12月4日〜10日のドイツのニュース

12月4日(月)

(ワシントン)アメリカ大統領選のフロリダ州での手作業による開票結果をめぐる
法廷闘争で、合衆国憲法裁判所は州最高裁の判決を差し戻した。その理由として、
州最高裁の判断に不明確な点があることをあげている。フロリダ州の裁判官は、改
めてよりはっきりした理由をあげて判断をすることを求めている。憲法裁判所のこ
の判断は、共和党候補ジョージ W. ブッシュ、民主党候補アル ゴアのどちら側の
勝利も認めるものではなかった。票の追加集計を行なうかどうかに関するフロリダ
郡裁判所の決定は、ひとまず延期された。

     その他のニュース
・牛の疫病BSEとの戦いで、EU全加盟国でも1月1日からまず6ヶ月
間肉、および骨を材料にした飼料の使用を禁止する決定を、EU農相
審議会が採択した。その他に、EU内の生後30ヶ月以上の牛は、検
査でBSEが見つからなかった場合にだけ、出荷できることにするこ
とになった。ドイツではその検査はすでに水曜日から義務づけられ
る。
・長距離通勤者の交通費を経費とするかどうかをめぐる対立で、連
立与党内の対立が先鋭化している。社会民主党議長団は、首相シュ
レーダーと社会民主党政権下の州の間でなされた妥協案を承認した。
その妥協案によれば通勤距離1キロあたり自家用車で80ペニッヒ、
公共交通機関利用者で60ペニッヒまでが経費と認められることにな
る。それに対し緑の党は、交通手段による違いを作らないよう求め
ている。火曜日に両党で話し合いが行なわれる。
・EU各国の外相はニースでの首脳会談を前に最後の会議を開いたが、
EU改革をめぐる対立を和らげることはできなかった。ドイツ外相フ
ィッシャーは、たとえばEU閣僚理事会の票の配分をめぐる対立で妥
協をする条件は整いつつあるのだが、合意に達するのは難しい、と
語った。その会議ではEU加盟を希望しているトルコと協力していく
ことが決定されたが、ギリシアはキプロス紛争のため認められなか
った。EU介入軍の創設に向けて前進があり、できるだけ速やかに
人道的支援行動が行なえる状態を整備することになった。


12月5日(火)

(ニュルンベルク)ドイツでは恒例の11月の不況のため、労働市場の状況改善が
足踏みしている。失業者数は1995年以来最も低い。10月と比べると失業者は
364万5千人と3万4200人増えているが、昨年11月と比べると、25万5498人減
っている。失業率はドイツ全体では変わらず8.9%である。連邦労働施設所長ベル
ンハルト ヤーゴダは、経済成長は順調で、雇用情勢改善に差し障りはないが、
ただドイツ東部の労働市場は相変わらず停滞している、と語った。

     その他のニュース
・米国国防省長官コーエンは、NATOと同じ役割をする介入軍を創
設しないようにEUに警告した。NATO国防相会談で彼は、EU加盟
国が計画している介入軍はNATOの内部に位置づけられなければな
らず、ヨーロッパ諸国が軍事規模を拡大し、NATOとの関係を重視
していくのであれば、米国はNATOを今後も支援していく準備があ
ると語った。
・米国と国連の見解によれば、パレスチナ自治区での紛争は局地戦
を引き起こしかねない。在イスラエル米国大使インディクは、イス
ラエルとパレスチナの間で協定が結ばれる可能性は低い、という見
通しを語った。国連の使節団は、この紛争は地域全体に広がる可能
性がある、と強調した。イスラム急進派ハマスはイスラエルに対し、
新たなテロを行なうと迫っている。西ヨルダンランドでは二人のパ
レスチナ人が射殺された。
・米国大統領候補ゴアは裁判での敗北したものの、部分的には勝利
をおさめた。フロリダ州最高裁はゴアの要求を受け入れ、郡裁判所
の決定を破棄し、今まで開票されなかった約1万4千票を改めて集計
することになった。木曜日に最高裁は聴聞会を開く。両党は水曜ま
でに文書で論拠を提出する。ゴア側の弁護士は今回のフロリダ州最
高裁の判決を最も重要な判決と位置づけている。


12月6日(水)

(アトランタ)アメリカ大統領選に関し、連邦控訴裁判所は共和党候補ジョージ W.
ブッシュから出されている、フロリダ州での手作業による集計を中止させるように
という訴えを却下した。同裁判所はこの判断によって、マイアミの郡裁判所が下し
た、手作業による確認作業は正当であるという判断を支持したことになる。再集計
によってブッシュとアル ゴアの票の差は930から537票に縮まっていた。タラハ
シーの郡裁判所ではその他に2つの裁判が始まった。この裁判はゴアがさらに票の
差を縮める可能性を持っている。この裁判では、数千の書簡投票を行なったセミノ
ール郡とマーチン郡の票が無効かどうかが争われている。ゴアはこれによりさらに
4千以上の票を増やす可能性がある。フロリダ州の結果がこの選挙全体の行方を決
定する。

