7月2日〜8日のドイツのニュース

7月2日(月)

(ベルリン)民主社会党はベルリンの壁が犠牲者をうんだことを後悔はしているが、
同党の母体になった社会主義統一党が犯した不正に対する謝罪は行なわない方針で
ある。同党の首脳部は圧倒的多数の賛成で、旧東ドイツの独裁政党であった社会主
義統一党が行なった不正とは、同党は一線を画す、との声明を承認した。旧東ドイ
ツ首脳部の行なった不正は、理想や高い目標があったからといって、正当化できな
い、謝罪の言葉は壁の所で亡くなった人々との対話では重要な役割は果たさない、
と同党幹部のガービ ツィマーは記者会見で語った。

     その他のニュース
・キリスト教民主同盟とキリスト教社会同盟の幹部が参加して開か
れたベルリンのアレクサンダー広場での選挙対策の集会は、大規模
な抗議行動によって中止された。キリスト教社会同盟党首シュトイ
バーと、キリスト教民主同盟党首メルケルは、卵とペットボトルを
投げつけられた。
・政府の厳しい支出削減の方針に反対して、ニーダーザクセン州首
相ガブリエルは同党の幹部から叱責を受けている。社会民主党党首
で首相のシュレーダーは、景気のてこ入れのための追加資金の要求
を拒否し、彼は明確にこれを自分の方針であるとしている、と事務
長ミュンテフェリングは語った。一方ガブリエルはシュレーダー批
判を和らげ、自分は国の負債を増やしても景気対策を行なうべきだ、
と言いたかったわけではなく、負債をなくすための日程を再考すべ
きだ、と言いたかったのだと発表した。
・いわゆるグリーンカードが11ヶ月前に導入されて以来、8千人以
上の外国人コンピューター技術者が、ドイツで仕事をしている。連
邦労働省政務次官アンドレスは、この緊急対策はすでに情報技術の
分野の労働市場を活性化しており、技術者の約21%がインド人、
15%が旧ソ連の各国人、9%がルーマニア人である、と語った。グ
リーンカードは2万人分発行される可能性がある。


7月3日(火)

(モスクワ)乗客143人をのせたロシアの旅客機がシベリアで墜落した。通信社は、
動機はレーダーには捉えられていない、とのモスクワの災害救助省の発表を伝えて
いる。報道によれば、墜落時点はイルクーツク市の近くで、エカテリンブルクから
ウラジオストックに向けて飛行中であった。救助隊は事故現場に向かっている模様
である。

     その他のニュース
・ユーゴ元大統領ミロシェヴィッチは、国連戦争犯罪法廷で自分に
対してかけられている容疑に関して態度表明をするのを拒んだ。彼
は、政治的な道具であり、違法なものだ、と第1回公判で語った。
彼は特に1999年のコソヴォ戦争で人間性に対する犯罪を犯したと
されている。国連側の主席検事デル ポンテはボスニアとクロアチ
アでの戦争の最中の大量殺人での訴訟も検討している。ミロシェヴ
ィッチは国連戦争法廷で責任を問われるもっと国家元首第1号であ
る。彼は先週木曜日にセルビア政府によってデン ハーグへ引き渡
されていた。同法廷は8月終わりまで審理をつづける予定である。
・マケドニア政府軍とアルバニア人反乱軍の間で再び戦闘が起って
いるため、EU特別大使レオタールと米国特別大使パルデューは初め
て同国大統領トライコフスキと今回の紛争の平和的解決に関する話
し合いを行なった。会談後レオタールは、政治改革を実行するため
の、前与党が参加する対話再開に関し、有意義な話し合いを行なっ
た、と語った。マケドニア北部では再び戦闘が起った。戦略的に重
要なラドゥーサ村近辺の地域で、戦闘が起きたことが報道されてい
る。
・EU委員会は米国企業2社の合併を阻止し、史上最大の合併を実現
させなかった。ジェネラル エレクトリック社によるハニウェル社
の買収は航空機・宇宙ロケット製造での競争を大きくさまたげる、
と競争政策担当モンティはその理由を述べた。米国当局はこの合併
を承認していた。アメリカ財務省長官のオニールはヨーロッパの決
定を批判し、修正を求めた。


