6月11日〜17日のドイツのニュース

6月11日(月)

(ベルリン)ベルリンキリスト教民主同盟は、決定に数日間かかったものの、でき
るだけ早期に選挙を行なうことに賛成する、と同党党首アンゲラ メルケルは幹部
会議のあと発表し、同党は選挙の実施を後送りにしようとしているという印象を与
えないようにしたい、と語った。社会民主党、民主社会党、緑の党は既に9月23日
に選挙を実施するよう提案している。大連立政権から離脱した社会民主党は緑の党
と民主社会党の支援を得て、現ベルリン市長エーベルハルト ディープゲンおよび
キリスト教民主同盟所属の市閣僚に対する不信任案提出を計画している。その場合
土曜日に選挙が行なわれる可能性もある。社会民主党の市長候補クラオス ヴォー
ヴェライトは、同党が民主社会党と同じ歩調を取ることを擁護した。

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・連邦首相シュレーダーは原子力発電からの撤退という連邦政府の
意志を今一度明言した。彼はいわゆる原発廃止合意への署名を行な
った後、ドイツは核エネルギーから撤退するだけでなく、天候に影
響を与えず、安定した電力供給を行なうための将来の見取り図を作
る、と語った。政府と電力業界の間で結ばれた原発廃止合意は首相
府で署名が行なわれた。これはドイツの全ての原発が、32年間の運
転期間中に作り出せる量に相当する量の電力を実際に作ることが認
められている。キリスト教民主同盟は、政権交代が行なわれた場合
にはこの合意を白紙に戻す、と予告している。
・ザクセン州キリスト教民主同盟は市長および郡長選挙で最大勢力
を守り抜いた。18郡のうち14郡で同党の候補が第1回投票で当選し
た。特別市のドレスデン、ホイアースヴェアダ、ツヴィッカオを含
む54自治体では第1回投票ではいずれの候補も絶対過半数に達しな
かったので、2週間以内にもう一度投票が行なわれる。ドレスデン
では社会民主党、民主社会党、緑の党からも支持を受けた、市民主
導の自由民主党の候補者ロスベルクが47%の得票で第1位であった。
現市長ヴァーグナー(キリスト教民主同盟)は43%ほどであった。
・小売業の警告ストライキはオーバープファルツで幕をあけた。こ
のストは百以上の支店を持つスーパーマーケット・チェーン「ノル
マ」の出店を阻止するためのものである。第3次産業の労働組合
verdi.は警告ストを強化し、数日後には抗議活動をラインラント・
プファルツ州、バーデン・ヴュルテンベルク州、ニーダーザクセン
州、ザールラント州でも行なう、と予告した。verdi.は5.5%の賃上
げを求めている。小売業界は高すぎるとして、これを拒否している。


6月12日(火)

(フライブルク)ドイツとフランスは、EUニース条約をアイルランド国民が拒否
してもなおEU拡大計画を進める決意を固めている。ドイツ首相ゲアハルト シュレ
ーダーは、ニース条約は修正しない、とフライブルクで行なわれた独仏首脳会談後
語った。フランス大統領ジャック シラクは、EU拡大は計画通りの日程で行なう、
と強調した。二人はEUに対し、ミサイル技術をより厳しく管理する計画で主導的立
場を取り、環境保護に関してはっきりした態度を取るよう求めた。また両国政府は
人種主義と外国人排斥運動との闘いでは、同じ対策をとることで合意した。

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・フランス国民議会は過半数の賛成でEUニース条約を批准した。
首相ジョスパン率いる与党左翼連合だけでなく、大統領シラクの保
守派の多数も賛成した。フランスはこれにより、デンマークに続い
て、ニース条約を批准した2番目の国となった。アイルランドは先
週金曜日、EU条約を国民投票で拒否し、EU改革を当面阻止した。
この条約が法的に有効になるためには、EU加盟15ヶ国全てが賛成
する必要がある。
・ハンガリーは、東欧のEU加盟希望国で初めて、EUが労働市場を
開放するまでに猶予期間を置くことを受け入れた。これはEU加盟
の突破口になる、と同国外相マルトニーはEU外相会談に、加盟希
望12ヶ国の外相とともに参加して、語った。ドイツとオーストリ
アの要求で、EUは東欧の労働者に労働市場を開放するまで、7年ま
での猶予期間を置く方針である。
・米国大統領ブッシュはヨーロッパ人に対し、ミサイル迎撃網と環
境保護に関して、建設的で開かれた対話を行なうよう呼びかけた。
スペイン首相アスナールとの会談後も、ブッシュは態度を変えず、
京都議定書を拒否した。また、1972年のミサイル迎撃網禁止条約
は冷戦の遺物であり、新たな脅威に対応する戦略的な解決策を作る
ための障害になっている、と語った。彼は水曜日にはブリュッセル
のNATOを訪問する。


