7月9日〜15日のドイツのニュース

7月9日(月)

(ベルリン)重要人物に関する旧東ドイツ国家公安局(秘密警察)の文書の公開に
関して、連邦内相オットー シリーは担当官庁との対立を解決する努力を行なって
いる。同省報道官は、シリーは旧東独国家公安局資料局の局長マリアネ ビルトラ
ーに正式の指示を出すことは避ける方針である、と語った。ビルトラーはシリーの
要請を断り、現代の人物に関する秘密警察の文書を報道関係者および研究者に提供
する意志を固めている。連邦首相ゲアハルト シュレーダーは、ベルリン行政裁判
所の判断が出るまでは秘密警察の文書をこれ以上公表しないように求めた。同法廷
は先週、元首相ヘルムート コールに関する盗聴記録の公開を禁じていた。

     その他のニュース
・連邦大蔵省の情報によれば、国際通貨基金もドイツの今年の経済
成長を下方修正し、1.25%とした。また来年の国内総生産を2%と予
想した。4月の時点では国際通貨基金は今年の経済成長を1.9%、来
年を2.6%としていた。これに対し連邦政府は、今年の2%、来年の
2.25%の成長は可能である、としている。
・NATO軍のマケドニア派遣に連邦国防軍が参加することがほぼ決
まった。首相シュレーダーは、社会民主党と緑の党は連邦議会で野
党の賛成が得られなくても、ドイツ兵の派兵を行なう、キリスト教
民主同盟とキリスト教社会同盟は、この問題は政府ではなくドイツ
の義務であることを理解すべきだ、と語った。民主社会党はシュレ
ーダーを国会との関係が憂慮すべきものになると非難し、派兵を拒
否した。キリスト教民主同盟党首メルケルは、この作戦を行なう前
に国防軍に十分な資金を出すべきだ、と要求した。
・マケドニアのアルバニア人の主要政党2つの代表者は、憲法改正
の提案を受け入れた、とEUの特別大使レオタールは語った。マケド
ニアとアルバニアの政党代表の話し合いが行なわれ、レオタールは
前向きな会談であった、と語った。彼は少数派アルバニア人に有利
になるような憲法改正に関する話し合いが引き続き行なわれること
に自信をのぞかせた。アルバニア人は多数派のスラヴ系住民と同じ
権利を持つことを要求している。紛争の平和的調停の後、NATOは
約3千人の兵士をマケドニアに送り、アルバニア人反乱勢力から同
意を得た上で武装解除を行なう方針である。


7月10日(火)

(ベルリン)ドイツ首相ゲアハルト シュレーダーはシリア大統領バシャール エ
ル アサドと会談し、近東和平を目指すミッチェル計画に賛成するよう迫った。こ
の計画は紛争解決の中心となるもので、シリアもこの見解をとるべきである、とシ
ュレーダーは語った。ミッチェル計画は特にイスラエル人の入植を中止し、和平交
渉の再開を図るものである。シュレーダーはアサドの訪問に対する批判に動じず、
ドイツはシリアと協力関係を築いていく、と語った。ユダヤ人団体はアサドが反ユ
ダヤ的な発言をしているため、厳しい攻撃を行なっていた。
アサドは水曜日、大統領ヨハネス ラオ、外務大臣ヨシュカ フィッシャーと会談
を行なうことになっている。

     その他のニュース
・イスラエル軍はアラブ系住民の家を破壊し、ガザ地区でパレスチ
ナ人とここ4週間で最も激しい戦闘の一つを行なった。パレスチナ
人、イスラエル兵双方に怪我人が出た。イスラエル軍は、部隊を投
入したのは、パレスチナ人が家の陰から狙撃するのをやめさせるた
めだった、と発表した。米国とEUはイスラエルの行動を非難し、イ
スラエル当局にそのような行動を中止し、挑発とみなされうるよう
なこと全てを中断するよう求めた。
・連邦蔵相アイヒェルはEUの財源となる税に基本的に賛成した。
EU蔵相会談で彼は、この税を導入してもドイツ国民の経済的な負担
が生じないことが、この税を認める前提になる、と発言した。ベルギ
ー蔵相は、欧州各国の予算から資金を集めることを12月のEU首脳会
談の主題とすると予告した。EU税の導入に対してベルギーとルクセ
ンブルクは強く賛成しているが、他の国は今のところこれを拒否し
ている。
・連邦内相シリーは旧東独の秘密警察の文書に関する対立の中で立
場を変えていない。秘密警察資料局長ビルトラーが重要人物に関す
る文書を公開し続けるつもりなら、法的手段を行使するが、この問
題をテストケースとして連邦憲法裁判所まで争うのはビルトラーの
自由である、とシリーは語った。シリーは重要人物も自らの個人的
な情報を公開されない権利を持っており、秘密警察資料局法では犠
牲者保護を事実解明より優先している、と強調した。


