9月18日〜24日のドイツのニュース

9月18日(月)

(オスロ)値上がりを続けるヨーロッパの燃料に対する抗議活動はスカンディナヴ
ィアにも広がった。世界で二番目の石油輸出業者があるノルウェーでは、精油所封
鎖に伴いガソリン供給が心もとなくなってきた。隣国スウェーデンとフィンランド
ではトラック運転手が港を封鎖し、一時は精油所も封鎖した。ベルギーでは数千人
の労働者が燃料油の値下げを求めてストライキを行なった。スペインの漁師はバル
セロナ港等を漁船で封鎖した。フランスでも抗議行動は続いている。パリを含む多
くの町で、自動車学校教員数百人が自分の車でデモを行なった。
EU加盟諸国の運輸大臣は水曜日にルクセンブルクでこの状況を打開するために特別
会議を行なうことにした。

     その他のニュース
・連立与党社会民主党と緑の党は、燃料費の高騰に対し社会福祉目
的の補助、特に自動車通勤者に対する所得控除の増額の検討を続け
ている。緑の党幹部クーンは、同党もこの増額に基本的には反対し
ないと語っている。新聞報道によれば、所得控除は10〜20ペニッ
ヒ増額され、自動車以外で通勤してもこの所得控除を受けられるよ
うにする計画である。
・野党キリスト教民主同盟とキリスト教社会同盟は、2002年の連
邦議会選挙までの党の活動の目標に環境税反対を据える方針である。
連立与党が予定している燃料高騰対策をにらんで、キリスト教民主
同盟党首メルケルは首相シュレーダーを修理屋と呼んで非難した。
キリスト教社会同盟党首のシュトイバーは、環境税は景気を減速さ
せる、と語った。
・連邦政府の意向を受けて、インターネット利用教育が初等教育の
一部に取り入れられる。首相シュレーダーは10項目の計画で、
2001年までにすべての学校にPCとインターネットを利用できる設
備を備えると発表し、そのために産業界に学校用コンピュータを提
供するよう求めた。また公共図書館には無料で利用できるインター
ネット器材を備えることも含まれている。また失業者はインターネ
ット利用基礎講座に10月から無料で参加できる。


9月19日(火)

(ベルリン)燃料の高騰に対する抗議の声をうけて、政府は自動車通勤者、社会的
弱者、社会福祉部門に対する租税の軽減の準備を行なうことにした。自動車通勤者
に対する所得控除を交通手段に関係なく距離によって行なうことが真剣に検討され
ている。その他社会扶助受給者に対する燃料費の一時的な追加給付や運送業者に対
する負担の軽減措置が検討されている。
運輸大臣ラインハルト クリムトはベルリンで運送業者の代表と会談を行ない、ヨ
ーロッパで運送業者が置かれている状況について話し合った。

     その他のニュース
・農家、トラック、タクシー運転手による燃料費値上がりに対する
抗議活動はまだ続いている。ハンブルクでは数百人が町の中心部を
トラックで封鎖した。ヘッセン州ヴィースバーデン周辺の高速道路
では抗議の運転手による交通障害が起こっている。農家がトラクタ
ーで中心部を封鎖した町もある。スペインとスカンディナヴィアで
も大規模な抗議活動が起きている。EU加盟各国の運輸大臣が水曜日
にルクセンブルクでこの問題解決に向けて話し合いを行なう。
・IMFの判断によれば、世界経済の状況は良好であるが、危険が全
くないわけではない。特に原油価格と主要経済国の米、EU、日本の
間の不均衡が世界経済の破綻につながる可能性がある、とIMF主任
研究員ムサは語った。彼によれば、ドイツとその他のEU加盟諸国は
アメリカ同様きわめて好調な成長を続けている。
・米国上院は中国のWTO加盟を賛成多数で可決した。米中間の貿易
の障害が取り除かれたことになる。下院は5月にすでに中国の加盟
を認めていた。


9月20日(水)

(ルクセンブルク)ガソリン価格の値上がりを補填するために、EU加盟国はそれ
ぞれ原油税の減税を行なおうとしているが、これがますます大きな批判にさらされ
ている。連邦運輸大臣ラインハルト クリムトはEU諸国の運輸大臣による特別会議
で、補助金導入をきそわないようにという警告を発した。彼はEU各国大蔵大臣によ
る、原油の値上がりに減税で対処しないという共同決議を思い出すように求めた。
EUのエネルギーと交通担当の委員ロヨラ デ パラシオもこのような財政面での
(減税という)譲歩に怒りを覚える、と表明した。EU加盟諸国は、抗議に負けて
税制面での譲歩を行なわずにすませるべきである、と彼女は語った。一方ドイツの
石油販売各社は今一度ガソリン価格の値上げを行なった。

