10月2日〜8日のドイツのニュース

10月2日(月)

(エルサレム)訴えかけや警告にもかかわらずパレスチナ人はイスラエル占領軍に
対する蜂起を引き続き行なっている。ガザ地区では若者が軍の前哨を攻撃し、イス
ラエル国旗を引き裂いた。イスラエルは再びヘリコプターを投入し、戦車をそこに
送り出した。この騒乱で月曜日だけで13人が死亡した。木曜日以来の死者の数は
少なくとも45人にのぼる。千人を越えるパレスチナ人が怪我をした模様である。
EUとアメリカはこの流血の惨事を終えるよう求めている。ジュネーヴでは国連事
務総長のコフィ アナンが、激化した暴力が平和実現の邪魔になってはならない、
と語った。

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・ユーゴスラヴィア大統領ミロシェヴィッチは月曜日にテレヴィ演
説を行ない、国民の関心を週末に行なわれる決選投票に向けさせた。
NATOの空爆終了以来久しぶりに公の場で発言した彼は、外国からの
圧力には屈しないよう呼びかけた。一方10万人以上の反対派がユー
ゴのあちこちでデモを行なって、彼の辞任を求めた。
・EU各国の運輸大臣が集まり、トラック運転手の労働時間に関する
各国共通の規則を作ろうとしたが、合意には至らなかった。ドイツ
運輸大臣クリムトは会談後、過剰勤務の危険性があるため、規制が
必要であるという点では一致したものの、個人経営の運転手をどの
ように規制に取り込むかをめぐって話し合いはまとまらなかったが、
12月までに妥協点が見いだせるよう望んでいる、と語った。
・国連事務総長アナンはドイツ統一10周年にあたってお祝いの言葉
を述べ、国際社会に対するその価値を強調した。ドイツ統一は、ド
イツ、ヨーロッパ、世界を変える出来事であった、と書簡で彼は表
明した。仏大統領シラクはドイツ統一の過程をヨーロッパ統合の今
後のお手本である、と評した。シラクは火曜日にドレスデンで行な
われる統一10周年祈念式の主要演説者である。


10月3日(火)

(ドレスデン)ドイツ統一10周年記念式はドレスデンのゼンパーオペラハウスで
幕をあけた。ドイツ大統領ヨハネス ラオとフランス大統領ジャック シラクは旧
東ドイツ再建と元首相ヘルムート コールの業績を評価した。コールのドイツ統一
に関する功績は過小評価してはならない、と強調した。コールはこの式典には参加
しなかった。首相ゲアハルト シュレーダーはヨーロッパ近隣諸国に対し、ドイツ
統一に協力してくれたことを感謝した。また彼は外国からの国賓をもてなす食事会
で、東ヨーロッパの改革の動きはドイツ統一の過程がきっかけになっている、と語
った。この式典には10ヶ国の国賓が参加した。

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・ドイツ全土で数十万人がドイツ統一記念日をパーティや追悼式で
祝った。ベルリンでは、50万人がブランデンブルク門周辺で行なわ
れた祭典に参加した。ドレスデンの市民祭には30万人が集まった。
同市の中央集会の会場周辺では82人が一時逮捕された。ほとんどは
集会の妨害を行なったため、と警察は発表した。ハノーファーの万
博でもお祭りが行なわれ、様々な文化的な催しが行なわれた。
・ドュッセルドルフのシナゴーク放火と他の州で発生した極右の襲
撃はドイツ統一のお祭りムードに水を差した。ドュッセルドルフの
シナゴークの放火犯は特定されていないが、被害は少なかった。放
火事件後5百人が参加して極右と反ユダヤ主義に反対するデモが行
なわれた。ヴァイマル近郊のナチのブーヒェンヴァルト強制収容所
の記念施設に何者かによってハーケンクロイツが書き込まれている
のが見つかった。その他に右翼の背景を持つ犯行がシュヴェーリン
とビールフェルト近郊のヒデンハオゼンで行なわれた。
・ユーゴスラヴィアの政権争いはさらに激化している。野党支持者
数名が再び逮捕された。政府は野党に対し厳しい締めつけを行なう、
と圧力をかけている。数十万人がベオグラードで、野党が選挙に勝
利したことを承認するよう求めてデモを行なった。10以上の都市で
道路が封鎖され、工場、学校など公的な建物でストライキが行なわ
れている。7500人がストを行なっている褐炭炭坑コルバラは、警
官に封鎖された。すぐに仕事に戻るようにという軍の要求を労働者
たちは拒否している。


10月4日(水)