6月13日(水)

(ベルリン)ベルリン市で社会民主党と緑の党の連立政府が成立する。現市長エー
ベルハルト ディープゲンの罷免予定日を3日後に控え、社会民主党と緑の党はベ
ルリンの暫定政府の人事問題で合意した。それによれば、社会民主党は市長のほか
4閣僚を、緑の党は3閣僚を出すことになっている。両党は遅くとも土曜日までに
閣僚一覧表を提出する方針である。民主社会党が後押ししてもなお少数派の政権の
目標は、同市の財政問題の解決である。両党は9月23日に選挙を行なう意向を変え
ていない。

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・民主社会党は水曜日、壁建設に関する党首代理ポルシュの発言で、
激しい攻撃を受けた。彼は40年前のベルリンの壁の建設を歴史的に
は納得でき、また合法的なものであったと発言したが、これをキリ
スト教民主同盟、自由民主党、緑の党は、壁の建設を擁護する発言
を行なっても、ポルシュを含め誰の利益にもならない、非難した。
しかし、ポルシュ以外の同党幹部は、過去を克服するために公式に
釈明することが望ましい、と語った。ベルリン自由民主党は民主社
会党と緑の党とともにベルリン市議会選挙を早期に行なうよう署名
活動を行なっている。
・閣議は2002年連邦予算案を承認した。蔵相アイヒェルの提案は、
支出を1.6%増やし約2480億ユーロにする、というものである。最
大の支出は労働と社会福祉関係で、交通、建設、住居分野の支出が
それに続いている。新たな負債は210億ユーロに減る。開発援助庁
の予算をめぐる論争は解決した。アイヒェルによれば、各省庁は
2002年は1億ユーロの予算を同庁に認めることで合意した、と語
った。
・連邦通常裁判所は、専業主婦が離婚後こうむる不利益を解決した。
判決によれば、結婚中に家事と育児にたずさわり、離婚後初めて職
につく女性は、いまより高額の扶養費を受け取ることができる。こ
の判決が今後も有効か、現在の扶養費の支払い額の変更を求める訴
訟が行なわれるかはまだ未定である。


6月14日(木)

(ベルリン)ベルリン市長エーベルハルト ディープゲン(キリスト教民主同盟)
退陣を2日後に控えて、社会民主党と緑の党は暫定市政府を作るための連立協定に
署名した。その主な内容は、選挙の準備、ベルリン市財政と苦境に陥っている銀行
経営の健全化である。これに先立ち両党はディープゲンに対する不信任動議を市議
会に提出した。不信任動議は土曜日に可決される。この動議を可決するためには、
民主社会党の賛成も必要である。キリスト教民主同盟が反対票を投じても、9月23
日に選挙を行なうことを内容とする提案を議会は可決する。新聞報道によれば、デ
ィープゲンはキリスト教民主同盟の筆頭候補から退く、とのことである。

