６月４日〜１０日のドイツのニュース
６月４日（月）
（エルサレム）ドイツ外務大臣ヨシュカ フィッシャーは近東紛争仲介の努力を続
けている。パレスチナ大統領ヤセル アラファトとの2度の会談後、彼はイスラエ
ル外相シモン ペレスと再び会談を行なった。その間にも彼は、エジプトの首都カ
イロへ向かった。アメリカ外務大臣コリン パウエルは中米訪問を中止した。これ
は金曜日テル アヴィヴでイスラエルの若者20人が殺された爆弾攻撃に対応する
ためである。これはここ4年間で最も多くの犠牲を出した事件で、アラファトは休
戦を命じた。しかしガザ地区では既に新たな戦闘が始まっている。
その他のニュース
・ネパール王室での惨劇から3日、殺された王ビレンドラのもっと
も若い弟は怪我のため死亡した。国営通信社はディレンドラ シャ
アの死を報じ、犠牲者は10人となった。月曜日に新王となったギャ
ネンドラは3人からなる調査委員会を設置し、この殺人の背景を調
査させ、その結果を公表した。彼は甥の皇太子ディペンドラが重傷
を追って死亡した後、王位についた。ディペンドラの死後、数千人
の支持者が首都カトマンズの路上にでて、警察と路上で交戦してい
る。
・ペルーでは経済の専門家トレドが原住民系としては初めて大統領
に選ばれた。4分の3以上の開票が終わった時点で、彼は52%強の票
を集めた。対立候補ガルシアは48%弱であった。ペルー大統領は昨
年終わりにフジモリが退陣してから計画されていた。フジモリは南
米のこの国を10年間に渡って統治してきた。
・北京の天安門広場での大量殺戮の12周年記念日に、香港では数千
人が集まって犠牲者の追悼を行なった。約1万人のデモ隊が明るく
照らされたヴィクトリア公園に集まり、この事件を次の世代に伝え
ていくよう国民に訴えた。一方天安門広場は平穏であった。1989
年の天安門広場への武力投入では多くの死者がでた。中国政府はこ
の事件の解明を行なわず、犠牲者数は公表されていない。また中国
では、国の世論調査機関が国民の中に不穏な動きがあり、解雇や富
の不公平な分配をめぐって抗議活動が活発化する可能性がある、と
警告する報告書を発表した。
６月５日（火）
（ベルリン）外務大臣ヨシュカ フィッシャーは全体として見れば成果をあげた近
東訪問を終えて帰国した。彼はベルリン・テーゲル空港に到着してから困難だった
今回の訪問について、他国と協力して、恐ろしい悲劇が起るのを一時的ながら食い
止めることができたが、停戦合意がずっと守られることに期待を寄せている、と語
った。また彼は、仲介で果すドイツの役割をヨーロッパという枠組みの中での役割
である、と語った。一方イスラム急進派ハマスは、パレスチナ大統領ヤセル アラ
ファトの求めている全面的な暴力行使の中止を拒否した。ハマスは対イスラエルの
戦闘を占領地区に限らず続けていく、としている。
その他のニュース
・ノルトライン・ヴェストファーレン州首相クレメントはイスラエ
ルからの幹細胞の輸入を擁護した。彼は来れは先例と抵触しないが、
国民倫理審議会がこの問題を検討する、と語った。また、ドイツ学
術振興会の同意が得られれば、ボン大学で胚の幹細胞の研究を続け
ていく、と約束した。この問題については首相シュレーダーとも電
話で会談済みであることも明らかにした。同州の緑の党と自由民主
党は、州議会で遺伝子技術に関する基本方針を討論するように求め
た。連邦議会では緑の党と民主社会党がクレメントは既成事実を作
ろうとしている、と批判した。
・連邦購買者保護大臣キューナストは、遺伝子組み替えトウモロコ
シの栽培許可を取りあえず差し止めた。大臣と担当官庁はまず広い
範囲で客観的な究明を行なう必要があることで合意しており、遺伝
子組み替えがされたトウモロコシの品種アルトゥイスの許可に関し
ては今週中には決定がでない、と発表された。アルトゥイスは自由