     その他のニュース
・連邦政府はできるだけ早く燃料価格の高騰から生じた問題の対処
法を見つけようとしている。週末までに関係各省間で解決策を探り、
その後連立与党の首脳が意見をまとめることになる、と政府報道官
ハイエが発表した。与党内部では、住宅手当受給者に対する暖房費
の補助と自動車通勤者に対する減税措置が検討されている。
・ユーロの交換レートが最低を記録した。欧州中央銀行は基準レー
トを対米ドル0.84から0.76に設定した。1ドル2マルク30ということ
である。IMF長官のケーラーは欧州中央銀行が介入してユーロを防
衛することに賛成であるし、ユーロは過小評価されている語った。
・ドイツ政府は1999年の武器輸出が全体で59億マルクであったこと
を公式に認めた。輸出の4分の3はEUとNATOおよび同等の扱いの国に
向けたものである。最大の輸入国は19億マルクの輸入をしたトルコ
である。ドイツの武器輸出は輸出全体の1%以下で、ごくわずかな割
合である、と政府報道官ハイエは発表した。


9月21日(木)

(ベルリン)首相ゲアハルト シュレーダーは極右、反ユダヤ主義、外国人に対す
る敵意に反対する民主主義的な基本価値観の擁護を訴えた。極右活動家グループは
禁止してでも粉砕しなければならない、と彼はドイツユダヤ人中央評議会設立50
周年式で語った。首相は、ユダヤ人中央評議会はドイツの民主主義の安定と、寛容
な社会の発展に一方ならぬ貢献を行なってきた、と強調した。中央評議会議長パオ
ル シュピーゲルはドイツで今なお広く見られる反ユダヤ主義を批判した。

     その他のニュース
・ドイツ鉄道は今後10年連邦から総額250億マルクの財政支援を受
けることができることになった。運輸大臣クリムトは、ドイツ鉄道
社長メードルンとの会合の後、この資金で鉄道網の整備拡充を行な
わせる、と発表した。財源にはUMTSの使用許可の競売で得られた資
金の利息をあてる、とのことである。
・ヨーロッパの政界はベルリンで始まった第22回独伊政府協議に注
目している。首相シュレーダーがイタリア首相アマートを軍隊式の
栄誉礼で出迎えた。両国の外相、内相、国防相が話し合いのために
集まった。
・ゲーテ・インスティテュートと文化政策の通信社インター・ナツ
ィオーネスの合併が完了したゲーテ・インスティテュートの総裁ホ
フマンは、ドイツ文化を外国に伝える上でより良い基盤が出来た、
と語った。合併のきっかけは連邦の予算削減である。

    9月21日朝のニュース(おまけ)
・カタルニア地方で与党国民党所属のスペインの国会議員が射殺さ
れた。家を出たところを首を撃たれて死亡した。情報によれば犯人
は二人組の男で、車で逃走した。証拠を消すため車には後で火が放
たれた。ETAの犯行であるかどうかは、今のところ不明である。


9月22日(金)

(ベルリン)連邦政府は石油価格の値上がりのために生じている社会問題を緩和す
るため30億マルクの補助金法案を準備している。今までは自動車通勤者に対して
のみ70ペニッヒの所得控除を行なっていたが、それを2001年1月1日に通勤手段
にかかわりなく通勤距離に対して80ペニッヒの控除を行なうように変更すること
になる。また、冬になる前にも住居手当や社会保障費、奨学金受給者は暖房費の一
時追加金を受け取ることになる。野党はこの措置をささやかなものだと評し、改め
て環境税の廃止を求めた。

     その他のニュース
・欧州中央銀行と米、英、日本の発券銀行はユーロ価格安定のため
に外国為替市場に介入した。ユーロの交換レートは90セント強に持
ち直した。発券銀行はユーロの値下がりが世界全体に悪影響を及ぼ
すのではないかという不安を共有しており、共同歩調をとった、と
欧州中央銀行は発表した。
・労働大臣リースターは年金改革に関して野党キリスト教民主同盟
とキリスト教社会同盟と合意する好機が到来したと考えている。彼
は野党の主要な要求すべてを受入れ、年金水準を収入の64%以下に
は下げないと法案で保証する、と語った。政府は来週この法案を提
案するつもりである。
・1998年5月以来中断していた、再処理のための核廃棄物輸送が再
開された。連邦放射線防護庁は使用済みの核燃料を原子炉のあるフ
ィリプスブルクとビブリスから、再処理施設のあるラ ハーグに8
回輸送することを認めた。運搬の際に放出される放射線量は基準以
下に押さえられる、と同庁は保証している。