7月4日(水)

(ベルリン)元連邦首相ヘルムート コールに関する旧東ドイツ国家公安局、いわ
ゆる秘密警察の文書は、彼の同意がなければ公表されないことになった。ベルリン
行政裁判所が第1審でこの決定を下し、その結果国家公安局文書庁を相手取ってコ
ールが起こしていた訴えを認めたことになる。長年旧東ドイツ国家公安局により盗
聴されていたコールは、私的情報に関する権利が損なわれることになる、と裁判で
訴えていた。今までの裁判ではその時代の重要人物の場合には、個人情報の保護よ
りも、国家公安局の活動にで得られた情報に対する国民一般の関心が優先されていた。

     その他のニュース
・連邦政府の移住問題委員会は10ヶ月間の活動を経て、報告書を提
出した。その中では、ドイツは移民国家であり、出生率の低下から
見て毎年少なくとも5万人の外国人労働者の移住を必要としている、
とされている。首相シュレーダーはすべての企業に対し、移民に関
する新しい規定を支持するように訴えた。内相シリーは、9月に法
案を提出すると予告した。キリスト教民主同盟、キリスト教社会同
盟は反対の立場をとっているが、経済界、労働組合、教会は移民問
題委員会の提案を歓迎している。
・内相シリーは、欧州審議会が出したドイツにおける人種差別や外
国人差別に関する報告を事実にそぐわない、と語った。この報告は
ドイツを歪んで描き出している、としている。ユダヤ人中央評議会
副議長フリートマンは、ドイツは全体としては人種差別的でも反ユ
ダヤ的でもないが、極右の犯罪はここ数年かなりの勢いで増加して
いる、と語った。一方連邦政府の外国人問題担当のベックはこの報
告書を歓迎し、この報告書は不愉快ではあるが、外国人排斥運動と
の戦いを進めていく中で必要な提案を行なっている、と語った。欧
州審議会は火曜日、ドイツ国内の人種偏見に基づく犯罪が増えてい
ると非難し、法律の強化を求めている。
・欧州議会は企業の買収に関するEU法案を撤回した。最終読会でこ
の法案を通すには1票足りなかった。2005年から発効するEU内部
の2つ以上の国にまたがる企業の買収に関する統一規則を、いわゆ
る買収指針をもとに作ることになっていた。EU委員会はこの結果を
残念だ、と評した。これによってEUはヨーロッパを2010年までに
世界で最も競争力のある経済体制にする努力をしてきたが、これが
無に帰した、と域内市場委員ボルケシュタインは語った。


7月5日(木)

(ベルリン)元首相ヘルムート コール夫人ハネローレ コールが死亡した。ヘル
ムート コールの事務所によれば、彼女は健康状態で自ら命を断った、とのことで
ある。彼女は68歳で、長年重い光アレルギーに苦しんでいた。彼女は、長年にわ
たって首相とキリスト教民主同盟の党首を務めたコールと1960年に結婚した。彼
女は事故で中枢神経系を損傷した人々のための活動で有名になった。内外の政治家
が彼女の死に驚き、悲しみを表明している。連邦首相ゲアハルト シュレーダーと
連邦首相ヨハネス ラオは弔意を表わした。ロシアからは元大統領ミハイル ゴル
バチョフの弔文が届いた。

     その他のニュース
・首相シュレーダーはイスラエルに対し、パレスチナ人居住区にユ
ダヤ人居住区を作ることに関し、「さらに融通をきかせ」、近東に
和平を実現するよう勧めた。イスラエル首相シャローンとの会談後、
彼はドイツはイスラエルとパレスチナの両者に対して公平な関係を
結んでおり、特にイスラエルとの関係から、シャローンに助言を行
なうことを求めた、と語った。シャローンは、この地域での国際的
な和平計画を実現する前に、まず完全な停戦が行なわれなければな
らず、この問題に関し、ヨーロッパ各国がパレスチナ大統領アラフ
ァトにより強い圧力をかけるよう働きかけるつもりだ、と語った。
シャローンは次はパリを訪れる。
・マケドニア政府とアルバニア人反乱勢力は全土にわたる無期限の
停戦に合意した。NATOとEUの協力で停戦に合意が行なわれたもの
の、深夜テトヴォ周辺では戦闘が再開された。停戦のほか9月の選
挙、反乱勢力に対する恩赦に関する合意が成立した模様である。
NATO事務長ロバートソンとEUの外交問題の代表ソラナはこの通告
を歓迎した。15ヶ国約3千人のNATO軍は7月中旬からマケドニア
に駐留し、反乱軍の武装解除を行なうことになっている。
・ドイツ国防軍をマケドニアに派遣するかどうかはまだ決まってい
ない。首相シュレーダーは国会の各会派の代表にバルカン情勢を伝
えた。会談後外相フィッシャーは、ドイツ軍派遣の条件は停戦状態
が持続していることと対立する双方が政治的解決へ向けて合意して
いることである、と語った。国防相シャルピングは軍は準備を整え
ており、このNATOの作戦に参加する能力もあることを確認した。
問題となるのは財政上の点である。