に販売され、栽培される遺伝子技術で作られた初めての植物になる
かもしれない。
・ベルリン市の財政と政権をめぐる対立で、連立与党のキリスト教
民主同盟と社会民主党のますます激しく相手を攻撃している。市長
ディープゲンは、今週の火曜日に予定されていたベルリン市社会民
主党党首シュトリーダーとの会談を前に、同党はこの危機を党政略
の材料に使っていると非難した。一方、社会民主党首脳はディープ
ゲンに、予算問題解決のための財政面での計画全体を提示するよう
に求めた。連立を続行するかどうかはその回答次第である、と同党
はしている。野党は選挙を求める住民発議のために署名集めを土曜
日に始める方針である。
６月６日（水）
（エルサレム）イスラエルとパレスチナ人の間での休戦は、突発的なものを除けば、
4日間維持されている。ユダヤ系入植者数百人が西ヨルダンランドでパレスチナ側
を攻撃し、建物いくつかに放火した。イスラエルはパレスチナ人居住区の閉鎖を続
けており、アメリカはCIA長官ジョージ テネットを和平交渉実現に向け、近東に
派遣した。イスラエルの新聞報道によれば、ユダヤ人入植地の拡大をめぐる対立で
は解決の兆しが見えてきている。その新聞は、入植地をこれ以上拡大することはや
めて、整備を充実させていくことになる、と報じている。
その他のニュース
・ベルリン市長で同市キリスト教民主同盟党首ディープゲンは、社
会民主党に対し同市の連立政権に留まるように強く求めた。両者が
重要な会議と位置づけている話し合いを前に彼は、社会民主党との
同盟関係を維持するためにあらゆることを行うつもりだ、と語った。
市政府のキリスト教民主同盟側は、年間7から8億マルクの支出削減
を継続的に行ない、今後の展望を示す計画を作った。それによれば、
民営化をさらに推し進めることで、ベルリン市は10億マルク以上収
入を増やし、支出を削減することができる。
・キリスト教民主同盟党首メルケルは、中道派の政策を支持し、同
党内部で主導権を握り続ける意志を明らかにした。木曜日の同党の
小集会を前に、彼女は基本方針を説明し、国と市民の関係が最も重
要だ、と語った。メルケルは、移民政策を決定する予定の党大会で、
同党の新たな政治方針を説明することにしている。周囲は彼女がキ
リスト教民主同盟とキリスト教社会同盟の統一首相候補の問題につ
いても言及するのではないか、と期待している。
・ザクセン州首相ビーデンコプフは、友人のケルンの建築業者バル
トの飛行機を公務で少なくとも12回費用を払わずに利用した、と
「シュテルン」誌が報じた。同州首相官房はそれを認めている。二
人の関係は今開かれている州議会の調査委員会で調査される。一方
首相官房は、ビーデンコプフは賃貸料疑惑の責任をとって政府賓館
をひきはらい、私的に利用していた部屋を明け渡し、賃貸契約を廃
棄する、と発表した。
６月７日（木）
（ベルリン）ベルリン市の大連立政権内部での軋轢により、全政党が選挙を早期に
行なうことに賛成した。現市長エーベルハルト ディープゲン（キリスト教民主同
盟）は、夏休み後に選挙をおこなうことに賛成した。社会民主党は日曜日に特別党
大会を開いて、10年間にわたるキリスト教民主同盟との連立政府に終止符を打つ
方針である。社会民主党と緑の党の政治家たちは、ディープゲンに対する不信任投
票を行なって選挙を行なう可能性も残していた。社会民主党の事務長フランツ ミ
ュンテフェリングは民主社会党との連立政権の可能性はない、と語った。社会民主
党の筆頭候補には、会派長クラオス ヴォーヴェライトの名前が上がっている。
その他のニュース
・キリスト教民主同盟はベルリンで党小大会を開き、全員一致で移
住政策を承認した。この計画は移民を制限し、融和を図っていくた
めのものである。亡命権はそのまま維持するが、その濫用とは戦っ
