8月28日〜9月3日のドイツのニュース

8月28日

(ベルリン)軍需産業のロビイストであるカールハインツ シュライバーのキリス
ト教民主同盟CDUに対する10万マルクの資金をめぐる謎は解かれなかった。同党
元党首のヴォルフガング ショイブレと同党元会計責任者ブリギッテ バオマイス
ターは月曜日にベルリンで行われた政党資金委員会で対決したが、資金の受け渡し
に関する主張の違いは解消されなかった。二人とも相変わらず、二人とも自分で資
金を受け取って、相手に渡した、と主張した。検察庁は今後、二人の主張の矛盾を
解消し、偽証罪で訴えを起こす模様である。委員会は、この会合が始まる前に、社
会民主党SPDと緑の党の賛成で、ショイブレとバオマイスターを直接対決させたが、
この決定はキリスト教民主同盟内部で激しい抗議を引き起こした。

     その他のニュース
・閉店時間法に関して、各州は開店時間の延長に合意した。週日は
6時から22時まで、土曜日は6時から20時まで、日祝日には一年で4
日まで開店することができるようになる。連邦参議院ではこの提案
が賛成多数になることが予想されている。この決定は早くもクリス
マスには適用されるかもしれない。
・ナチ時代に教会で強制労働に従事した人々への補償問題で、ドイ
ツの司教たちは解決にむけて合意した。司教補佐マルクスは、大枠
として意見が一致した、と会議後に語った。詳細は火曜日にマイン
ツで報道関係者に司教会議議長レーマンが公表する。
・国家民主党NPDが禁止される公算が強まった。社会民主党SPDの
総書記ミュンテフェリングが、国家民主党は極右政党であり、憲法
裁判所でもそう認められると確信している、と語った。州も10月半
ばまでに必要な文書の準備を整え、禁止動議が認められるよう期待
している、とも語った。一方、労働組合も使用者側もドイツの極右
勢力と協力して戦うことを決意した。


8月29日

(ハノーファー)ゲッティンゲンで教師をしているヴェルナー ヴァラート(57
歳)はフィリピンで4ヶ月以上人質として過ごした後、やっとドイツに戻ってきた。
彼は国防軍機でハノーファー空港に着いた。彼には、リビアで出迎えた外務政務次
官クリストフ ツェッペルが同行していた。リビアでは反乱分子アブ サヤフに捕
えられていたヴァラートと5人の元人質はリビア政府代表に出迎えを受けた。リビ
アの革命の指導者ムアマール カダフィはその式には参加しなかった。リビアはこ
の人質事件の仲介を行なっていた。ヴァラートの息子マルクとその他6人が、まだ
誘拐犯の手の中にある。またこのイスラム教反乱分子はさらに一人のアメリカ人を
人質にした。

     その他のニュース
・ドイツ経済は2000年上半期に1990年以降最高の成長をした。統計
庁は、今年上半期の成長を3.3%と発表した。政府は今年の経済成長
率の予想を上方修正した。蔵相アイヒェルは仏の蔵相との会談の後、
2.75%を修正して3%と発表した。
・連立政府はUMTSの使用許可の競売の収益990億マルクだけでなく、
浮いた利息のうち10億マルクを負債返還に使う意向である。社会民
主党SPDと緑の党の財政の専門家は、2001年の国家財政の負債は450
億マルク以下に抑えることで合意した。
・カトリック教会はナチ時代の強制労働者に対し賠償を行なう財界
と政府が資金を出す基金に参加せず、独自に5百万マルクで教会施
設内で強制労働に従事した人々に賠償を行なう、と司教会議の議長
レーマンが発表した。その外に5百万マルクを用いて和解を求める
仕事を行なっていく、とも語った。一方、基金の報道官ギボフスキ
ーは教会の決定を小心で適切ではない、と批判した。


8月30日

(ハレ)外国人に対する憎しみからモザンビーク人アルベルト アドリアーノを殺
害した3人の極右に重い拘留刑が言い渡された。ハレ上級地方裁判所は24歳のネオ
ナチに終身刑を、二人の16歳のスキンヘッドにそれぞれ9年間の少年刑を言い渡し
た。この3人はアドリアーノを下劣な動機から殺害した、と判決理由には述べられ
ている。首相ゲアハルト シュレーダーはこの判決を恥ずべき犯罪にふさわしい罰
であると評価し、この判決は、国、警察、司法が独自に、誰もが踏み越えてはなら
ない一線を改めて示したことのあらわれである、と述べた。