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・民主社会党幹部は、ベルリンの壁の建設に関する不適切な発言を、
7月初旬に開かれる幹部会の決議で非難する方針である。ただし8月
13日の壁建設40周年の釈明は問題にしない、と同党首ツィマーは語
った。キリスト教民主同盟と自由民主党は、同党の党首代理ポルシ
ュが、「壁の建設は歴史的には納得でき、また合法的なものだ」と
語ったことを非難していた。また同党副党首代理デームは、大企業
や大銀行を濃く経過するように求めているが、これは新たな対立の
火種になるかもしれない。彼の党友メクレンブルク・フォアポメル
ン州副首相ホルターはこの提案を失策だ、と評している。
・保険医と健康保険組合は共同で医薬品の値上げに反対する方針で
ある。厚生大臣シュミットは、保険医と健康保険組合の代表と会談
をした後、医薬品に関する命令を出すために、目標となる具体的な
基準値を週ごとに設定することで合意した、と語った。厚生省の情
報によれば、3月末での医薬品の価格は昨年と比べて9.7%上昇して
いる。
・連邦大統領ラオはプロテスタント教会会議で、ノルトライン・ヴ
ェストファーレン州首相クレメントの遺伝子技術促進の方針を批判
した。クレメントは胚幹細胞の輸入を行なうことで人間の尊厳を利
用し、胚の研究をしても良心や憲法に触れない、と考えている、と
ラオは語った。教会の代表も同じ見解を述べた。クレメントは土曜
日に自分の考えを同じ教会会議で述べることになっている。移民問
題と教会再一致運動がこの会議の主要議題となっている。1万人以
上の人がフランクフルトのレーマーベルクで行なわれた教会再一致
運動の祝福の祭典に参加した。


6月15日(金)

(イエテボリ)スウェーデンで開かれているEU首脳会談で、加盟各国はEUの迅速
な拡大に賛成した。各国首脳は、拡大の方針に逆行することはできない、との声明
を出した。ドイツ首相ゲアハルト シュレーダーは、EUは今年終わりまで加盟希
望国との交渉を中断する意向であるのを確認した。イエテボリでの会議ではデモ隊
が警官隊と衝突し、その際怪我人が多数生じた。治安維持軍がデモ隊数百人を一時
逮捕した。
EU理事会議長でスウェーデン首相ヨーラン ペーションはこの騒動を「民主主義
にとっての危機」であると評した。

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・ロシアが懸念を示しているにもかかわらず、米国大統領ブッシュ
はNATOの東欧拡大を推進する方針である。来年プラハで開かれる
NATO首脳会談では、米国は他の同盟国と共同で具体的な決定を下
したい、と彼は訪問先のワルシャワで語った。また、NATOはロシ
アの敵ではなく、彼はロシア政府を協力者であると見ている、とも
語った。一方彼はポーランド大統領クワシニエフスキから、ミサイ
ル迎撃計画への協力を得ることに成功した。クワシニエフスキは欧
州に米国が兵力を持つことは避けられない、と見ている。土曜日に
はブッシュはスロヴェニアの首都リュブリヤーナでロシア大統領プ
ーチンと初めての会談を行なう。
・数千人のパレスチナ人が西ヨルダンランドで、米国CIA長官テネ
ットの仲介で行なわれようとしている和平計画に抗議のデモを行な
った。パレスチナ側の情報によれば、デモの最中に約20人のパレス
チナ人がイスラエル兵の銃撃で怪我をした。米国は昨年9月から続
いている近東紛争に終止符を打つ計画である。エルサレムではイス
ラエルとパレスチナの和平の専門家が、米国の計画を実行するため
の次の段階について話し合いを行なっている。この計画は、イスラ
エルには軍をパレスチナ人自治区から撤退させること、パレスチナ
には戦闘的なパレスチナ人を逮捕することを義務づけている。
・ベルリン市政府の政権交代を明日に控え、それを支持している民
主社会党は旧社会主義統一党時代との違いを鮮明にした。同党のベ
ルリン党大会で参加者に示された提案には、旧東ドイツ時代の高い
政治目標を追求したことで人権侵害が発生したが、いかなる国家も
市民に自由な通行や旅行をさせない権利は持っておらず、もちろん
それを暴力的に行なうことはできない、それゆえベルリンの壁のと
ころで人が死んだことはいかなる手段によっても正当化できない、
と記されている。この文書をだすことで民主社会党は、社会民主党
が要求していた、旧社会主義統一党の後継政党として旧東ドイツ時
代の不法行為と距離を取ることを行なうことになる。


6月16日(土)

(ベルリン)社会民主党と緑の党は、民主社会党の支持を受け、ベルリンでの政権
交代をなしとげた。両党は長い間市長を務めたエーベルハルト ディープゲン(キ
リスト教民主同盟)を不信任投票で退陣させ、社会民主党の議員団長クラオス ヴ
ォーヴェライトを新市長に選出した。ヴォーヴェライトは89票の賛成を得たが、
これは社会民主党、民主社会党、緑の党に所属する議員のうち3人が彼に投票しな
かったことになる。78人が反対、棄権2票であった。その他の閣僚として、社会民
主党から5人、緑の党から3人が選ばれた。これに先立ちディープゲンとキリスト
教民主同盟の4人の閣僚は不信任決議でリコールされていた。新閣僚は3ヶ月だけ
その職につき、選挙を行なう準備をする方針である。

