3月5日〜11日のドイツのニュース

3月5日(月)

(ポルト)ポルトガルの港湾都市ポルト近郊にある115年前に作られた橋が月曜日
に崩壊し、77人が死亡した。この橋は一瞬で崩れ落ち、渡ろうとしていた観光バ
ス1台と車2台が深さ50メートルの川に飲み込まれた。救助隊によれば、生存者を
救出する見込みはない、とのことである。ドイツ首相ゲアハルト シュレーダーは
弔電を打ち、犠牲者の関係者にお悔やみの言葉を送った。建築大臣ホルヘ コエル
ホは辞任の意志を表明した。ポルトガル政府は2日間の公式の服喪期間を設定した。

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・軍司令部の専門家の見積もりによれば、連邦国防軍は財政不足の
ため危機的状況に追い込まれている、とドイツ通信社は伝えた。そ
れによれば、連邦予算全体が脹れ上がり、危機に陥っているため、
軍の予算は逼迫しており、海軍はそれほどでもないが、陸軍はぎり
ぎり、空軍はさらにひどい状況で、近々離着陸回数の制限も覚悟し
なければならない。飛行機を飛ばさず、NATOに約束した軍備割り
当ての削減を要請するべきだ、と専門家は求めている。
・社会民主党と緑の党は2003年以降の環境税の扱いをめぐる議論
を、連立政権が破綻するような対立にならないようにする方針であ
る。社会民主党党首の首相シュレーダーは、緑の党の要請は政党の
方針に基づくもので、両党の連立にとって深刻な対立点にはなりえ
ない、と語った。緑の党代表クーンは、同党は環境税を守り通すと
語ったが、同時にそれが原因で連立解消することは意味もないし必
要でもない、とも付け加えた。
・ドイツの農家と官庁は口蹄疫を迎え撃とうとしている。ブランデ
ンブルク州で口蹄疫の疑いのある例が報道されたが、ノルトライン
・ヴェストファーレン州では陰性の検査結果が出て、警戒が解除さ
れた。購買者保護大臣キューナストは週半ばに州と連邦の対策委員
をあらためて呼び、火曜日までに検査が行なわれたのは、いわゆる
「初期に口蹄疫にかかった疑いのある家畜」だけである、と伝えた。
ノルトライン・ヴェストファーレン州農業大臣ヘーンは、ドイツで
は今のところ口蹄疫に襲われていないとの確信を述べた。また、フ
ランスとベルギーで口蹄疫が発生していることから、家畜の輸送は
全面的に禁止されるべきだ、と再び彼女は要求した。


3月6日(火)

(ミュンヘン)次の2回のサッカーワールドカップは地上波のARDとZDFで放送さ
れる見通しとなった。両公共放送は放送権を持つレオ キルヒと、アジアで行なわ
れる2002年と2006年のドイツ大会のテレヴィ中継放送について基本的に合意し
た。今後両局の監督委員会がこの合意を認める必要がある、と両者が発表した。
ARD会長代理のペーター フォスは、ARDでは集中審議が必要である、と語った。
第1回の交渉ではARDの部長数人の反対で、話し合いがまとまらなかった。

     その他のニュース
・凍てつく2月とやや下向きの景気のせいでドイツの労働市場の回
復は遅れており、失業者の数は約1万9千5百人増え、411万3千人
になった。失業率は今月0.1%増えて、10.1%になった。連邦労働
施設の情報によれば、1月から2月にかけての失業者の増加は昨年
平均を上回った。しかし、ここ5年間で2月としては最低の失業率
であり、失業率がやや高いのはドイツ東部である、と同施設長ヤー
ゴダは発表した。
・EUの食肉市場は口蹄疫のため少なくとも1週間は閉鎖される。さ
らに国境を越えて感染した可能性がある家畜の輸送を制限する規定
が公布された。EUの獣医委員会は英国からの動物及び肉製品の輸入
禁止を行なうように要請している。この禁止措置は2月21日に英国
で発生した口蹄疫が広がりを見せていることに対応して課されてい
る。ドイツは今の所この感染力が強いものの、人間には危険がない
病気の影響を受けていない。
・マケドニア軍は、NATOのコソヴォ平和部隊と共同でコソヴォの
アルバニア人の反乱を鎮圧することに成功した、という報道が行わ
れた。国境の村タヌセヴィチ周辺の地域は封鎖されている、とマケ
ドニア大統領報道官は発表した。NATO軍の兵士はコソヴォで、ア
ルバニア人過激派の武器庫を捜索している。アルバニア分離派の数
名が逮捕された。コソヴォ平和維持軍は部隊と監視を強化した。ヨ
ーロッパ会議は最近のマケドニア・コソヴォ国境での武力衝突が新
たなバルカン戦争につながるのでは、という懸念を表明していた。