7月6日(金)

(ベルリン)連立政府は国防軍の兵士数百名をNATO軍としてマケドニアに派遣す
る準備を進めていることを確認した。派遣の前提となるのは、停戦が維持されてい
ることとアルバニア人反乱勢力が武装放棄を自らの責任で行なうことである、と外
務大臣ヨシュカ フィッシャーは連邦議会で語った。また彼は野党キリスト教民主
同盟、キリスト教社会同盟に対し、この作戦に賛成するよう求めた。一方元国防大
臣フォルカー リューエ(キリスト教民主同盟)は、国防軍は目下財政難のため派
遣できる状態にない、と強調した。EU外務委員のハヴィエル ソラナによれば、
マケドニアの停戦は現在維持されている、とのことである。木曜夜にはまだ散発的
な戦闘が派生し、首都スコピエの西では連邦軍の軍用トラックも銃撃を受けていた。

     その他のニュース
・連邦議会は過半数の賛成で新家族援助法を承認した。この法律の
中心は、2002年1月1日から第一子と第二子に対する子女手当を現
在より月30マルク引き上げて300マルクにする、というものである。
第三子に対してはさらに300マルク、それ以上の子供についてはそ
れぞれ350マルクが支払われる。また生計を維持するのに必要な水
準(課税最低基準)と子女の養育と教育費に対する非課税額も引き
上げられた。一方一人で子供を育てている家の非課税額は段階的に
廃止される。国会での討論で野党は財政面での支援があまりに少な
い、と批判していた。この法案が連邦参議院を通過するのは確実と
見られている。
・野党キリスト教民主同盟、キリスト教社会同盟、自由民主党が反
対したものの、連邦議会は異論が出ていた、健康保険組合変更に関
する新しい規定を承認した。これによれば、法律で義務づけられた
健康保険の加入者は2002年1月になってようやく契約解除を通知で
きるようになり、4月1日から変更することができることになる。今
年は通常の契約解除ができなくなる。連邦政府はこれにより、加入
費の高い代替健康保険や地域健康保険組合に解約者が続出すること
を避けようとしている。
・検察庁はコール首相時代の首相府の文書が紛失した件で捜査をさ
らに続ける方針である。犯罪の疑いは少ないため捜査を中止する意
向であったが、連邦政府は批判していた。主席検事アポステルは、
政府の批判が方針転換の原因であったことを認めている。1998年
の政権交代の最中に首相府の重要書類が行方不明になったが、その
中にはサウジアラビアに対する戦車の輸出やロイナ精油所の仏エル
フ アキテーヌ社への売却をめぐる書類が含まれていた。


7月7日(土)

(ローマ)主要工業国7ヶ国G7の大蔵大臣は、イタリアの首都ローマで開かれた会
談で、政界経済が早期に活性化できるようにとの期待感を抱いた。会談の報告書に
は、着実な経済成長が再開した兆しがある、と記されている。ドイツ大蔵大臣ハン
ス アイヒェルはユーロ圏全体とドイツでは経済が上向きの兆候がある、と語った。
1日の期間で開かれる今回の会談の議題は、世界の経済成長とユーロ問題の他、資
金洗浄と税に関する犯罪であった。その他7月20日にイタリアのジェノヴァで行
なわれる、次回の世界経済首脳会談の準備も行なわれた。

