12月11日〜17日のドイツのニュース

12月11日(月)

(ワシントン)大統領選後5週間を経て、月曜日にアメリカ最高裁は事態に決着を
つける審理を行なった。民主党のアル ゴアと共和党ジョージ W. ブッシュ双方の
弁護士はそれぞれ45分間かけて、ワシントンの最高裁で自らの主張の根拠を述べ
た。9人の裁判官が、民主党から出されている手作業によるフロリダ州の疑問票の
集計を続行するかどうかに決定を下す。ゴアにとっては法廷の出す結論が最後の逆
転の機会である。法廷が月曜日中に決定を出すかどうかは今のところ分かっていな
い。

     その他のニュース
・今回のニースでの首脳会談は、EUの歴史の中で最も長時間のもの
になった。各国首脳はEU改革に合意し、これによりEU拡大への道が
作られた。最大の争点は閣僚理事会の票の分配であった。ドイツは
他の国より多くの票を得ることはなかった。条件が付けられ、小国
が共同しても投票で大国に勝つ事態は妨げられることになった。重
要問題では拒否権を廃止するという合意は成立しなかった。首相シ
ュレーダーは、独政府のいくつか要求が満たされなかったが、大半
の目標は達成された、と語った。
・キリスト教民主同盟党首メルケルとバイエルン州首相シュトイバ
ー(キリスト教社会同盟)は、首相シュレーダーのEU首脳会談での
交渉手腕を評価し、話し合いに進展があったことを歓迎した。連邦
政府は大きな成果が上がったとしつつも、完全ではなかったことを
認めた。産業界からは強い批判が出ている。
・キリスト教民主同盟は、党資金の疑惑から生じる法的な責任につ
いて提案を行なった。同党議員団長メルツは9項目の党の規約を提
示した。資金に関する規制を強めることが計画されている。同党は
規則を廃止して、資金を使途を明確にせず、緊急措置として支出で
きるようにする計画である。この提案が認められると、同党が行な
っているマスコミ各社への出資を中止するよう、社会民主党が要求
する事態を招きかねない。


12月12日(火)

(タラハシー)フロリダ州下院は、州の25人の選挙人を共和党候補ジョージ W.
ブッシュに与えることを認めた。この決定は79対41で可決された。多数派の共和
党は、大統領選挙をめぐる法廷闘争が長引いているため、フロリダ州が選挙人会議
に参加できるようにすることを望んでいた、とのことである。民主党はこの決定を、
選挙結果を操作しようというものだと批判している。この決定はフロリダ州上院で
も承認されなければならない。関連する議論は水曜日に予定されている。ワシント
ンではアメリカ最高裁が、アル ゴアの要求どおり、疑問票の手作業による集計を
認めるかどうかに、注目が集まっている。

     その他のニュース
・EU理事会議長フランス大統領シラクは、ニースでの首脳会談の決
定を欧州議会の厳しい批判から擁護して、EUは活動する能力を持っ
た、と語った。同時に彼は、多数決は将来も税制と社会福祉政策に
関しては用いない、と語った。ヨーロッパ国民党の議員団長ペタリ
ンクは、拒否権の廃止には成功しなかった、と個人的な意見を述べ
た。社会党議員団長クレスポは、ニースで行なわれた妥協は、各国
の利害がからんだ不正な取り引きが裏にある、と語った。
・エチオピアとエリトリアは2年半にわたる国境紛争に終止符を打
った。長期間の交渉後、エチオピア首相ゼナビとエリトリア大統領
アフェウェルキは条約に署名した。アフリカ統一機構と国連がこの
条約の仲介を行なった。署名を記念する式典にはアフリカ統一機構
議長セリムと国連事務総長アナン、米国外相オルブライトが出席し
た。
・インターネットでいわゆる「アウシュヴィッツ流言」を流した外
国人を、ドイツでは大衆扇動罪で罰することが可能になる。連邦裁
判所の基本判決によれば、問題となる文章をドイツ国外でネット上
に流した場合でも、この罪になる。またこれはインターネット接続
業者には適用されない。自分のホームページで、ナチ時代のユダヤ
人の組織的虐殺はなかったとしたオーストラリア人に、最近この判
決が言い渡されている。


12月13日(水)

(ワシントン)5週間にわたる劇的な綱引きの結果、アメリカ次期大統領は共和党
ジョージ W. ブッシュに事実上決定した。対立候補民主党のアル ゴアは水曜日に
アメリカ最高裁が下した自分に不利な判決を受けて、ビル クリントンの後継者に
なる希望を断念した。彼は選挙全体の行方を左右するフロリダ州の疑問票の再集計
をめざして全力を傾けていた。これによりブッシュは同州でかろうじて多数を獲得
した。現地時間の水曜夜にはゴアは公式に国民に語りかける予定である。その際に
彼が敗北を認める発言をするものと見られている。ブッシュ陣営は今のところ控え
めな態度をとっている。ブッシュはゴアが発言するのを待って、態度を表明する意
向である、とのことである。