     その他のニュース
・首相シュレーダーは、右翼活動家に対し国だけが暴力で対抗する
ことに理解を求めた。彼はブランデンブルク州警察の暴力・外国人
排斥運動出動部隊をヴィッテンベルゲに訪問していた。彼は警察に
は、公道や広場を右翼集団に使わせないように求め、警察が市民を
保護すれば、市民が極右と戦う勇気を持つことになる、と語った。
・フィリピンのホーロ島で囚われていたヴァラートが解放されたこ
とで、政府は彼の息子マルク救出に全力をあげる、と外相フィッシ
ャーは語った。政府はヴァラート夫妻救出のために今まで1200万マ
ルクを支出したという情報がある。米国人の人質に関して、米国政
府は犯人との直接交渉を拒否している。フィリピン政府交渉団はま
だ早期の解決の可能性がある、と見ている。
・外相フィッシャーはイスラエルとパレスチナに、近東紛争に関し
てもう一つ妥協をするように呼びかけた。キャンプ デイヴィッド
での首脳会談ではすでに大きな進展があった、とイスラエル外相ベ
ン・アミは外相会談後語った。二人はグリューネヴァルト駅の「17
番線」記念碑の所で殺されたユダヤ人を追悼した。この記念碑はナ
チ時代に強制収容所に送られるベルリンのユダヤ人を悼むもので、
彼らは花輪を供えた。


8月31日

(フランクフルト アム マイン)ヨーロッパ中央銀行EZBが公定歩合をあげたが、
ユーロの価値は過去20ヶ月で最低水準まで落ち込んだ。ニューヨークでは1ユー
ロ=0.8845ドル(1ドル=2.2112マルク)の値をつけた。ヨーロッパ中央銀行評
議会は公定歩合を0.25%上げ、その理由として物価上昇の懸念を挙げていた。原油
価格の値上がりによるインフレの影響を抑えることが必要だ、と頭取ヴィム デュ
イゼンベルクは語った。再割引を行なう会社にとって基準金利は4.25%から4.5%
に上がった。首相ゲアハルト シュレーダーは金利を上げた後、ユーロは回復する
という見込みに自信をみせた。

     その他のニュース
・首相シュレーダーは、極右がモザンビーク人のアドリアーノを襲
撃したデッサウで、フィンランド首相リポネンと共に彼の墓石に花
を供えた。彼は改めて人種差別と外国人に対する敵意に対し断固と
した措置をとるように呼びかけ、ドイツ人の多数が右翼に積極的に
対処することを示す必要がある、と語った。
・キリスト教民主同盟CDUはドイツ統一条約署名の10周年記念日に
同党の功績を述べたてた。同党首メルケルは、前任者ショイブレは
統一の創案者の一人であり、元首相コールは統一実現の過程を調整
した、と語った。ショイブレは、自分はドイツ統一後の急速な変化
を推し進めたが、それ以外のやり方はなかったのだ、と語った。
・ナチ時代の強制労働者に対する補償を行なう、ドイツ産業界側の
基金管理委員会が結成された。ドイツ国連大使カストルップを代表
とするこの委員会は、不足している180万マルクを早急に集めるこ
とに自信を覗かせている。ジプシー中央評議会は、今認められてい
る以外のナチの施設で働かされた人達にも、補償を請求権を拡大す
るように要求した。


9月1日

(ポツダム)首相シュレーダーは旧東ドイツ地区に今後も支援を行なうことを約束
した。彼は2週間に渡ってドイツ東部を訪れ、その最後に国による援助の継続が差
し迫って必要である、と語った。ドイツ東部の産業界と経済基盤は遅れを取り戻す
必要がある。南ブランデンブルクのラオジッツ地方の褐炭鉱区の視察の際に彼は、
発電用に褐炭を利用することはドイツ政府のエネルギー政策の根幹である、と語っ
た。それに先立ちシュレーダーはブランデンブルク燃料に将来の飛行機工場カーゴ
リフターを訪れた。

     その他のニュース
・ヘッセン州キリスト教民主同盟CDUの不正資金疑惑に関する同党
に対する非難はまだ続いている。1998年と99年には「ヘッセン政治
教育学会」を経由する形で、同党には数十万マルクの献金が現州首
相コッホに対する資金提供として秘密裏に流れ込んでいた、と複数
の新聞が伝えている。ヘッセン州同党の総書記ゲシュカはこの疑惑
を否定した。
・新聞報道によれば、連邦政府は、公的健康保険の財源から随意年
金に対し支出する額を減らす方針である。公的健康保険は歳入不足
が予測されていたにもかかわらず、連邦厚生大臣フィッシャーは、
約100万人の随意年金加入者に今までより掛け金の少ない義務保険
の提供する計画である。連邦憲法裁判所は7月に現在の健康保険の
規定を7月終わりに、基本法の平等規定に違反しているため、違憲
であると判断を下していた。
・米国大統領クリントンは米国ミサイル防衛網の設置決定を後継者
にに委ねることにした。彼はこの防衛網の準備や試験が成果をあげ
ておらず、ロシアや米国の同盟国が反対していることも指摘した。
ロシア政府はこの決定を前向きに受け止めた。独政府はクリントン
の態度を歓迎している。首相シュレーダーは設置決定を急がないよ
うにと求めた。


