府と工業
界の間では賠償責任に関する問題がまだ解決していない、と同フォ
ーラム議長マイヒェルは語った。また彼は原発を廃止することで合
意している工業界も連邦政府で政権交代があった場合には合意を破
棄する可能性もある、と語った。環境相トリティンは5月中旬、こ
の取り決めは成立し6月中には署名が行なわれることになる、と語
っていた。


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