     その他のニュース
・EU加盟国の首脳はイエテボリでの会談で、EU拡大の日程を決定
した。それによれば最も加盟の準備が進んでいる国とは、来年終わ
りまでに交渉をまとめることになっている。新加盟国のうち最初の
国は2004年欧州議会選挙には参加することになる。その他、EUが
近東紛争解決のためにより大きな役割を果たすことが決められた。
この首脳会談に暴力で抗議する人々がいたが、各国首脳は政治的な
暴力に対策を共同で練ることを決めた。
・EU加盟希望国はEU首脳会談でEU拡大が決定されたことを歓迎し
た。ポーランドはこの決定を知って安心した、と同国首相ビゼック
はイエテボリで語った。スロヴェニアの欧州担当相バブカルは、今
回の声明は期待以上に明確なものとなった、と語った。チェコとハ
ンガリーの代表も、EU拡大の計画が以前よりも具体的になったこと
を歓迎した。EUは現在、加盟をめぐって12ヶ国と交渉を行なって
いる。
・米国大統領ブッシュと露大統領プーチンは初めての会談を行ない、
安全保障問題に対する考え方の違いはあるものの、協力体制を作っ
ていくことで合意した。プーチンは会談後、相互関係を拡大する上
で十分な土台ができたが、米国のミサイル迎撃網を制限するABM条
約は堅持する、ブッシュは時代遅れと呼んだこの条約は世界の安全
保障の土台である、と語った。一方ブッシュは安全保障と貿易の問
題で、今後大臣協議を行ないたい、と語った。プーチンは会談後ベ
オグラードを訪問し、ブッシュは帰国した。


6月17日(日)

(ベルリン)ベルリン市政府では政権交代が行なわれたのを受け、キリスト教民主
同盟と民主社会党は同市の市議会選挙の筆頭候補をそれぞれ指名した。新市長クラ
オス ヴォーヴェライト(社会民主党)に対抗して、民主社会党は連邦議会元議員
団長グレゴール ギュージーをたてた。キリスト教民主同盟はベルリン議会の議員
団長フランク シュテフェルを選んだ。同党党首アンゲラ メルケルは民主社会党
の政権参加に警告し、民主社会党は今だに旧社会主義統一党時代の不法行為を完全
に払拭したわけではない、と語った。連邦社会民主党の党首代理ヴォルフガング 
ティールゼは民主社会党との協力関係に対する批判を退け、キリスト教民主同盟は
民主社会党に対する不安を利用して、権力を維持しようとしている、と語った。

     その他のニュース
・連邦政府は、1953年6月17日に旧東ドイツで起き、そして失敗
に終わった労働者の蜂起の追悼式を行なった。この式典には新ベル
リン市長ヴォーヴェライト(社会民主党)も参加した。式典の後、
彼は民主社会党に、旧社会主義統一党時代の不法行為と距離を統領
に求めた。キリスト教民主同盟党首メルケルと自由民主党党首ヴェ
スターヴェレはこの記念日の声明の中で、社会民主党と民主社会党
がベルリン議会で手を組むことを批判した。この労働者の蜂起は工
場の生産ノルマの引き上げに反対して起きたもので、ソ連の戦車を
使って鎮圧された。
・テューリンゲン州首相フォーゲルは、2004年までに総額400億
マルクの緊急援助計画をドイツ東部の各州に対し行なうように要請
した。彼は、この400億マルクは東部に対して支払われることにな
っている経済再建のための連帯協定IIの一部と考えてよい、と語っ
た。東部の再建は来週末に行なわれる首相シュレーダーと各州首相
の会談の主要議題でもある。
・フランクフルトのヴァルト競技場で開かれていた第29回プロテス
タント教会会議は終わった。水曜日からのこの会議には10万人の参
加者がいた、と主催者は見ている。この会議では遺伝子技術に関す
る論争が注目を集めた。2年後にはプロテスタントとカトリック共
同の教会会議がベルリンで行なわれることになっている。


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