ていくことになる。さらに移住手続きは迅速に行なうことになる。
その同党はドイツ人の労働力の質の向上よりも、移住を重視する方
針である。党首メルケルは基本方針演説で、経済政策と社会福祉政
策を同党の次期総選挙の争点としていくと発表し、同党が首相候補
問題で動揺しないように求めた。
・連邦労働施設の発表によれば、5月のドイツの失業者数は約15万
人減って370万人となった。昨年5月と比べると約７万人の減少で
ある。同施設副会長アルトは、景気の減速が労働市場に強い影響を
与えており、季節変動を加味した場合に失業者の数は増加している
ことになる、と語った。
・連邦農相キューナストは、自然農法を広げていくために資金を要
求していたが、その要求を蔵相アイヒェルがのんだ。両者の話では、
キューナストは今後2年間で自然農法育成のために3億3千万マルク
を得た。アイヒェルは以前、本来の農業省の予算の中で、この育成
資金をまかなうべきだ、としていた。
６月８日（金）
（フランクフルト アム マイン）ルフトハンザの賃上げ交渉が引き起こしたスト
ライキと飛行機の欠航には終止符が打たれた。仲介役を務めた元外務大臣ハンス・
ディートリヒ ゲンシャーは、妥協案がまとまったと発表した。それによれば操縦
士の固定給は今後2年間少なくとも14.8%上がることになる。その他会社が上げた
利益に応じて様々な割増金が、最初の1年は2ヶ月分の固定給相当額まで支払われ
ることになる。この契約は39ヶ月間有効である。労使双方はこの結果に満足して
いる。操縦士側はさらに総会を開いてこの決定を承認しなければならない。操縦士
組合コックピットは、組合員がこの提案を受け入れることに自信を持っている。
その他のニュース
・アイルランド国民は、国民投票でEUのニース条約を拒否し、EU
改革を進捗を阻止した。投票結果は、54%が反対票であった。EUの
東方拡大を推し進める基本方針を取り決めた条約は、加盟15ヶ国す
べての賛成が必要なため、さしあたり凍結される。一方スウェーデ
ンのEU理事会議長ペーションとEU委員会委員長プロディはともに、
東方拡大という目標は必ず実現しなければならないが、アイルラン
ド国民の異議は受け入れなければならない、と語った。
・ベルリン市でのキリスト教民主同盟と社会民主党の連立が崩壊し、
社会民主党と緑の党の連立政権が成立しそうである。社会民主党は、
現市長ディープゲン（キリスト教民主同盟）を来週失脚させ、自ら
の筆頭候補ヴォーヴェライトを新市長にする、と発表した。民主社
会党と緑の党は社会民主党を支援しており、それに賛成の方針であ
る。キリスト教民主同盟は今回の連立解消を、反ディープゲンの民
主社会党の支援を受けた、今までの連立相手に対するクーデタであ
る、と語った。市長は早期に選挙を行なう準備は出来ていると語っ
たが、他の党があげている９月23日案は拒否した。今回の騒動の
元を作った同党の元会派長ランドフスキーは、同市同党の副党首を
辞任した。
・英国首相ブレア率いる労働党は下院で絶対多数を守った。下院議
員659人のうち413人を労働党が獲得し、保守党は166議席に留ま
った。投票率は59%で80年代以降最低であった。ブレアは、英国
はEUにより積極的に関与していく、と語った。保守党党首ヘイグは
辞任すると語った。ドイツ首相シュレーダーはブレアにお祝いの言
葉を述べ、協力関係が維持できてうれしい、と語った。
６月９日（土）
（テヘラン）イランの改革派の大統領モハマド ハタミが再び大統領に選出された
ことが、正式に確認された。正式発表によれば、ハタミは投票の77%を獲得し、4
年前より8%得票を伸ばしている。経済学者アーマド タヴァコリが15.2%で第2位
の得票であった。他の8人の候補者は選挙戦には何の影響も及ぼさなかった。
ドイツ外相ヨシュカ フィッシャーはこの選挙結果を民主主義が根づいているとの
