2月5日〜11日のドイツのニュース

2月5日(月)

(ベルリン)キリスト教民主同盟首脳部の対立は拡大している。党首アンゲラ メ
ルケルは首相候補をめぐる議論を全く無駄である、と評した。同時に彼女は、議員
団長フリードリヒ メルツと二人で党を運営していく体制を維持していく、とも語
った。ザールラント州首相ペーター ミュラー(キリスト教民主同盟)は以前から
党首と議員団長の役職を2人が別々に長期間務めることに反対していた。同党主代
理のユルゲン リュトガースはミュラーとは反対の意見である。ザールラント州同
党議員団長ペーター ハンスは今年の夏前にメルケルを首相候補と指名するよう求
めている。同党の主要な政治家の中には首相候補を誰にするかの議論を速やかに終
わらせるべきだ、と考えている者も多い。

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・エルフ・アキテーヌ社の元経営者シルヴェンは、ロイナ精油所の
購入をめぐり賄賂を送ったかどうかについてドイツでは供述しない
方針である。連邦議会調査委員会は、事件解明のために引き渡しの
前火曜日に彼を尋問する予定であった。検察も関心をよせていた。
シルヴェンはフランスの企業エルフ・アキテーヌの国際的な賄賂事
件の中心人物である。フランスを震撼させたこの事件は、ドイツ東
部のガソリンスタンド ミノール社とロイナ精油所の購入にも関連
がある。
・カリタス支持団体の元会長デーアフェルト(56歳)は58件の背
任で7年間3ヶ月の拘留が言い渡された。彼はサッカークラブ、ア
イントラハト トリーアの会長もつとめていたが、カリタスの公益
性を隠れ蓑にして、総額2000万マルクを横領していた。この裁判
中に、元交通相クリムトは辞任に追い込まれた。
・購買者保護大臣キューナストはBSE危機に対処するため全ての仔
牛を殺す計画に反対したが、牛の早期屠殺を促す財政的支援を行な
うことには賛成した。彼女は生産を控え、農業の再建に着手する、
とも語った。急激な牛肉の値下がりで、ドイツではさらに買い占め
が行なわれそうだ、と政府は見ている。大蔵省筋によれば、狂牛病
対策でEUの求める措置をするだけで10億マルク近く必要になると
のことである。


2月6日(火)

(エルサレム)イスラエル首相選の第1回のテレヴィの予想では、右派の政治家ア
リエル シャロンが新首相になる見込みである。投票後の調査に基づく予想では、
シャロンが投票の59.5%を獲得し、バラクは40.5%を獲得した。投票率はかなり低
く、夕方早い時点では、60%を切っていた。特にアラブ系イスラエル人の中に、蜂
起に参加したパレスチナ人に対するイスラエル軍の暴力的な対処に抗議して、投票
を行なわないものが多かった。シャロンは投票前からパレスチナに対する強硬な姿
勢を取ると明言しており、エルサレムの将来を決める投票である、と宣言していた。
彼は、エルサレムはイスラエルの首都であり、分割はさせない、バラクのようにパ
レスチナとの妥協をするなどということは問題にならない、と語った。

     その他のニュース
・東アフリカの2ヶ所のアメリカ大使館の爆破事件の裁判で、共犯
者証人ジャマール アーメド アル・ファデルがサウジアラビアの
資産家ビン ラデンを在外アメリカ人と施設に対する多くの襲撃事
件の最も重要な黒幕である、と語った。ビン ラデンはそのために
アフガニスタンに軍事訓練施設を作った、とそのスーダン人の証人
は証言した。彼はビン ラデンの義弟で、80年代終わりには彼の組
織に参加した、とのことである。イスラム急進派タリバンからなる
アフガニスタン政府はビン ラデンの引き渡しを拒否してきた。
・元エルフ社の経営者シルヴェンはフランスに引き渡された。連邦
議会のキリスト教民主同盟不正資金疑惑調査委員会は、彼の引き渡
しを延期しようとしたが、失敗した。シルヴェンはロイナ疑惑に関
し調査委員会での証言を準備時間が不足していることを理由に拒否
した。今後彼はフランスで、すでに訴訟が起こされているこの問題
に関して尋問を受けることになる。
・連邦労働施設の発表では、ドイツの1月の失業者数は410万人弱
である。これは12月と比べ、28万4千人の増加である。失業率は
9.3%から10%に上昇した。同施設長のヤーゴダは、今回の失業率
上昇は季節的な影響によるものである、と発表した。


2月7日(水)

(ベルリン)世界最大のコンピューターチップ生産会社インテルと極めて裕福なド
バイ首長国が参加して、フランクフルト アン デア オーデルにヨーロッパで最
も新しいのコンピューターチップ工場を建設することになった。高い失業率に悩む
ドイツ東部に30億マルクを越える資本投下が行なわれることになる、とブランデ
ンブルク州首相マンフレート シュトルペは発表した。この工場自体は千5百の新
たな雇用を生み出し、下請業者でさらに2千人分の職場を作り出す予定である。ブ
ランデンブルク州は長い間フランクフルト アン デア オーデル地域のハイテク
工場の誘致に努力してきた。旧東ドイツ時代にはこの地域は8千人の労働者を抱え
る超小型電子工業の中心地であった。