(ベオグラード)ユーゴスラヴィア憲法裁判所は9月24日の選挙の一部を無効とし
た。これを報道した通信社は詳細を伝えていない。裁判所は民主野党連合の訴えを
認めるかどうか決定を下さなければならなかった。野党と西側は大統領スロボダン
 ミロシェヴィッチが選挙で不正を行なったと非難している。一方、ストライキは
3日目に入り、政府と野党の権力争いはますます激化している。反政府派数千人は
警察の封鎖を突破して、コルバラ炭坑に突入し、占拠した。その際警官隊と衝突が
起きた。また地方都市では数千人のデモ隊が出て、交通を遮断している。
野党の大統領候補ウォジスラフ コシュトゥニツァはロシアが提案した仲裁案を具
体性に欠ける、と評した。しかし、EU諸国も加わった仲裁の努力を野党は歓迎し
ている、と彼は語った。

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・アメリカはイスラエル首相バラクとパレスチナ大統領アラファト
に強い政治的な圧力をかけ、近東の紛争を中断させるために直接会
談を行なうように働きかけた。米国外相オルブライトを交えた会談
が駐パリアメリカ大使館で始まった。一方ガザ地区と西ヨルダンラ
ンドでの戦闘で、またパレスチナ人の死者が出た模様である。シリ
ア首都ダマスカスでは数百人の学生がデモに参加して、米国大使館
に投石を行ない、イスラエル国旗を燃やした。
・ドュッセルドルフのシナゴークの放火事件に対し、首相シュレー
ダーは全市民に対して反ユダヤ主義と右翼の暴力と闘うように呼び
かけた。事件現場を訪れた彼は、ユダヤ中央評議会議長のシュピー
ゲルとドイツにクラスユダヤ人と連帯していくと約束した。一方連
邦検事局は独自の捜査を行なう。この放火事件の他、強制収容所記
念施設に対する攻撃の証拠となるものは見つかっていない。外相フ
ィッシャーはこれらの攻撃をドイツの民主主義に対する明確な攻撃
である、と見ている。
・「ビルト」紙によれば、ドイツの9月の失業者数は、およそ10万
人減って370万人になった。失業率は0.3%下がって9.0%になった。
これは1995年以来最低の水準である。公式の失業者数の発表は木
曜日に行なわれる。


10月5日(木)

(ベオグラード)セルビアの野党はユーゴスラヴィアの権力者たちに対して蜂起し、
大統領スロボダン ミロシェヴィッチを解任すると発表した。野党支持者たちは国
会と国営テレヴィ局に押し寄せ、放火した。与党社会党中央部は崩壊した。夜遅く
まで数十万人がベオグラード、その他の都市の路上に出て、勝利を祝った。ミロシ
ェヴィッチはすでに国外に脱出した、という見方もある。しかし、野党指導者たち
は、彼はまだ国内にとどまってよるのうちに反撃を行なう準備をしている、と警告
している。通信社ベータの情報では、軍は兵舎にとどまり、市街戦には参加しない
ように、という命令を受け取っている、とのことである。野党側の報道では、ベオ
グラード警察首脳は、デモ隊に対して警官隊を今後は投入しない、と約束した模様
である。警官隊との衝突で多くの人が怪我をしていた。通信員の報告では2人が死
亡した、とのことである。野党は夜のうちに、国営テレヴィRTSを含め、テレヴィ
局、ラジオ局をおさえた。今まで政府系の報道をしていた通信社タンジュクも国の
管理下から離れて、野党の大統領候補ウォジスラフ コシュトゥニツァを選挙で選
ばれた大統領と報じている。彼は軍と警官に平和的な権力交代を呼びかけている。
また、ユーゴスラヴィアは再びヨーロッパの一部になり、民主主義への道を歩みだ
した、旧政府への報復は行なわない、と彼は語った。
ミロシェヴィッチは野党の報道官ツォーラン ジンジッチによれば、南東セルビア
のボーアに支持者数人と一緒に滞在している、とのことである。通信社は、夜のう
ちにベオグラードの軍事空港から3機の飛行機が離陸したが、その中にミロシェヴ
ィッチはのっている可能性がある、と伝えていた。