3月7日(水)

(ニュー ヨーク)ナチ時代の強制労働者に対するドイツとドイツ経済界からの賠
償は、100億マルクの支払いを延期しかねない羽目に陥った。アメリカ連邦裁判所
の裁判官は原告側の訴えとは逆に、今後はドイツの銀行に対する訴訟を免除しない、
という判断を下した。彼女はドイツ経済界が約束の50億マルクをまだ全額集めて
いない、ということをその理由として示した。
賠償基金の出資者はこの判断は残念だ、と語った。賠償金に関する争いでは首相ゲ
アハルト シュレーダーが介入する意向である。

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・連邦国防軍は国防予算が不足しているにもかかわらず、追加の資
金を受け取らない。首相シュレーダーによれば、国防相シャルピン
グと蔵相アイヒェルは、予算審議は国債整理路線を前提として進め
ていくことをわきまえている。シャルピングによれば、国防軍は今
年3億8千万マルクの追加資金が必要であるが、軍用ヘリコプター
「ティーガー」などの軍備導入計画は中止にはならない。また国
防軍の行動力も危機にさらされることはない、とも語った。
・ドイツ鉄道株式会社の監査役会長フォーゲルは即時退陣した。そ
の理由として、彼が解任されることが報じられたにもかかわらず、
連邦からの支援がなかったことをあげた。彼とドイツ鉄道社長メー
ドルンとの関係は、同社の経営の健全化をめぐる意見の対立から緊
迫していた。新監査役会長にはプロイサク社長のフレンツェルが就
任する。
・新首相シャローンが率いる右派勢力リクードが選挙で勝利して
1カ月、イスラエル新政府は任務に就いた。シャローンは国会で宣
誓を行なった。イスラエルの歴史で最大の26人の閣僚が国会で承認
された。新政府はリクードと自由主義の労働党の他6つの小政党か
らなっており、その中には右派民族主義政党と極端な宗教政党も含
まれている。シャローンは労働党が連立政権に参加したことを感謝
した。また彼はパレスチナ人に暴力の行使を止めるように訴えた。
宣誓式の前に国会は1996年に始めて実施された首相の直接選挙制
度を廃止した。


3月8日(木)

(ベルリン)ナチ強制労働者賠償を担当するドイツ政府の特別代理人、オットー 
グラーフ ラムスドルフは、ナチの犠牲者の集団訴訟に関して最近下されたアメリ
カの判決に対して、迅速に訴訟手続きを行なうよう要請した。ドイツの銀行に対す
る集団訴訟を認めた法廷の決定を取り消すために、あらゆる手段を講じなければな
らない、法的安全性を確保しさえすれば、夏にも該当者に賠償金の支払いを始める
ことができる、と彼は語った。また彼は経済界に対し、不足している14億マルク
を賠償基金に支出するよう迫った。これに先立ち、彼はいくつかの省庁の代表と今
後の対策を首相府で話し合っていた。
連邦首相ゲアハルト シュレーダーは近々賠償基金に不足している資金に関して主
要企業と話し合いを行なう意向である。