7月11日(水)

(シュパイアー)カイザードムで行なわれた追悼ミサに数千人の人々が出席し、ハ
ネローレ コールとのお別れをした。この式典には元首相ヘルムート コールの家
族のほか、首相ゲアハルト シュレーダー、元連邦大統領ローマン ヘルツォーク、
キリスト教民主同盟党首アンゲラ メルケル、バイエルン州首相エドムント シュ
トイバーが出席した。ハネローレ コール自身はプロテスタントであったが、家族
の希望でカトリックの追悼ミサが行なわれた。彼女は先週68歳で自殺した。お別
れの手紙の中で彼女は、家から外にほとんど出られないほどの重い光過敏症を自殺
の原因としてあげていた。

     その他のニュース
・連邦憲法裁判所は7月18日に、いわゆる同性婚に関するバイエル
ン州とザクセン州の緊急告訴に対する判決を下す。両州はキリスト
教社会同盟、キリスト教民主同盟政権下の州であり、同性同志の結
婚を認める法律を予定通り8月1日に発効するのを一時差し止めよう
としている。両州の見解ではこの法律は、基本法で保証された結婚
と家族に対する特別な保護を損なうものである。
・内閣は連邦政府の第1期安全報告を承認した。内務省と法務省が
共同で作成したこの報告書はドイツ内の犯罪の原因、発生、組織に
ついて多面的に検討したものである。これは、単に統計的な数値を
示すだけではなく、今まで光をあててこなかった分野を科学的に研
究することで、新たに一歩を踏み出している。
・ドイツ外相フィッシャーは、シリア大統領アサドに近東の和平交
渉に協力するよう求めた。同時に彼はアサドに政治に関する表現手
法を変えるように求め、アサドの反ユダヤ的な発言に対する態度を
示した。アサドは、シリアと彼の影響下にあるレバノンがエジプト
とヨルダン以外でイスラエルと平和条約を結んでいない国であるた
め、近東紛争の鍵を握る人物と看做されている。シリアとイスラエ
ルの間にある主要な対立点は、1967年にイスラエルが占領したゴ
ラン高原の返還である。


7月12日(木)

(ベルリン)景気の悪化と物価上昇が懸念されるにもかかわらず、連邦首相ゲアハ
ルト シュレーダーは連邦議会選挙を1年後にむけて、政策を変える必要を感じて
いない。議会が夏休みに入るにあたって、彼は政府がよい業績を残した、と総括し
た。彼は業績の例として、特に年金改革、原子力発電からの撤退、同性愛者の結婚
をあげた。景気にてこ入れを行なうために、税制改革を優先して行ない、支出削減
を一時中断すべきだ、との要求を彼ははっきり拒否した。キリスト教民主同盟党首
アンゲラ メルケルはシュレーダーは景気を減速させていると批判し、シュレーダ
ーの約束にはかなりがっかりさせられた、と語った。