印象を与える、と評価し、ハタミはイランの開放と国際社会への参加を進めている、
と語った。
その他のニュース
・多くのヨーロッパの政治家は、アイルランドが国民投票でEUのニ
ース条約を拒否したことに驚いている。独首相シュレーダーは国民
投票結果を残念だが、この決定は尊重されねばならない、としなが
らも、EUの東方拡大が遅れることはない、と語った。外相フィッシ
ャーは、EUの未来に関する議論を続けていかねばならない、と語っ
た。EU理事会議長ペーションとEU委員会委員長プロディは、ヨーロ
ッパを拡大する日程には変更はない、と断言した。金曜日に行なわ
れた国民投票ではニース条約をアイルランド人の54%が拒否し、そ
れにより加盟15ヶ国すべての承認が必要なこの条約の発効はさしあ
たりなくなった。
・イタリア国会選挙から4週間たち、次期首相に任命されたベルル
スコーニは閣僚人事を発表した。大統領チャンピは彼に正式に組閣
を指示した。彼は既に閣僚名簿を提出した、と語った。彼の中道右
派政府には国民連合の元ネオ・ファシストや大衆迎合的な北部同盟
の党員が属している。
・マケドニア政府筋の情報では、アルバニア人反乱軍が首都スコピ
エ近辺まで攻め込んでいる。8百人ほどの兵士がスコピエ近郊のア
ラチノヴォに侵入し、政府軍がその町を包囲している。EU外務委員
のソラナは両者に対話を呼びかけている。彼は以前おもだった政治
家と戦闘終結に向けて話し合いを行なっていた。一方、ヨーロッパ
14ヶ国の首脳はマケドニア政府との連帯を表明し、この地域の問題
解決には少数民族の権利の承認が必要である、との声明を出した。
６月１０日（日）
（ベルリン）ベルリン社会民主党と90年同盟・緑の党はそれぞれ日曜の特別党大
会で、ベルリンの大連立政府解消後にどのように対処するかを話し合った。社会民
主党幹部は、現市長エーベルハルト ディープゲン（キリスト教民主同盟）を緑の
党と民主社会党とともに不信任案に賛成して、解任するよう提案し、その採決が行
なわれる。土曜日にはベルリンで選挙の早期実施を求める署名活動が始まり、市民
の関心が高まっている。緑の党、自由民主党、民主社会党が支持しているこの提案
は、議会の解散を求める住民発議を実施しようというものであり、そのためには
5万人の署名が必要である。
その他のニュース
・ザクセン州では地方選挙が始まった。多くの市や地方自治体で、
郡長と市長を選出する選挙が行なわれる。州都ドレスデンでは上級
市長ヴァーグナー（キリスト教民主同盟）が3人の対立候補を迎え
撃つ。州首相ビーデンコプフがいわゆる賃貸料問題で激しい批判を
受けているため、選挙の行方は特に注意深く見守られている。ビー
デンコプフはドレスデンの官舎の部屋代をあまりに少なくしか払っ
ていなかった、との非難を受けている。ザールラント州とラインラ
ントプファルツ州でもこの日に選挙が行なわれる。
・ガザ地区ではイスラエル軍戦車の攻撃で3人のパレスチナ人が殺
され、他に3人が怪我をした。戦車はガザ市近くのユダヤ人入植地
ネツァリム近郊の多くの家屋を攻撃した。イスラエル軍の情報によ
れば、これはパレスチナ人が入植地近くの検問所を襲ったことに対
する報復である。CIA長官テネットは休戦と両者の和平会談再開の
ために努力をしている。日曜日には両者の代表による会談が予定さ
れている。
・イランの穏健派大統領ハタミ（57歳）の再選はドイツでは一致し
て歓迎されている。大統領ラオはお祝いの電報を打ち、今回の圧勝
はハタミの改革政策が承認されたものだ、と語った。外相フィッシ
ャーは、イランの民主化をさらに推し進めていくことに賛成の声が
上がったものだ、と語った。テヘランでは土曜日夜に選挙結果が公
表され、約75%がハタミに投票したことが判明した。これは約70%
の得票を得た1997年の結果を上まわるものであった。