     その他のニュース
・西側諸国の政府はユーゴスラヴィア警察と軍に対し、野党に対し
暴力を行使せず、国民の意志を受け入れるように、と声明を出した。
首相シュレーダーは「自国の国民を撃ってはならない」と警告し、
東ドイツの変化の際にドイツが経験したことを思い出すように呼び
かけた。他の手段をとると惨事を引き起こし、国際社会によるユー
ゴへの圧力を増すことになる、と語った。外相フィッシャーは「印
象的な平和革命」であったと語った。セルビアには「最後の鉄のカ
ーテン」があったとも語った。彼はロシアに、野党のコシュトゥニ
ツァ候補が選挙の勝利者であることを認めるように求めた。EUのバ
ルカン問題担当のホムバッハはプーチンに、暴力が激化しないよう
に、ユーゴ政府に対する影響力を適切に行使するように、と求めた。
独仏外相はユーゴに対する制裁措置の早期撤廃を視野に入れている。
EU委員会議長でもある仏外相は約束を守り、月曜日には必要な決定
を下せるようにする、とも語った。
・アメリカ大統領クリントンは、近東で対立している両者がパレス
チナ地域での戦闘をやめ、平和交渉を再開するよう要請した。イス
ラエル首相バラクとパレスチナ大統領アラファトは戦闘の終結を約
束を守らなければならない、と語った。一時休戦の合意がなされた
にもかかわらず、ガザ地区では木曜日に少なくとも一人のパレスチ
ナ人が、国防軍に射殺された。エジプト大統領ムバラクはアラファ
トと米外相オルブライトとの会談で、シャルム エル シェイクで
アラブ諸国の近東首脳会談を行なうよう求めた。
・政府はドイツの失業率がさらに下がったのは、改革政策の正しさ
によるものだ、と語った。野党は政府の消極的な姿勢を非難した。
連邦労働施設の発表によれば、9月の失業者は約368万人で8月より
9万6千人減少した。昨年9月との比較では、失業者は約26万人減少
した。失業率は9%で、1993年以来9月としては最低である。同施設
長は、しかしこの好景気は旧西ドイツに限られている、と語った。


10月6日(金)

(ベオグラード)ユーゴスラヴィア新大統領ウォジスラフ コシュトゥニツァは夕
方、権力を失ったスロボダン ミロシェヴィッチと会談した。会談は一時間であっ
た、と独立通信社ベータは伝えているコシュトゥニツァは軍司令官ネボシーア パ
ヴコヴィッチとも会談した。軍首脳部は大統領の交代を正常な出来事として受け止
めており、軍の投入は行なわない、とコシュトゥニツァはセルビア国営テレヴィで
語った。反ミロシェヴィッチの市街での暴動の後、野党は政治的に自らの有為を確
保することができた。月曜日には国会で筆頭候補コシュトゥニツァが大統領に指名
される見込みである。彼が選挙に勝利したことは長い間認められていなかったが、
ようやくユーゴスラヴィアの立法機関によって公式に承認されることになる。コシ
ュトゥニツァは今回の政権は経過的な政権である、とあらかじめ語っていた。

     その他のニュース
・ユーゴ大統領ミロシェヴィッチの失脚を受けて、EUはユーゴ制裁
を出来るだけ早く中止することにしている。月曜日にはEU外相会議
でユーゴ新政府に対する緊急支援を話し合うことになっている。特
に独政府は熱心である。仏大統領シラクはコシュトゥニツァを次回
のEU首脳会談に招待した。ユーゴ近隣諸国はミロシェヴィッチの失
脚を歓迎している。キプロスは専門家の間ではバルカン半島の資産
の置き場所として知られているが、ユーゴの銀行口座を凍結し、資
本を厳しく管理するように命令した。
・イスラエル兵との武力衝突が再びエルサレムの旧市街と西ヨルダ
ンランド、ガザ地区で起こり、少なくとも7人のパレスチナ人が死
亡した。怪我人も多数でた、と現地の病院が伝えている。パレスチ
ナ人が投石し、それに対しイスラエル国境軍がゴムの銃弾と催涙弾
をデモ隊に向けて発射した。パレスチナ地区は数日来封鎖されてい
る。神殿の丘はイスラエル警察が管理している。
・ユダヤ人関連施設に攻撃が繰り返されている。金曜夜には何者か
がベルリン クロイツベルクのシナゴークに投石し、窓ガラスを破
壊した。政党、労働組合、教会は最近の襲撃を非難している。外相
フィッシャーを含む政治家がベルリンのシナゴークでの安息日の礼
拝に参加した。ベルリン ユダヤ人共同体の代表ナーハマは反ユダ
ヤの暴力を70年代の左翼のテロになぞらえた。内務省は右翼のテロ
が綿密な計画に従って起こされる兆しはない、としている。


10月7日(土)

(ベオグラード)ユーゴスラヴィア新大統領ウォジスラフ コシュトゥニツァは就
任の宣誓を行なった。国会の立憲会議は議員数人の問題が原因で開催が遅れた。コ
シュトゥニツァの支持者は19の選挙区の選挙結果を規則違反であるとして承認し
ない方針であった。最終的に問題の議員は次回の会合で決着をつけることで合意が
なされた。宣誓を行なった後コシュトゥニツァは、今回の政権交代をセルビアとモ
ンテネグロの歴史的事件である、と評価した。彼は、ユーゴスラヴィアには民主主
義が存在する、と語って、今や国会議員の熱烈な拍手をうけた。
土曜日の朝までセルビア全土では、元大統領ミロシェヴィッチが政治的敗北を認め、
それを祝う人が路上にあふれた。