     その他のニュース
・国連事務総長アナンはドイツ政府との会談を行なった。彼は、外
相フィッシャーと国防相シャルピングとの会談で、ドイツとEUが近
東の和平交渉にずっとかかわりを持つことに賛成した。フィッシャ
ーはアナンに、エイズ支援基金に協力する、と約束した。これはア
ナンがすべての工業国に求めていたものである。
・胚研究を行なう米国の研究所の行動はドイツでは激しい非難にさ
らされている。新旧両教会の代表は、人間の胚性幹細胞の培養を禁
忌を犯すものだとした。独医師会は、研究目的で胚を製造するのは
禁止されている、と強調した。独研究連合副会長ヴォルフルムは、
米国での胚の培養を批判して、人間の尊厳を犯すものだ、と語った。
米国の新聞は、マサチューセッツにあるバイオテクノロジーの企業
が人間の幹細胞の製造に着手した、と報じている。
・北アイルランドでは緊張が高まる中、プロテスタントのオラニエ
団の団員約10万人が7月12日、伝統の行進を行なった。ベルファス
トでは激しい衝突が起こり、数人の警官が怪我をした。警察は放水
車を投入した。


7月13日(金)

(モスクワ)2008年夏のオリンピックは北京で行なわれることが、国際オリンピ
ック委員会IOCのモスクワ総会で決定された。中国の首都が第2回の投票で105票
のうち56票を獲得した。パリ、トロント、イスタンブール、大阪は敗北した。7年
前2000年オリンピック開催に北京が応募したときには、1989年天安門広場でデ
モを行なった学生を大量に虐殺したなどの理由で、投票に敗れていた。開催決定
が知らされた後、北京では花火が打ち上げられ、自動車は警笛をならして町を走り
回った。IOCのこの決定により巨額の投資計画が始まることになる。競技施設、交
通手段や通信手段の建築費は200億ドルと見られている。

     その他のニュース
・オリンピックが北京で開催されるとの決定を受けて、人権擁護団
体は中国政府に基本的権利の状況を改善するよう求めた。IOCには
中国がIOC憲章に記されているすべての自由を保証するよう迫る必
要がある、とアムネスティ インターナショナルは求めた。チベッ
トの亡命政府はこの決定を厳しく批判した。米国は一切の政治的な
態度表明を拒否した。ドイツ内相シリーは、今回の投票が中国の民
主化によい影響を与えるだろう、と語った。中国国家主席で共産党
党首の江沢民は北京で行なわれた祝賀会で世界各国の友人に感謝し
た。
・連邦参議院では各州の反対で、連邦環境相トリティンが計画して
いる飲料容器の保証金制度は実現しなかった。代わりに再利用でき
る容器を使用しなければならない最低限の量を決めることになる。
一方、家族保護法が承認された。この法律の核心は子女手当の値上
げである。その他、事業所組織法の改正と価格割引法の廃止も決ま
った。この廃止によりドイツでは今後価格は自由に交渉できること
になる。
・近東では停戦合意が成立して2週間、戦闘が続きさらに人命が失
われた。パレスチナ人居住区で銃撃と爆弾の爆発が起こり、あわせ
て3人が死亡、少なくとも20人が怪我をした。西ヨルダンランドで
は過激派ハマスに属する1人が爆発で死亡した。ガザ地区ではイス
ラエルの兵士が攻撃を計画していたパレスチナ人を射殺した。ヘブ
ロン近郊でパレスチナ人に射殺されたイスラエル人の死がきっかけ
となって、戦闘は激しさを増している。イスラエル軍は戦車でこの
町を攻撃し、交番を破壊した。その前にイスラエル首相シャローン
はパレスチナ人に対し報復を行なうと脅していた。


7月14日(土)

(ベルリン)連邦政府内部では健康保険の改革に関し議論が行なわれている。厚生
大臣ウラ シュミットは、党に属さない経済大臣ヴェルナー ミュラーの提案を退
けた。ミュラーは、健康保険と介護保険に関する使用者側の負担金を将来的には賃
金の一部として支払い、十分な資金を持つ個人加盟年金に加入するよう提案してい
た。これを認めると共同で責任をとる健康保険制度を破壊してしまう、とシュミッ
トは語った。医師会マールブルク連合の会長フランク ウルリヒ モントゴメリー
はミュラーの提案を支持した。