     その他のニュース
・社会民主党と緑の党は遠距離通勤費の援助に関し、利用する交通
手段に関わりなく一律の補助を行なうことで合意した。通勤距離が
10キロまでの人は1キロあたり70ペニヒ、11キロ目からは80ペニ
ヒと決められた。この新規定は木曜日に連邦議会の交通委員会に送
られる。この規定は、燃料費の高騰で苦しむ通勤者を財政的に支援
するためのものである。
・ドイツ首相シュレーダーはポーランド国会で演説し、ポーランド
のEU加盟は歴史の正当な要求であり、ポーランド加盟の条件づくり
が、ニースのEU首脳会談の課題である、と語った。彼は、いわゆる
ワルシャワ条約30周年記念式に出席するためワルシャワに来ていた。
この条約でドイツはオーデル・ナイセ線をポーランドの西の国境と
してみとめ、ドイツとポーランドの関係が正常化した。当時の西ド
イツ首相ブラントの発案であった。ブラントはワルシャワのゲット
ーの記念碑の前で1970年にひざまずき、この写真が世界中で報道
された。
・ニースでのEU首脳会談を翌日に控え、EU加盟国の労働組合員が
ヨーロッパ共通の社会福祉政策を求めてデモを行なった。5万人が
参加して労働と社会福祉の権利に関し1つのヨーロッパを求めた。


12月7日(木)

(ニース)EU加盟15ヶ国の代表が集まった首脳会議でEUの新たな基本憲章が厳か
に公表された。この憲章は15ヶ国に共通の基本的権利54箇条を含んでおり、その
中には、基本的人権や死刑の禁止も含まれている。ただしこの憲章は政治宣言であ
って、法的な拘束力は持っていない。EU規約の受け入れは各国の反対に会い、計
画には含められなかった。この憲章は元ドイツ大統領ローマン ヘルツォークを座
長とするEUの作業班のが作ったものである。
ニースの首脳会談ではすでにBSE問題が取り上げられている。ドイツ首相ゲアハル
ト シュレーダーによれば、すべての首脳が動物性飼料の全面的な使用禁止に賛成
している。EU改革問題ではシュレーダーは加盟国に妥協するよう呼びかけている。
会談の冒頭で、各国代表はEU拡大を討論するために、加盟希望諸国の代表と会合を
持った。

     その他のニュース
・EU改革を話し合う首脳会談が始まる頃、路上ではデモ隊と警官の
衝突が起こっていた。左派と対案派のデモ隊が会議場近くで銀行の
支店に放火し、車をひっくり返した。暴徒は催涙ガスで取り押さえ
られた。警官約20名とデモ隊数人が怪我をした模様である。
・遠距離通勤対策をめぐる対立で、連邦政府と社会民主党が与党の
州の意見の調整がついた。通勤手段に関わりなく、距離に応じて財
政的な支援を受けるというもので、不正使用を避けるため、1万2千
マルク以上の援助をうける場合、それを証明する義務がある。この
提案は木曜夜にキリスト教民主同盟・キリスト教社会同盟が与党で
ある州に両院協議会の席上提案されることになっている。
・連邦議会の政党献金調査委員会は1月25日に元首相コールと元外
相ゲンシャー、武器輸出のロビイストシュライバーを尋問する意向
を固めた。同委員会は、1991年のサウジアラビアへの戦車輸出に関
してコール政権が下した決定はどのように下されたのかを解明しよ
うとしているが、木曜日には進展がなかった。またズィーメンス社
のキリスト教民主同盟への巨額の献金解明も新たな展開はなかった。


12月8日(金)

(タラハシー)フロリダ州の二つの郡裁判所は郵便投票数千票の開票を認めないよ
うにという訴えを退けた。報道官は判決理由として、違反行為はあったが、選挙の
公正さは失われていない、と述べた。この訴訟に勝っていれば、民主党候補アル 
ゴアは共和党候補ジョージ W. ブッシュをフロリダ州に対して優位な選挙結果を得
られるところであった。フロリダ州の選挙結果が大統領選挙の結果を左右する。ゴ
アの最後の望みはフロリダ州最高裁の判決である。金曜日にこの決定が出ると予想
されている。