     その他のニュース
・ユーゴスラヴィアは、前大統領ミロシェヴィッチの処遇を外国か
らの干渉なしに決定するべきである、と首相シュレーダーは語った。
またユーゴをバルカン安定条約に加入させるための前提条件を設け
ることに反対し、ユーゴの民主主義活動を物質的に支援することが
重要であり、それがうまくいけばバルカン安定条約に組み込まれる
ことになる、と語った。ドイツは有意義な支援ならば行なう、とも
語った。
・イスラエル首相バラクはパレスチナ人に対し、パレスチナ人居住
地区での暴力行為をやめさせるべく最後通牒を突きつけた。受け入
れなければ、和平に向けた過程が瓦解する、48時間以内に暴力行為
をやめなければ、イスラエル軍は断固対処する、と語った。紛争は
激化しており、南レバノンとの国境地帯でも衝突が勃発した。イス
ラム過激派ヒズボラがイスラエル軍施設を攻撃し、3人のイスラエ
ル兵を捕虜にした。パレスチナ人が投石を行なって、国境の柵を引
き倒そうとした。西ヨルダンランドのナブルスでも衝突が引き続き
起きており、ユダヤ人の信仰の対象になっているヨセフの墓を破壊
した。
・フランスのEU委員会議長団はヨセフの墓の破壊を非難する声明を
発表した。EU加盟15ヶ国は全宗教の聖地を尊重するように要請した。
米大統領クリントンは、紛争地域での成り行きに関心を持っている、
と語った。彼はイスラエル首相バラクとパレスチナ大統領アラファ
トと現状を電話で話し合った。国連は、3人のイスラエル人と両国
の全ての捕虜の即時解放を求めた。


10月8日(日)

(ガザ市)イスラエルとパレスチナの間が終わりを迎える兆しはない。パレスチナ
自治政府は非常事態を宣言した。これは、イスラエル首相エフド バラクがパレス
チナ大統領ヤセル アラファトに突きつけた、月曜夜までに騒乱を終わらせるべく
配慮せよ、という最後通牒への回答である。バラクは繰り返し、もしパレスチナ側
が対応しないのであれば、暴力行為を終わらせるため、可能な限りの兵力を投入す
る、と圧力をかけた。にもかかわらずパレスチナ人居住区とイスラエルの双方で流
血の衝突が発生し、少なくとも12人が怪我をした。飛行機からまかれたビラには、
パレスチナ機構のこの地域の組織アル ファタハがイスラエルとの戦争を呼びかけ
る言葉があった。イスラエル政府は自治区の封鎖を無期限に延長した。アメリカ外
相マデリーン オルブライトは、アラファトに、パレスチナ人に対する影響力を適
切に行使するように求めた。

     その他のニュース
・ポーランドでは新首相選挙が行なわれた。候補者12人のうち最有
力なのは現職クワシニエフスキ(46歳)である。選挙後のアンケー
トでは、投票者の56%が彼に投票した、とのことである。この数字
が確認されれば、第一回投票で彼の当選が確定する。対立候補には
労組連帯の創設者で元大統領ワレサがいる。公式の結果発表は深夜
頃になる。約2900万人が投票を行なった。
・ベルギーの地方選挙では極右政党「フラーム ブロック」が大幅
に勢力をのばした。今のところ同党の拠点であるアントワープで、
同党は33%を獲得し、6年前の前回選挙よりも5%増やしている。他の
都市や地方自治体でも票を伸ばす可能性がある。同党は外国人の移
民中止を要求し、フラマン人のための国を求めている。
・平和的な政権交代をなしとげたユーゴスラヴィアでは新大統領コ
シュトゥニツァは困難な組閣を行なっている。彼は国会内では過半
数を持っていないので、元ミロシェヴィッチ政権の代表者と、大臣
人事について交渉しなければならない。情勢を安定させるため、欧
州安保協力機構議長団はセルビア共和国での選挙の時期を早めるよ
う勧告している。セルビアで多数を獲得することで、ユーゴ全体の
状況を安定させる、と見ている。一方モンテネグロの社会党は大臣
の椅子を要求している。憲法では、セルビア人の大統領がでた場合
、首相はモンテネグロ出身者にするという規定がある。コシュトゥ
ニツァは両共和国の和解を最重要課題と位置づけてきた。


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