     その他のニュース
・BSEのためドイツとその他のEU9ヶ国ではTボーンステーキの販
売が4月1日から禁止される。EU委員会は、生後12ヶ月以上の牛の
背骨の部分を使用しないように求めた。また、BSEに対処するため
の20億マルクもの資金を連邦と州でどのように分担するかをめぐ
っては合意が成立しなかった。農業大臣キューナストは、連邦はす
でに、飼料の処分、40万頭の牛の殺戮、EUの追加予算に10億マル
クを支出した、と語った。また彼女は、購買者の負担をこれ以上増
やすことには反対した。
・イスラエル新首相にシャローンが選ばれたが、多くの国の政府が
近東和平会談の継続を求めている。ドイツ首相シュレーダーは、シ
ャローンが近東に平和と安定をもたらすようにという希望を述べた。
外相フィッシャーは、ドイツはイスラエル新政権を各国と持続的で
適切な平和的な解決を模索するのを支援する、と語った。西側各国
政府の多くも同様な趣旨の声明を出した。
・エルフ社の元経営者シルヴァンはフランスで拘禁されているが、
エルフ社の買収事件の裁判は3月12日まで延期された。仏元外相デ
ュマと彼の元愛人デヴィエ・ジョンクールが同じ事件で横領と不当
利得で訴えられている。とくにデヴィエ・ジョンクールはシルヴァ
ンに不利な発言をし、賄賂の支払いは彼に責任がある、としている。


2月8日(木)

(ベルリン)購買者保護大臣レナーテ キューナストは、政府に対して農業政策の
転換を求める意志を固め、それは広い範囲から共感を集めた。連邦議会で彼女は、
将来の農業政策を決める際には「量ではなく質」を高めるという点が判断基準にな
る、と語った。キリスト教民主同盟党首アンゲラ メルケルは、異議はあるものの、
彼女を支援していく、と約束した。バイエルン州首相エドムント シュトイバーと
農業団体も賛成の意見を述べている。キューナストの計画によれば、自然農法の割
合は現在の2%強から今後10年間で20%に増やすことになっている。一方狂牛病の
対策費を連邦と州でどのように負担するかについてはまだ決まっていない。

     その他のニュース
・キリスト教民主同盟のコッホが率いるヘッセン州政府は、前回の
州議会選挙の調査を求める訴訟で部分的に勝訴した。連邦憲法裁判
所は、同党に選挙用の隠し口座があったことに関する調査を行なう
ことは認めたものの、裁判の無効を宣言するためには厳しい条件を
満たさなければならない、とした。コッホはこの判決に「きわめて
満足」であると語った。選挙審査裁判所は遅くとも4月5日に、
1999年の州議会選挙が無効かどうか、決定を下す、と発表した。
・元首相コールはキリスト教民主同盟の不正資金疑惑に関する行動
で罰せられることはなくなりそうである。弁護士によれば、彼は背
任容疑で行なわれている訴訟に30万マルクの過料を支払うという検
察庁の提案を受け入れた。最終決定を下すのはボンの州法廷である。
一方同党の元会計責任者キープは私的な脱税で4万5千マルクの罰金
を言い渡された。彼は1991年に8千マルク以上の脱税を行なった件
で、アオクスブルク州法廷に立った。
・連邦議会は多数の賛成で、民主社会党が求めていた、バルカンで
のNATOによるウラン弾使用を究明する委員会の設置を否決した。
連立与党だけでなく、キリスト教民主同盟、キリスト教社会同盟、
自由民主党も、民主社会党はこの問題に関する国民の不安を利用し
ている、と非難した。委員会の設置は否決されたものの、ウラン弾
の危険性については迅速な解明が行なわれるべきである、という点
では意見が一致している。


2月9日(金)

(デュッセルドルフ)事業所組織法改正をめぐる対立で、労働大臣ヴァルター リ
ースターと経済大臣ヴェルナー ミュラーの意見に歩み寄りが見られた。両大臣は
デュッセルドルフで会談した後、4時間にわたる会談ですべての疑問が解消したわ
けではないが、2月14日までには合意できそうだ、と語った。連邦首相ゲアハルト
 シュレーダーは産業界からの攻撃からこの改革案を擁護した。ミュラーはリース
ターの改革案は中規模の企業に不利益となると批判し、変更を求めていた。