     その他のニュース
・米国大統領クリントンは北アイルランドのすべての武装組織に武
器を捨て去るよう訴えた。また彼は、和平交渉を暴力で妨害しよう
としている武装組織に反対するより厳しい措置をとることに賛成し、
北アイルランドの将来は、銃弾ではなく投票用紙の上に築かれねば
ならない、と語った。また米国は、英国、アイルランド政府との協
力関係を強め、和平交渉を進めていくつもりである、とも語った。
・ドイツでは将来小売店と客が自由に値引き交渉が行なえることに
なる。閣議は70年前に制定された値引き法といわゆる景品条例を廃
止することを決めた。今まで値引きは原価の3%まで、景品は小額の
ものだけが認められていた。その他に閣議では、女性の地位向上と
保護への取り組みを進めることが決まった。暴力からの保護法案で
は、暴力をふるう男が女性の家に入ることを禁じる項目を含める計
画である。
・家畜商は最近、ドイツ国内で義務づけられているBSE検査を避け
るために、ドイツ産牛肉を隣国で屠殺させ、再び国内に持ち込んで
いる。連邦農業省は各州の農業大臣と食肉業者から、これに関する
情報を集めて確認した。


12月14日(木)

(ワシントン)世界各国の首脳が次期アメリカ大統領ジョージ W. ブッシュの勝利
を祝福した。ドイツ首相ゲアハルト シュレーダーはドイツとアメリカの友好関係
は強い絆の上に成り立っている、と声明を出した。ブッシュには、政府の首脳を指
名し政権交代の準備をするために5週間半の時間がある。アメリカ大統領は1月
20日に就任するのが伝統になっている。ブッシュは数日中には主要な職の人事を
発表するかもしれない。元参謀本部長コリン パウエルの外務大臣就任が取りざた
されている。ブッシュは対立候補、アル ゴアとの厳しい選挙戦を終えて、全市民
に団結するよう訴えた。

     その他のニュース
・ロシア大統領プーチンは、次期米国大統領ブッシュとの協力して、
国際平和と軍事上の安定性を推し進めることを期待している。プー
チンは目下ソ連崩壊後ロシア大統領として初めてキューバを訪問し
ている。今回の会談の目的は、両国の経済関係の改善と武器輸出で
ある。
・軍事介入部隊に関するEUの計画は抵抗を受けている。特にトルコ
が反対しており、ブリュッセルで行なわれているNATO外相会談で、
EUとNATOの協力関係は危機的な状態にある。トルコ政府は、EUが
求めているNATO計画策定部隊への介入に強く反対している。また、
この計画に特に反対しているのはアメリカである。
・ドイツが要求している無期限の動物性飼料の使用禁止は、EUでは
拒否された。ドイツ厚生大臣フィッシャーはEU健康問題審議会で、
期限付きの使用禁止は無意味である、と批判した。BSE危機を克服
するための費用をめぐる対立に関して、作業部会は1月終わりに解
決案を提案することになっている。一方、ブランデンブルク州では
新たなBSE事件が発生した。まだ最終検査結果は出ていないが、テ
ュービンゲン州でも牛の脳髄の再検査が行なわれる。


12月15日(金)

(ベルリン)計画中の年金改革で、若者たちの負担はさらに軽く、年長者の負担は
さらに重くなることになった。連立与党の社会民主党と緑の党の首脳は、労働大臣
ヴァルター リースターの提案した年金改革案に修正を加え、いわゆる平均化要因
を修正した。リースターは、2011年からの年金水準は67%以下には下がらないよ
うにする、と語った。当所計画では64%に下がることが予想されていた。現在の水
準は70%強である。労働組合とキリスト教民主同盟は新たに決定された修正を歓迎
している。使用者側とキリスト教社会同盟はこれに批判的である。