9月2日

(エヴィアン)EU加盟諸国の外相はレマン湖畔のエヴィアンで会合を開き、パレス
チナが一方的に国家を建設することになった場合に、共同歩調を取るには至らなか
った。外交筋によれば特にフランスがEU全体として一つの態度を取ることを望まな
かった模様である。おそらくイスラエルとの和平条約を結ばなければパレスチナ国
家の承認は行なわない、ということになるものと思われる。ドイツ外相ヨシュカ 
フィッシャーはパレスチナが国家を作る権利は誰も疑問視しておらず、和平がその
土台でなければならない、と語った。今回の2日間にわたる非公式外相会談では、
ヨーロッパの長期的展望とユーゴスラヴィアに対するEUの制裁が話し合われている。

     その他のニュース
・多くの政治家が改めて極右に反対する意見を述べた。首相シュレ
ーダーは、人種差別と極右と戦うように呼びかけた。また彼は、ド
イツが外国でどのように見られているか懸念しており、極右はドイ
ツの問題ではあるが、これがドイツの印象を決めるようなことがあ
ってはならない、と述べた。また十分に資料が集まったら、極右国
家民主党NPDの活動禁止を提案する、とも語った。バイエルン州首
相シュトイバーも改めて国家民主党禁止に賛成した。連邦内務省は
諸州に調査項目を提示し、その結果を用いて国家民主党に振りにな
る資料を集めるつもりである。
・ヘッセン州キリスト教民主同盟CDUの不正資金疑惑で生じた新し
い疑惑で、同党が率いる州政府は再び批判にさらされている。連邦
大蔵大臣アイヒェルはヘッセン州首相コッホに辞任を要求し、キリ
スト教民主同盟の州政府はもはや信頼を集めて政治を行なうことは
できない、と語った。連邦議会の同党の会派の長、メルツは辞任要
求は全く不合理であり、支持者からは相変わらず支持を受けている、
と語った。
・米国大統領クリントンは計画中のミサイル迎撃網を当面実行しな
いこと、そしてこの問題の決着を次期大統領に委ねることを決めた
が、これを露大統領、中国政府、NATO諸国などが歓迎した。この計
画には600億ドルかかる見込みであるが、試験には失敗していた。
大統領候補ブッシュはこの計画の促進を予告している。


9月3日

(ベルリン)首相ゲアハルト シュレーダーは旧ドイツ領に住み戦後追放された難
民が戦後の再建に対して行なった貢献を評価した。旧ドイツ領難民連合の祝典で、
彼は極右と彼らの違いを強調した。旧ドイツ領難民は50年前の憲章を捨てた際に復
讐や報復に反対する、と言う声明を出していた。シュレーダーは社会民主党政権の
首相としては初めてこの旧ドイツ領難民連合の祝典に参加した。

     その他のニュース
・ヘッセン州首相コッホは、キリスト教民主同盟CDUの不正資金疑
惑で果たした役割のため、厳しい糾弾を受けている。ラジオ報道に
よれば、今年もコッホ名義の同党の隠し口座の通帳が捏造されてい
た、とのことである。コッホはこの事件をできるだけ細かく解明す
ると約束していた。保険会社HDIは、党に近い学術団体を通じてコ
ッホに資金提供していたことを認めた。同州社会民主党SPDの党首
で連邦蔵相のアイヒェルと同州緑の党は彼に辞任を求めている。
・ロシア大統領プーチンは日本訪問の初めに、日本政府が要求して
いるクリル列島(千島列島)の返還の可能性はないとした。これに
より彼は両国の平和条約の早期締結の望みを絶った。クリル列島は
1945年にソ連軍によって占領された。この島は戦略上重要な拠点
であって、これをめぐる対立が今まで両国の平和条約の締結の障害
になっていた。この対立にもかかわらず、プーチンは両国関係は良
好である、と発言した。
・EUはユーゴスラヴィアの選挙で野党が勝利した場合に備えて、ユ
ーゴスラヴィア政策を転換する準備をしている。3週間後に大統領
選挙を控えて、EU加盟諸国の外相は、有効性が疑われていた同国に
対する制裁を根本的に検討していた。独外相フィッシャーは制裁の
凍結に賛成した。また諸国外相はイスラエルとパレスチナの平和条
約の早期締結を迫った。


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