     その他のニュース
・国防相シャルピングの予想によれば、米国は米国本土だけを防衛
するミサイル迎撃システムの計画を撤回する。米国国防相ラムズフ
ェルドとの会談後、米国政府は表現を変えただけではない、と彼は
語った。ラムズフェルドは、米国が関心を持っているのは、米国だ
けではなく、米軍が駐留する国など、同盟国と友好国も含めている、
と語った。シャルピングの米国訪問は3月29日に予定されている首
相シュレーダーの米国訪問の準備もかねている。
・口蹄疫を予防するため、連邦と各州はすべての家畜の運搬を全面
的に禁止した。この禁止は月曜日から適用され、暫定的に3月27日
まで実施される。さらにこの期限までドイツ全土の食肉市場は閉鎖
される。英国で口蹄疫が発生した農家は100を越えた。またBSEの
対策費の分担をめぐる話し合いでは連邦と州の間では合意が見出せ
なかった。購買者保護大臣キューナストは対策費の半分と予想され
る20億マルクの半分強を連邦が負担するという提案を再び行なっ
たが、州はこれを受け入れていない。
・連立与党と野党は経済年次報告をめぐる議論のなかで、経済成長
と雇用の正しい方向をめぐって激しく議論した。蔵相アイヒェルは
連邦議会で、米国の経済成長がかげりを見せているにもかかわらず、
ドイツの経済成長は2.6から2.8%を維持する、と語った。消費が伸
び悩む恐れがあるので、情勢を悪く言うべきではない、とも語った。
一方野党の代表は、連立政府の失業対策を問題にした。キリスト教
民主連合、キリスト教社会連合議員団長のメルツは労働市場改革と
社会福祉の援助を要求した。


3月9日(金)

(シュトゥットガルト)クラウディア ロートが90年連合・緑の党の新党首に選
ばれた。党大会で約750人の代表の過半数が、同党左派と目される彼女に票を投じ
た。ロートは今後党報道官フリッツ クーンと共に党を率いていくことになる。彼
女の前任者であるレナーテ キューナストは購買者保護・農業大臣に任命されたた
め、党の役職を辞任せざるをえなかった。3日間の党大会の冒頭では、クーンは参
加者に、明確な方針を持つ時代にあった改革派の政党としての特徴を打ち出すよう、
訴えていた。緑の党は、改革を進めていく方針を明確に打ち出すことを目的として
掲げていた。キューナスト大臣のもとでの新しい農業政策を、クーンはその例とし
て挙げた。

     その他のニュース
・セルビア首相ジンジッチは、コソヴォのアルバニア系過激派に対
し、NATOがはっきりと対処するように求めた。独首相シュレーダ
ーと外相フィッシャーとの会談後、彼はコソヴォでは過激派勢力が
合法的であり、民主主義諸国の中では最も活動が盛んである、
NATOは誰が問題を引き起こし、誰が解決を計ろうとしているのか
をはっきりさせてほしい、コソヴォ安定のためには総合的な計画を
たてることが必要だ、と語った。
・マケドニアと南セルビアの境界地帯の情勢は、アルバニア人反乱
軍に死亡者がでたために行なわれた国境侵害の後、いっそう深刻に
なっている。一方、マケドニアの特殊部隊は、アルバニア分離主義
者が境界地域を封鎖するために置いた車の撤去を完了した。車両と
占領部隊はこの地域から撤退した、とマケドニア内務省は発表した。
NATOはマケドニア政府を今後も支援していくことを約束したが、
マケドニア政府の非武装地帯を作るという提案には懐疑的な反応を
取った。
・ウクライナでは、大統領クチマに対する流血の抗議行動の参加者
から多数の逮捕者が出ている。数千人のデモ参加者は、大統領府に
殺到しようとしたが、デモ隊を押し戻すために、警察は警棒と催涙
ガスを使用し、数人が怪我をした。このデモは、クチマが数週間ぶ
りに公の場に現われ、ウクライナの国民詩人シェフチェンコの記念
碑に花輪をささげようとしたことがきっかけで起こった。デモ隊は、
彼の独裁的な手法と政府に批判的な報道関係者の死を非難していた。