     その他のニュース
・NATO各国外相は秋季会議でトルコを説得して、EU危機対応部隊
をNATOの軍事力の一端に取り込むことに失敗した。NATO加盟19
ヶ国のうち18ヶ国は、NATO計画策定部隊を継続して利用すること
に賛成している。トルコは状況に応じて決定を下すよう主張してい
る。トルコ政府はトルコがEUの軍事政策の決定に十分参加していな
いという不満を持っている。NATO各国外相はロシア外相イワノフ
との会談も行ない、バルカン情勢と緊張緩和について話し合った。
・イスラエル首相選挙を前に、和平会談の再開の希望が出てきた。
イスラエルのラジオ局の報道では、パレスチナ大統領のアラファト
とイスラエル外相ベン アミは来週会談を行なうことで合意した。
イスラエル軍は1万3千人のパレスチナ人をイスラエルの職場に戻す、
と発表した。一方イスラエル兵は西ヨルダンランドとガザ地区で6
人のパレスチナ人を殺害した。
・チェルノブイリ原発が最終的に閉鎖された。同発電所が大災害を
引き起こして14年、ウクライナ大統領クチマの指示で、稼働してい
た原子炉が停止した。ドイツ環境相トリッティンはこの廃止を歓迎
している。米国エネルギー省のリチャードソンは、ウクライナはよ
うやくソ連時代を払拭した、と語った。


12月16日(土)

(ワシントン)次期アメリカ大統領ジョージ W. ブッシュは元参謀本部長コリン 
パウエル(63歳)を外務大臣に指名した。ブッシュはこの決定をテキサス州の小
さな町クローフォードで発表した。パウエルは有色人種として初めての外務大臣に
なる。彼はイラクとの湾岸戦争でアメリカの軍事作戦を指揮した。パウエルとブッ
シュは、近東和平会談がアメリカ外交政策の重要課題であることを確認した。パウ
エルはイラクに対して強硬な態度をとる、と予告した。民主党議員が入閣する可能
性もある内閣は1月20日までに決定されることになっている。その後ブッシュは大
統領ビル クリントンの職務を引き継ぐ。

     その他のニュース
・ドイツでは2件目のBSE事件が発生した模様である。バイエルン
州厚生省は、オーバーアルゴイ産の生後5年の牛肉の検査で陽性の
結果がでた、と発表した。最終結果は連邦機関の検査後、月曜日に
発表される予定である。この牛の頭部とこの牛を飼っていた牧場は
予防のため隔離され、肉は出荷されていない。BSEであることが確
かめられたら、この牧場の牛80頭はすべて殺される。
・連邦政府は労働組合から年金改革案の変更点に関して合意を得る
よう努力をしている。首相シュレーダーと労働大臣リースターは日
曜日に主要労働組合と話し合いを行なう。この変更点をキリスト教
民主同盟、キリスト教社会同盟は様々な評価を下している。議員団
長メルツは、この改革案を撤回するように要求している。一方キリ
スト教民主同盟総書記のマイアーは、この改革案を前向きに受け止
めている、と語った。
・約2千人の人がドルトムントで極右と外国人排斥運動に反対する
デモに参加した。このデモのきっかけになったのは、ミュンスター
の行政最高裁判所が約200人のネオナチによる行進を認めたことで
ある。多くの警官が町の中でデモ隊と右翼の衝突が起こるのを阻止
した。


12月17日(日)

(ミュンヘン)ドイツで2例目のBSEが確認された。バイエルン州厚生省は、オー
バーアルゴイ産の牛肉がBSEに汚染されていた、と発表した。BSE検査で陽性がで
たため、改めてその牛の脳髄の検査をテュービンゲンの連邦ウィルス性疾患研究所
が検査していた。その他バイエルン産2頭の牛も、BSEに汚染されている疑いが出
ている。管理体制の審査結果は同研究所からはまだ発表されていない。
製薬会社ベーリンガーは、狂牛病を生きている牛から検出できる新しい方法を研究
中である、と発表した。この検査方法は2001年晩夏には実用化されるとのことで
ある。

     その他のニュース
・労働組合は政府の年金改革案に主要な点で賛成した、と社会民主
党所属労働大臣リースターとドイツ労働総同盟会長のシュルテはシ
ュレーダー首相との会談後、明らかにした。新たな提案によれば、
年金の保険料は長期的には平均手取り賃金の22%を越えず、年金水
準は平均手取り賃金の67%を下まわらないことになった。私的保健
についても両者が合意していた。
・今度は労働大臣リースターが進めている、使用者と被用者の共同
決定の改革案が批判を引き起こしている。経済大臣ミュラーは、中
規模の会社が高い負担を迫られるため、修正を求めている。
・国防相シャルピングは1週間の予定の近東訪問で、エジプトに到
着した。月曜日と火曜日の会談では、危機に瀕している近東の和平
交渉についての話し合いが行なわれる。水曜日と木曜日にはイスラ
エルでの会談、さらにパレスチナ大統領のアラファトとの会談も予
定されている。10月の訪問では首相シュレーダーは、ドイツとヨー
ロッパはこの困難な状況を放置しない覚悟ができている、と強調し
ていた。


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