     その他のニュース
・連邦議会の不正資金疑惑の究明委員会は、いわゆるロイナ疑惑の
重要書類を調査できる。同委員長ノイマンによれば、連邦検事局は
捜査書類をスイスから入手した。法務省は、連邦検事が書類を調査
した後、訴訟手続きに入るかどうかを決定する、と発表した。東独
のロイナ精油所をフランスの絵降るアキテーヌ社に売却した歳、裏
金が流れ込んだとの疑いが持たれている。
・キリスト教民主同盟とキリスト教社会同盟の連邦議会の会派は、
企業からの与党への政治資金の提供を禁止するよう求めた。その他
2千マルク以上の政治資金を現金で支払うことも禁止すべきだとし
ている。同会派は月曜日に関連法案を提出する模様である。
・民主社会党は、連邦同党の元議長ギュージーを、10月に行なわれ
るベルリン市議会選挙の筆頭候補に予想通り指名した。党別党大会
に参加した代表者113人のうち103人が現在連邦議会議員である彼
に投票した。ギュージーは、同党をベルリンでもっとも大きな政治
勢力にしたい、と語った。
・景気の低迷に直面して、経済学者や企業経営者の間では連邦政府
の財政政策と産業政策に対する批判が強まっている。主要な経済学
者、例えばミュンヘン経済研究所長ジンは支出削減が極端だ、と警
告した。経済専門家協議会会長ドンゲスは、減税を早期に実施して、
経済を活性化するべきだ、と語った。経営者側の代表、使用者連合
会長フントは政府は労働市場を杓子定規に捉えている、と非難した。


7月15日(日)

(モスクワ)ロシアは、問題になっているアメリカのミサイル迎撃網の試験が成功
したことに抗議した。ロシア外務相は、これは戦略的な安全保障を脅かす方向へ一
歩進むことを意味する、と発表した。同時にロシア首脳部は1972年に発効した戦
略兵器に関するABM条約に関する会談の準備を行なうと表明した。ミサイル迎撃の
試験は過去2度の失敗していたが、ブッシュ政権下で初めてとなる今回土曜夜に行
なわれた試験は成功した。アメリカ国防相によれば、太平洋上225キロの地点で、
模擬弾を破壊した。ブッシュは今週イタリアのジェノヴァで開かれるG8首脳会談
で改めて、迎撃計画に理解を得たいとしている。2002年にはアラスカに実験施設
の建設を始めることになっている。

     その他のニュース
・近東でのアメリカの和平計画が不調に終わりそうなため、週末に
は仲介の努力が集中して行なわれた。カイロでは緊急にパレスチナ
大統領アラファトとイスラエル外相ペレスの会談が行なわれた。話
し合いは1時間以上に及んだ。ペレスは、進展はなかったものの、
イスラエルとパレスチナの間で最近増加している武力衝突について
具体的な意見交換が行なえた、と語り、イスラエルは戦闘が行なわ
れている間は交渉は行なわないことを確認した。会談の前に彼はエ
ジプト大統領ムバラクと、イスラエルはパレスチナ人に攻撃をかけ
る計画は立てていない、と語った。
・連邦議会の政党資金調査委員会は、ロイナ疑惑に関するスイス側
の文書をできるだけ急いで検討する方針である。社会民主党、緑の
党、自由民主党、民主社会党の委員がこの方針を明確に示した。こ
れ以前に、連邦検事局がロイナ疑惑に関して捜査手続きに入るかど
うかを検討することが公表されていた。連邦法務省は、スイス検事
長がドイツ側にロイナ疑惑に関する文書を提供するよう要請してい
たことを認めていた。連邦検事局は、みずから捜査手続きを取るか、
他の検事に文書をまわすかを検討しなければならない。
・連邦内相シリーはドイツ人とポーランド人の間にさらに寛容と理
解が深まるよう求めた。シュレージエン地方ドイツ人会議がニュル
ンベルクで開かれ、その席上彼は和解がさらに進むように、と発言
した。また、東欧諸国がいつEUに加盟するかは近々議論されるだろ
う、とも語った。さらに第2次大戦後のポーランドによる追放措置
をめぐる法的問題は、統一されたヨーロッパの中での方が上手く解
決できるだろう、とも語った。シリーはブーイングと非難の口笛の
出迎えを受け、演説を何度も中断せざるをえなかった。


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