3月10日(土)のドイツのニュース

(シュトゥットガルト)緑の党は、ゴアレーベンへの核物質の輸送をめぐる党内の
対立に決着を付けた。シュトゥットガルトで開かれた全国党大会で、代表750人の
過半数の賛成で、連邦緑の党の幹部が打ち出している妥協路線を支持することに決
めた。それによれば、計画中の核物質の輸送を阻止するようには呼びかけないこと
になった。ただしデモに参加するかどうかは党員にまかされている。この党大会で
はそれより前に、今後緑の党が政策転換に取り組むことが決められていた。緑の党
の党員が大臣になった場合、今後は連邦議会議員を辞めるという規定はかろうじて
承認された。その他には、ドイツへの移民を増やすための措置が決定された。

     その他のニュース
・連邦交通大臣ボーデヴィヒ(社会民主党)はこの任期中にドイツ
の交通網の全面的な改革を軌道にのせる方針である。彼は緑の党の
党大会に出席し、道路と鉄道の維持のためには、公的な資金ではな
く、金融子会社からの資金投入されるべきであり、これには計画中
のトラックの通行料が当てられる、と語った。また彼はドイツ鉄道
を運営会社と線路を保有する会社を分割する計画も口にした。
・移住問題委員会議長のズュースムートは、より柔軟な移民の規定
を遅くとも2010年までに作ることに賛成した。必要な分野での職
業訓練が不十分で、人口のバランスを回復するために、移民は必要
である、と彼女は語った。また、もとから住んでいる人が労働市場
から排除されない形で、柔軟で効果的、非官僚的な制度が定められ
なければならないし、失業者対策が講じられている場合にだけ、移
住促進計画は受け入れられる、とも語った。
・ナチの強制労働者の賠償が停滞していることへの内外からの批判
が強まる中、ドイツ商工会議所連合会会長ブラウンは、経済界は不
足している14億マルクを急いで集めるためあらゆることを行なう、
と述べた。社会民主党の国会議員団長シュトルックは、産業界は元
強制労働者を見殺しにしている、と非難した。イスラエル大統領と
ドイツユダヤ人評議会議長も厳しい批判を行なった。


3月11日(日)

(シュトゥットガルト)当地で開かれている緑の党連邦党大会は、農業政策の抜本
的な転換を支持し、終了した。約750人の代表は、購買者保護大臣レナーテ キュ
ーナストが打ち出した、「量ではなく質」という標語を掲げたより自然に近く、購
買者に利益となる農業を進めていくという計画を、満場一致で支持した。キューナ
ストは、購買者、農家、食料生産者、政治家に同じ目的を追求するように、強く求
めた。彼女は将来は抗生物質を養豚に使用しないこと、ヨーロッパを横断する家畜
の輸送を制限すること、食品の生産法を購買者に見えやすくすること、これらを重
視していく方針を明らかにした。

     その他のニュース
・国防軍の予算をめぐる議論に、国防大臣シャルピングは反論した。
ドイツ軍の予算不足は比較的少なく、不足分の3億8千万マルクは総
予算の0.8%に過ぎない、と語った。確かに予算は逼迫しているが、
国防軍は防衛と平和維持作戦を完全に遂行できる、とも語った。さ
らに彼は、兵舎と軍用地はすべて売却されることになっている、と
の報道を否定した。
・英国の口蹄疫は25件増え164件になった。1日25例の増加は今ま
でで最大である。イングランドだけでなく、ウェールズ、スコット
ランドでの発見も報道された。一方、ニーダーザクセン州では口蹄
が発生した疑いがある農家が見つかり、飼っていた99頭すべてが
殺された。詳しい調査結果は水曜日までに公表される。安全のため
この農家への通路は閉鎖されている。
・フランスでは地方選挙の第1回投票が行なわれた。およそ4千万の
有権者が約50万人の全国の地方議会の投票を行なう。この選挙はジ
ョスパンとシラクが率いる左派政権の成果を評価するものでもある。
関心はパリ市長選に集まっている。第1回の予想では、社会党が予
想通り優位に立っている。パリ市長が誰になるのかは今度の日曜日
の決選投票で決定される見込みである。


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