     その他のニュース
・連邦首相シュレーダーは、自らが設定した失業率の目標を達成で
きない可能性がある、と初めて認めた。失業者数を350万以下に減
らすとの目標は維持するが、達成できなかった場合、その原因は何
か考えてみなければならならないのに、途中でその目標を撤回する
のは間違いである、と語った。ドイツ労働総同盟はすでに、現在の
状況で来年末までに失業者数を目標まで減らせるかどうか、疑問視
していた。同同盟議長代理エンゲレン・ケーファーは、この目標を
実現するためには、政府は現在の厳しい支出削減計画を中止しなけ
ればならない、と語った。
・移民問題に関する合意を取りつける交渉で、各方面からの要望に
もかかわらず、対立は深まっている。バイエルン州首相でキリスト
教社会同盟党首のシュトイバーは、同党は移民の制限に関する法律
を作る努力をしている、と語った。社会民主党と緑の党はそれに対
し、最終的にはより多くの移民を受け入れるようにする方針である。
これに先立ち首相シュレーダーはキリスト教民主同盟、キリスト教
社会同盟がさらに妥協をするよう求め、両党はこの重要な制度改革
を進める責任を引き受けなければならないし、各方面から提案が出
されている、と語った。
・土曜日暴風が南ドイツを襲い、少なくとも3人の死者を出した。
マンハイムでは乗用車の助手席に乗っていた人が木の枝にあたって
死亡した。オーバーバイエルンのアマー湖とシュタルンベルク湖で
はヨットに乗っていた2人が溺死した。バーデン・ヴュルテンベル
ク州とバイエルン州では木が倒れ、家の屋根が吹き飛ばされ、電柱
が倒れ、多くの家や乗り物が被害を受けた。道路や鉄道の線路はあ
ちこちで寸断されている。金曜夜にはストラスブールで嵐が発生し、
音楽会に来ていた11人の客が倒れた木の下敷きになって死亡し、
85人が怪我をしていた。


7月8日(日)

(ベルリン)ベルリン社会民主党の特別党大会では、過半数の賛成で同市議会選挙
の選挙綱領が承認された。動詞の財政の再建と教育政策に重点が置かれている。ベ
ルリン現市長で社会民主党の筆頭候補クラオス ヴォーヴェライトは厳しい支出削
減を行なうと予告しており、公務員で1万5千人を削減し、新たにかかえた負債を
2009年までに返済することになっている。さらに同党の党大会は民主社会党との
協力関係を作っていくことを了承した。

     その他のニュース
・首相シュレーダーは最近起っている子供に対する犯罪に鑑み、性
犯罪に対する刑罰を根本的に強化する方針である。人間社会から逸
脱するものは、その行為に対し厳しい刑罰を受けねばならず、少女
に性的暴行を加えた成人男性は治療が不可能である、と彼は語った。
緑の党はこの発言を静観している。同党の法律の専門家ベックは、
現在の法律を変える必要はない、と発言した。キリスト教民主同盟、
キリスト教社会同盟の会派長代理ボスバッハは遺伝子情報のデータ
ベース化を広げることを求め、執行猶予のつかない懲役刑を受けた
ものは全員遺伝子情報の調査を義務づけるべきだ、と語った。
・北アイルランドのポータダウンのプロテスタントのオラニエ団が
行進を行なったが、大きな事件は起らなかった。同団の支持者約2
千人が参加した。暴動に発展しないように、軍が隣接するカトリッ
ク系住民の居住区をコンクリートと有刺鉄線で封鎖した。その他に
兵士千6百人がこの地域に配備された。オラニエ団はこの行進を毎
年行ない、1690年にプロテスタントがカトリックに勝利したこと
を記念する。過去にはこの行進では何度も衝突が起こっていた。
・北イングランドのブラッドフォードはこの夏英国で最も激しい人
種暴動に揺れている。内相ブランケットはこの暴動を断罪し、調査
を行なうと語った。同市警察は活動家が暴動を起こした、と発表し
た。アジア系と白人の若者が8時間に渡って繰り広げた市街戦の間、
120名以上の警官が怪我をした。36名が逮捕された。極右が計画し
たパレードが禁止されたため、この暴動が起った。


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