9月23日(土)

(プラハ)主要工業国7ヶ国G7は産油国に世界経済が減速しないように、石油採掘
量を増やすように求めた。ドイツ大蔵大臣ハンス アイヒェルはプラハで行なわれ
たG7蔵相および発券銀行総裁会議のあと、産油国は原油の価格高騰に対して責任
ある行動をとらなければならない、と語った。その他にG7諸国はエネルギー使用
量を減らすべく可能な限りの努力をすることにした。同じ会議で、金曜日に行なわ
れたユーロ協調介入をうけて外国為替市場と今後協力体制を強めていくことを決め
た。世界経済の今後の成長をG7諸国はおおむね良好であると見ている。さらに各
国の大臣は最貧国の負債免除について話し合った。

     その他のニュース
・米国は平時に初めて戦略的備蓄原油を放出する。大統領クリント
ンは燃料油の供給が極端に減少している(昨年比20%減)ことをそ
の理由としてあげた。精油所は、原油価格が下がると見込まれてい
る来年春に原油を返さねばならない。戦略的備蓄原油は70年代の石
油危機の時に作られ、戦争あるいは危機の時の使用を想定していた。
・フランス政府に続いて、イタリア政府も石油の値上がり対策とし
て財政的な援助を決定した。1リットルの軽油に対し約12ペニッヒ
の国からの援助を運送業者とタクシー運転手は受けることになる。
この援助は9月1日にさかのぼって支払われる。漁師にも国からの援
助が行なわれることになっている。スペインでは漁師が港や市場へ
の道を封鎖し始めて5日になる。ドイツでも長距離運転手が多くの
町で燃料の高騰に抗議行動を起こしている。
・ユーゴスラヴィアは日曜日の大統領と国会議員選挙を控えて、お
よそ20人の外国人報道関係者を国外退去させた。この多くはドイツ
の報道関係者で、理由も説明されず国を出るように求められた。外
国の選挙監視団も入国を拒否された。ユーゴ外務省は、野党が法に
反して選挙の勝利宣言を行なおうとしている、と非難した。軍は日
曜日にモンテネグロ共和国での選挙を必ず実施させる、と請け合っ
た。一方モンテネグロ共和国政府はこれを国内の治安に対する干渉
である、と考えている。EUの外務・安保代理人のソラーナは、改め
てユーゴ大統領ミロシェヴィッチ支持者による大規模な選挙結果の
操作が行なわれてはならない、と語った。


9月24日(日)

(ベオグラード)ユーゴスラヴィア大統領・国会選挙は数多くの不正が報道される
中、実施された。多くの場所で秘密投票が行なえない、という苦情が寄せられた。
コソヴォではアルバニア系住民多数派により選挙がボイコットされた。一方数千人
のセルビア系住民は投票した。モンテネグロ共和国では西側よりの政府が選挙を拒
否しており、同共和国内部のセルビア系住民がそれに同調した。大統領選挙では、
現職スロボダン ミロシェヴィッチは世論調査では、主力対立候補のウォジスラフ
 コシュトゥニッツア(セルビア民主党)に対してリードされている。野党と西側
は、ミロシェヴィッチは選挙で大規模な不正が行なわれて、政権交代が実現しない
のでは、と懸念している。

     その他のニュース
・フランス大統領の任期が7年から5年に短縮される。この憲法改正
案は国民投票で70%以上の賛成を集めた。今回の国民投票では有権
者の約30%が投票を行なった。2002年の次回選挙の結果からこの規
定は適用される。
・スイスでは外国人の数を制限する国民請願がおよそ63%の反対で
否決された。右翼小政党と自由主義民主党が提案したこの発議は、
住民に占める外国人の割合を18%に制限することを政府に求めるも
のであった。現在その割合は19%を越えている。30年間で外国人政
策をめぐる国民請願の投票が行なわれるのは5回目である。
・IMFは原油産出国と輸入国の間を取り持ち、世界経済のために必
要な、石油の値下がりを達成しようと考えている。サウジ・アラビ
ア、アラブ首長国連邦、ロシアなどの産油国は関係書類に署名した
、とのことである。一方IMFの政策に反対する小規模のデモが会議
場の近くで行なわれた。


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