     その他のニュース
・国防軍改革計画をめぐる連立与党と野党の対立は解消されなかっ
た。両者は連邦議会で激しい議論を行なった。国防大臣シャルピン
グは、費用を年に2億マルク削減できる今回の改革は不可欠であり、
組織の簡素化と任務の一部を外部に委託することで費用が節約でき
る、と語った。彼が強調したのは世界政治の状況からこれ以外の選
択肢はない、ということである。野党キリスト教民主同盟、社会同
盟の会派長メルツは政府は数字を過大に見積もっていると非難した。
・購買者保護大臣キューナストは、英国とアイルランドで、ドイツ
産牛肉からBSEの危険がある物質を検出したのを受け、各州に屠殺
所の管理をより厳しくするように要請した。月曜日までに各州がど
のような対策をとるつもりか、報告を求めている、と彼女の報道官
は発表した。
・ドイツの郵便業務は、2002年の終わりまでは郵便局の独占にな
る。EUでは競争相手がいないため、郵便業務独占の期日を延期す
る、と経済相ミュラーは語った。同時に彼は、郵便料金の値下げの
可能性についても示唆した。200グラムまでの手紙と50グラムま
での大量印刷物の料金が、現在郵便収入の大きな部分になっている。
郵便局と競合する会社はこの措置を批判している。


2月10日(土)

(ベルリン)連邦首相ゲアハルト シュレーダーは、緑の党が求めている2003年
以降の環境税の増税に反対した。新聞のインタヴューで彼は次のように語った。今
その議論を始める理由が見当たらないし。燃料油を値上げすれば税制を環境保護に
適したものに変えたことになるわけではない。人々が耐えられる負担にも限度があ
る。2003年までにさらに環境税を2段階増税することは決定済みだ、等々。緑の
党は先週2003年以降も毎年燃料油の価格を6ペニッヒづつ値上げすることを要請
していた。

     その他のニュース
・事業所組織法改正をめぐる対立で、労働大臣リースターと経済大
臣ミュラーは月曜日に再び会談を行なう意向である。政府筋の情報
によれば、金曜日に行なわれた緊急会談では重要な対立点が解決で
きなかった。ミュラーは、リースターの計画は費用がかかり、中規
模の企業に不利になる、と批判し、修正が行なわれなければ賛成し
ない、と発言していた。首相シュレーダーは、来週半ばまでに合意
が行なわれるだろうという期待を表明している。水曜日には内閣は
法案を承認する方針である。
・購買者保護大臣キューナストはBSE対策を拡大するつもりである。
同省報道官によれば、生きている牛に対しBSE検査を行なえる方法
が有効かどうか、目下検討中である。実現すればBSEに感染した牛
を早期に発見して、通常の屠殺を行なわずにすむことになる。今ま
ではBSE検査は脳髄を使っていたので、死んだ牛にしか行なえなか
った。
・キリスト教民主同盟、キリスト教社会同盟の首相候補をめぐる論
戦が新たに始まった。多数派の保守派の連邦議会議員の派閥が、
2002年初めを期して候補者を擁立する、と発表した。この派閥の
報道官は、候補者になる可能性がある人物に、3月25日のラインラ
ント・プファルツ州とバーデン・ヴュルテンベルク州の州議会選挙
までに、現首相シュレーダーと首相選で対決する意志があるかどう
か、表明するよう求めている。


2月11日(日)

(テル アヴィヴ)パレスチナ人居住区では衝突が引き続いて起こっているため、
新イスラエル首相アリエル シャローンは組閣を急いでいる。彼の属するリクード
連合と労働党の連立について話し合うため、彼は退陣した首相エフド バラクと再
び話し合いを行なった。労働党は政府が和平交渉を続行することを条件としている。
また労働党はパレスチナ人国家の建国と、西ヨルダンランドとガザ地区のユダヤ人
居住区の部分的廃止を求めている。シャローンはパレスチナ人が暴力を行使しなけ
れば、会談を行なうとしている。警察によれば、西ヨルダンランドでは横断道路を
走っていた車に載ったイスラエル人が狙撃兵に射殺された、とのことである。

     その他のニュース
・キリスト教民主同盟党首メルケルは同党とキリスト教社会同盟の
首相候補を早期に決定しようという要請を却下した。2002年初め
に候補者を決定する計画があり、同党にとっては3月25日のバーデ
ン・ヴュルテンベルク州とラインラント・プファルツ州の州議会選
挙に全力を上げることが必要だ、と彼女は語った。
・アメリカ軍の潜水艦と日本の漁業練習船がハワイ近くで衝突した
件で、アメリカ国防大臣ラムズフェルドは全面的な捜査を行なうよ
う指示した。なぜ浮上する軍艦がトロール漁船に突き刺さったのか、
陸地からかなり離れたところで同じような円周を今後も行なうべき
かどうか捜査することになる。日本船には35人が乗っており、26
人は救助されたが、9人は行方不明である。
・ロシア大統領プーチンはウクライナの工業都市ドニエプロペトロ
フスクを訪問したが、それに先立ち現地警察はデモ隊を逮捕した。
デモ隊はウクライナ大統領クチマに対する抗議行動を無届けで行な
っていた。キエフでは5千人以上が彼の辞任を求めてデモを行なっ
た。クチマは体制批判側の記者を消すように命じた、という疑いを
かけられている。クチマはこの疑いを否定している。


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