     その他のニュース
・フランスのEU委員会議長団はニースでの首脳会談で2国間会談を
行ない、EU改革のための妥協の可能性を探っている。大統領シラク
は、その後土曜日に全体会談でEU改革に関する議論を行なう、この
提案は参加国すべてが受け入れている、と語った。改革の中心はヨ
ーロッパ委員会の規模と、各国の票の配分、拒否権の制限などであ
る。改革が行なわなければ、新しい加盟国を受け入れることができ
ない。
・イスラエル軍は西ヨルダンランドのパレスチナ側の管理下にある
すべての町を封鎖した。人道的な理由で必要な場合を除き、この地
域への出入りは禁止される、と軍は発表した。13年前に起った第1
回の衝突の始まりの日をパレスチナ人が追悼する、いわゆる「怒り
の日」の衝突で、少なくとも10人が死亡した。
・連邦政府と連邦参議院に続き、連邦議会も極右政党ドイツ国家民
主党の活動禁止動議を可決した。社会民主党、緑の党、民主社会党
の賛成で議会は、連邦憲法裁判所に向け、ドイツ国家民主党は憲法
違反であるという動議を可決した。自由民主党はこの提案に反対し、
キリスト教民主同盟、キリスト教社会同盟は連邦議会と連邦参議院
の動議の支持だけを行なった。連邦議会の今回の行動は法律上適切
ではないし、政治的にも意味がない、とキリスト教民主同盟の議員
ボスバッハは語った。


12月9日(土)

(エルサレム)イスラエル首相エフド バラクは辞任を発表した。テレヴィ中継さ
れた記者会見で、60日以内に選挙を行なうと語った。イスラエルの非常事態に対
処し、暴力を終結させ、和平交渉を再開する必要性があるため、辞任し、改めて国
民の信任を獲得したい、と彼は語った。

     その他のニュース
・米国最高裁は共和党大統領候補ブッシュの訴えを認め、フロリダ
州での票の再集計を差し止めた。同裁判所がブッシュの訴えを取り
上げるまでは、機械では数えられなかった票の集計は中断される。
同裁判所はブッシュとゴアの争いに関する公聴会を月曜日に行なう。
フロリダ州最高裁は金曜日には、機械では集計できなかった票の再
集計を即時行なうように命じていた。
・EU15ヶ国の首脳は、原則的にEU委員会の数を将来的には制限す
ることで合意した。2005年からは、ブリュッセルのEU本部に派遣
する委員の数は各国一人ずつにし、加盟国が27になったところで、
数を再検討することを、EU外交委員会は確認した。今までは独、
英、仏、伊、西は2人を派遣していた。また委員会議長の地位を強
化することでも合意した。今回の基本合意はEU改革交渉で初めて
成果を見た妥協案であり、EU拡大に必要な前提条件である。
・3万人近くの人がケルンに集まって人種差別と極右に反対するデ
モを行なった。100人の極右が参加するパレードに反対する集会を
開こうと、主催者は同じ時間にケルンの中心部を行進した。右翼の
パレードの周辺では、デモ隊と警察の衝突が起こり、警官8人が怪
我をした。デモ隊の25人が逮捕された。ネオナチの集会には2千人
の警官が投入されていた。


12月10日(日)

(ニース)EU加盟諸国の首脳は計画中のEU改革を話し合う首脳会談で、意見の一
致に向けて大きな一歩を踏み出した。EU理事会議長国のフランスの情報によれば、
各国首脳は拒否権の制限に関するすべての問題で意見が一致した。これにより会議
4日目の終わりには、EU閣僚理事会の票の配分の問題と、欧州議会の議席配分だけ
が問題として残っている。ベルギーとポルトガルはこの問題に激しく反発している。
一方参加国はEU委員会の今後の規模と、通商政策に関しては大きく意見が一致し
ている。それに加えドイツは、2004年には新しい会議を設置し、EUと加盟諸国間
の課題の決着をつけるようにしたい、という計画を実現しようとしている。

     その他のニュース
・イスラエル首相バラクは辞任発表後数時間後に、労働党から首相
候補として指名を受けた。イスラエル憲法によれば60日以内に首相
は選出されねばならないことになっている。バラクは辞任の理由と
して、近東和平会談の新しい代表になる信任を国民から得たい、と
いうことを挙げている。日曜夕方には野党の右派リクード所属で元
首相ネタニヤフが出馬を予告した。首相には国会議員だけがなるこ
とができるが、現在ネタニヤフは国会議員ではない。世論調査では
バラクが優勢である。
・韓国大統領キム デ ジュン(75歳)はオスロでノーベル平和賞
を受けた。彼は生涯を人権と民主主義、北朝鮮との外交にささげた
ことが評価されている。受賞演説で、この受賞は北朝鮮のキム ジ
ョン イルと分け合いたい、と語った。ストックホルムでは他の12
人の受賞者にノーベル賞が贈られた。その中にはドイツ人物理学者
クレーマーも含まれている。
・ノルトライン・ヴェストファーレン州首相クレメント(社会民主
党)は極右政党の全面的な活動禁止に賛成した。ドイツ国家民主党
の活動禁止動議が認められたら、他の極右政党、ドイツ民族同盟や
共和党が同様の活動を行なっているのであれば、その政党の禁止も
考えなければならないし、党の文書に人種差別を訴えている政党を
税金で財政的に支えてはならない、と彼は語った。


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